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東京ゲームショウ2014 インディーゲームレポート 前編

新作展示に売り込みに、さまざまな意図が交錯するインディーゲームコーナー

インディーゲームコーナー

 9月18日から21日までの4日間にわたり、世界最大級のゲームイベント“東京ゲームショウ2014”が幕張メッセで開催された。

 東京ゲームショウ(以下、TGS)というと、家庭用ゲーム機向けの新作ゲームが並ぶイベント、という印象を持つ人がほとんどだろう。しかし最近では、スマートフォンの隆盛やバーチャルリアリティの発達により、出展されるコンテンツの分野は徐々に多様化している。

 なかでも今年、注目度が大きく高まったのがインディーゲームだ。インディーゲームコーナーは昨年もあったが、離れ小島になる9ホールに配置され、人の入りは良くなかった。今年はメインホール側で大手企業のブースに囲まれる位置となったことや、展示什器もグレードアップしたことで来場者も急増。一般公開日にはコーナー全体が人で埋まるほどの状態になった。

 コーナーに出展したのは70以上の団体、企業、および個人。本稿ではその中から、主にWindowsベースのタイトルを扱うものをいくつかご紹介する。

Project ICKX

Project ICKXブース

 Project ICKXは、先日、秋葉原を飛行機で飛び回る「Japanese Otaku City R/C Flight」を公開したことでも話題になったサークル。今回はそれ以外に、PC向けの新作フライトシューティング「Vertical Strike」を出展した。

 「Vertical Strike」は、同サークルが開発中の3Dフライトシューティングフレームワーク「alternator」の試験運用を兼ねて開発されているもの。今回出展されたバージョンでは、ストーリーを楽しめるものや、連続して登場する敵を倒していくモードなどが用意されていた。

 空中戦での機体やミサイルの挙動は実に滑らかで、ゲームと「alternator」の完成度の高さが感じられた。ゲームとしては一見シリアスなフライトシューティングに見えるが、『真面目ではあるが不真面目なところもある、驚きのあるゲームになっている』という。今後は地上データなどの作り込みも進めていくそうだ。現時点では完成時期は未定としている。

フライトシューティングとしての挙動はとても完成度が高い。後は中身の作り込みのフェーズのようだ

ZENITH BLUE

ZENITH BLUEブース

 ZENITH BLUEは、開発中の横スクロールアクション「SkyLens」を出展。巨大な剣を持った少女が敵と戦いながらダンジョンを攻略していく。

 ジャンルを横スクロールアクションと紹介したが、サイドビューというだけでステージは上下への移動も多いのが本作の特徴。壁を蹴ってさらにジャンプするという挙動が可能で、1回のジャンプでは登れない垂直な壁もどんどん登っていける。フィールドは間近な部分しか見えないため、行き止まりがあったり、下が見えないところに飛び降りたり(うまく壁を蹴りつつ危険がないか確かめて進む)といった探索も重要な要素になっている。

 バトルの面では、弱と強の2種類の基本攻撃が、しゃがみやダッシュ、ジャンプなどの状態によって変化する。また敵への接触ダメージがなく、敵の頭を踏み越えて攻撃をやり過ごすといったアクションがあるのもユニークだ。

 またブースには、3Dアクション「巫剣神威控」も出展。こちらはPlayStation 4(PS4)への移植が決定しているが、現在はまだ開発準備段階で、今回はPC版での出展となった。そちらの開発が忙しいこともあり、「SkyLens」の方は今のところ、来年の夏頃の完成を目標に進めているという。

ゲーム的には2Dのアクションだが、3Dグラフィックスの美しさも必見のタイトル

闇討ちProject

闇討ちProjectブース

 闇討ちProjectは、現在開発中の3DダンジョンアクションRPG「Dungeons&Darkness」を出展。薄暗いダンジョンを探索しながら、現れる敵を倒して進んでいく。

 今回出展されていたのはAndroid版で、画面の左側をタッチすると移動用、右側をタッチすると視点変更用のバーチャルパッドが現れる。攻撃は画面右側にあるアイコンをタッチして行う仕組み。タブレット端末のプレイでも、かなり快適な操作感を実現していた。近くの敵を剣で斬るほかに、魔法で遠くや天井の敵を攻撃するといったことも可能。

 製品版では町の機能が追加され、装備などの売買をしつつ、繰り返しダンジョンに潜ってキャラクターを育て、最深部を目指すというゲームになるという。「Wizardry」をアクションにした、と言えばイメージが沸くだろうか。

 プラットフォームはiOSとAndroidのほか、Windows版も開発中で、コミックマーケット87(今年の冬コミ)でのリリースを目指して開発しているとのこと。開発者のFami氏は、『国内のみならず海外に向けても出したい』と語っていた。

薄暗いダンジョンを自由に移動できる。死角から襲われることがあるとかなり怖そう

YOX-Project

YOX-Projectブース

 YOX-Projectは、アドベンチャーゲーム「姫君は優雅に推理する」を出展。ラタニーア王国の第一王女セイラ・ライムハルトが、秋葉原で探偵事務所を開設し、難事件の解決に挑む。

 TGSではシナリオの一部を体験できる特別バージョンがプレイできた。セイラ姫がある声優事務所を見学するという展開で、異国の姫と付き人達が日本のディープな文化に触れるギャップがそこかしこで見られる。設定からして楽しい読み物になっているが、先々にはある事件が起こり、それを姫が解決するというのがゲームの本道だ。

 ゲームは選択肢によってシナリオが分岐していくというオーソドックスなものだが、背景がスクロールしたり、キャラクターがちょっとした動きを見せたりと、止め絵にならない演出が盛り込まれていて見た目にも飽きさせない。色付きの文字をタップすると用語解説を表示する機能も搭載。謎解き要素やキャラクターのビジュアル、シナリオも含め、ディテールにこだわった隙の無い作りが印象的だ。

 本作は、同サークルが開発しているアドベンチャーゲーム・ノベルゲーム開発システム「ADV+++」を使って開発されている。Windowsのほか、Mac OS、iOS、Androidにも対応しており、「姫君は優雅に推理する」もまずはiOSとAndroidで今秋に提供開始。Windows版も提供予定としている。

ユニークなシナリオだけでなく、システム面でのフォローも手厚く快適に遊べる

神奈川電子技術研究所

神奈川電子技術研究所ブース

 神奈川電子技術研究所は、開発中の2Dアクションゲーム「アガルタ」を出展。ドット絵のアクションに環境シミュレーションを組み合わせたようなゲームになっている。

 ゲーム的には、主人公が奥にあるゴールに到達すればステージクリアとなる。主人公は土を吹き飛ばす爆弾とドリルを持っており、フィールドにある土や岩を吹き飛ばしたり削ったりして先へと進んでいく。

 フィールドには、溶岩や水なども配置されている。溶岩に触れると当然ミスになるのだが、爆弾やドリルを使って溶岩と水を接触させると、水が蒸発して水蒸気になって浮かんでいく。また水蒸気が貯まると、冷えて水に戻って落ちてくる。地面に水が触れると草が生える(緑色のドットが発生する)。こういった環境シミュレーション的な動きを活用して、フィールドを突破していくゲームとなる。

 開発は鉄道ゲームなどを手掛けるレールファンと共同で行っており、プラットフォームはコンシューマーゲーム機を想定しているという。ただ開発はUnityを使っているため、PCなど他のプラットフォーム展開も可能だという。年内の完成を目指して開発が進められている。

 このほか、発売中のロボットアクションゲーム「ワタシハジカンヲトメル」も出展されていた。

環境シミュレーションをアクションゲームと組み合わせ、ドット絵で表現するというアプローチが面白い

Nyamyam

Nyamyamブース

 Nyamyamは、iOS向け絵本風アドベンチャーゲーム「Tengami」で一躍有名になったインディーゲームデベロッパー。今回はiOS版に加え、Android版とSteam版(Windows/Mac OS対応)を発表し、会場にはMac OS版を出展した。

 Mac版もゲーム内容に変化はなく、和のテイストで描かれた絵本のような世界を、立体絵本のような仕掛けを織り込みつつギミックを解いて進んでいくというアクションアドベンチャーゲームになっている。操作はマウスのみで、クリックした所にキャラクターが移動。ギミックはクリックのほか、ドラッグ&ドロップの操作で動かすものもある。

 紙で作られたような独特なビジュアルの中、ゆったりとした動きでキャラクターが進む。ビジュアルとゲーム内容の両方でアートを感じさせる作品になっている。

 配信は早ければ来月になるとしている。

誰もが目を向けてしまう魅力的なグラフィックス。ゆったりしたゲーム内容もいい雰囲気を醸し出している

NIGORO

NIGOROブース

 NIGOROは、開発中の2Dアクション「LA-MULANA2」を出展。今回のTGSで最も注目度が高いインディーゲームの1つだが、内容は3月に京都で開催されたBitSummit 2014と同様のものとなっていた。

 開発者の楢村氏によると、『TGS向けのデモ版を作るのは開発負荷が大きいため、今回は東日本では初めての出展ということでご勘弁いただきたい』とのことだった。開発そのものは着実に進められており、クラウドファンディングのバッカー(支援者)には近いうちにアルファ版を出し、その後も継続的に触れてもらいつつ、2015年末の発売に向けてブラッシュアップを進めたいとしている。

 代わりに今回は、PlayStation Vitaで12月発売予定の「LA-MULANA EX」が、開発を担当するピグミースタジオのブース(インディーゲームコーナー外)で大々的に展開された。移植に際してゲームバランスには手を加えず、プレイを快適にしたり、わかりやすくしたりする細かい修正を多数加えている。また世界各国で同時発売を目指しており、ローカライズも本作のために1からやり直すなど、見た目以上に手間暇のかかったタイトルとなっている。

ピグミースタジオブースでは「LA-MULANA EX」が大々的に展開された

飛翔システム

飛翔システムブース

 飛翔システムは、3D対戦アクション「マジカルバトルフェスタ・魔法少女☆星咲いおん」を出展。こちらはPS4版が2015年春の発売に向けて開発中で、そのアピールを兼ねてWindows版の出展となっている。

 Windows版については、Steam版が11月頃に配信予定。Steam版ではゲームバランスに調整を加える予定としており、既にパッケージなどで販売したものについてもアップデートの適用を検討しているそうだ。

 ちなみに飛翔システムから分化した領域ZEROが展開している「東方Project」の二次創作作品「東方スカイアリーナ祭」も、PS4での発売が決まっている。

ゲーム菩薩グループ

ゲーム菩薩グループブース

 ゲーム菩薩グループは、VRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”を使ったVRゲーム「水没都市〜シマダシステム」を出展した。

 「水没都市〜シマダシステム」は、海底に沈む都市に落ちているアイテムを拾い集めるというゲーム。ゲームパッドのボタンを押すと、プレイヤーが見ている方向に泳いで進める。海上に出るとブイが浮かんでいるので、その下付近に落ちているアイテムを泳いで探し出す。

 都市のフィールドは、無料地図作成プロジェクト“オープンストリートマップ”のデータを3Dフィールドに変換する「シマダシステム」で生成され、それをもとに水没した都市のフィールドを作成している。仕組み上、世界中のどこでもゲームのフィールドにすることができ、“オープンストリートマップ”の完成度が高まるほどにフィールドのクオリティも上がるという仕組みになっている。「シマダシステム」はUnityのアセットとして公開予定とのこと。

 「水没都市〜シマダシステム」というゲームコンテンツについては、現状では“Oculus Rift”が製品化されていないため、完成時期などは未定。“Oculus Rift”などVRシステムが市場に出たら、すぐにコンテンツを提供できるよう準備を整えておくことが狙いだという。

現実世界をVRに落とし込める「シマダシステム」は、アイデア次第で色々なゲームが作れそうだ

Landkarte

Landkarteブース

 Landkarteは、女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「赤い砂堕ちる月」を出展。中華ファンタジー風の世界で、5人の男性キャラクターとの恋愛が描かれる。

 主人公は選択肢によって5つの性格へと変化するのが特徴。1章の選択肢で性格が決定され、その後のシナリオや会話が変化する。5人の攻略キャラクターが存在するため、ストーリーも実質的に25本分+αというボリュームになる。また符術を使った戦闘もあり、単なる読み物ではない遊びを提供している。

 既に昨年完成したゲームだが、今回はモバイルやコンシューマーゲーム機など他のプラットフォームへの移植を請け負ってくれるメーカーを探しての出展だという。表向きには珍しいかもしれないが、本来はトレードショーであるTGSを正しく活用した、とも言えるだろう。

移植メーカーを募集するための出展。今時のインディーゲームの流れを示した好例だ