週末ゲーム

第582回

同人ゲーム体験版特集 2014冬

“冬コミ”出展サークルの作品から体験版を4本紹介

 インターネット上で公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介している『週末ゲーム』。今回は、12月28日から30日にかけて開催が予定されている国内最大規模の同人誌即売会“コミックマーケット(コミケ)”を目前に控え、同人ゲームの体験版を特集する。

 通称“冬コミ”と呼ばれる次回のコミケに出展するサークルの作品の中から、Webで体験版などが公開されている4作品をご紹介。冬コミでの頒布内容は完成版や新しい体験版などサークルによって異なるので、詳細はサークルのWebサイトで確認してほしい。

シューティングゲーム編

懐かしさを感じる武装切り替えシューティング「

タイトル画面

 「」は、SF風の世界を舞台にした2D縦スクロールシューティングゲーム。プレイして最初に驚かされるのが、本作のタイトルを含め、ゲーム内の文字はすべてが独自言語によって記されていること。ゲーム中のキャラクターの会話はもちろん、メニューやスコア、設定画面すらも普通には読めない。

 同梱のreadmeファイルにも遊び方は書かれていないが、『遠い遠い昔にどこかで流行っていた、ごくありふれた縦すくろーるしゅーてぃんぐげーむです。』と記されている。そして本作には、「スターソルジャー」「ツインビー」「ゼビウス」などのレトロなシューティングゲームを知る人なら、懐かしさを感じる描画や要素が随所に散りばめられている。そんな内容のゲームに象形文字のような言語を合わせることで、ゲームの世界をレトロどころか古代文明のように表現しているところにアイデアを感じる作品だ。

 実際のプレイでは、文字ではなくアイコンを見ながら意味を想像しつつプレイすることになるため、遊ぶ前から戸惑うことも多いと思う。筆者も設定画面を触る段階でかなり苦労したが、そこも古代文明を紐解くような感覚で、本作の世界観の一環になっている。

 ゲームの遊び方については一切書かれていないとはいえ、基本的にはステージクリア型のオーソドックスな縦シューとなっているので、キー設定さえ把握できればプレイには支障ない。ゲームパッド操作にも対応しており、ボタン設定も可能だ。

ゲーム中の文字のみならず、メニューや設定画面すらも読めないという徹底ぶり

 ゲームの特徴は、武装の切り替えができる点。敵を倒した時などに現れる緑の玉をいくつか拾うと、自機の周囲にオプションが発生してショットがパワーアップする。この時、武装の切り替えボタンを押すと、ショットの特性が変化。初期状態では、前方集中型と前方広範囲型がある。

 また横方向へ移動しながら武装を切り替えると左右へのショットに変化し、後ろに移動していると後方へのショットになる。さらにステージ中には新たな武装が落ちている場所があり、これを取ると切り替えられる武装が追加。より前方へ集中したものや、斜め4方向に出るもの、自機の周りを取り囲むようにオプションが配置されるものなどが用意されている。

 オプションは敵弾が当たるとダメージを受け、一定のダメージで破壊されてしまう。逆に言えば、オプションを自機の弾除けとしても使用可能だ。例えばボス戦では、ボスの攻撃方向に合わせた配置ができれば、弾幕に対してもある程度は耐えつつ戦える。ただし自機に直撃すると一発でやられてしまうので注意が必要だ。

 単体のシューティングゲームとして見ても武装切り替えが楽しいゲームだが、レトロなシューティングゲームファンにはより引っかかる部分があり、また独自言語で展開される世界やストーリー(読めないが)もあり、楽しみの多い作品だ。現在は動作確認用に序盤をプレイ可能な“お試し版”をダウンロードできる。完成版は冬コミにて頒布される予定。

プレイしてみて『アレ壊せるのかよ!』とツッコミを入れた人はオールドゲーマー認定。レトロなシューティングを知っていればより楽しめる
」お試し版
【著作権者】
PlatineDispositif
【対応OS】
Windows XP/7/8.1
【ソフト種別】
体験版
【バージョン】
-(14/12/05)

アクションRPG編

“そら”を目指す少女達の冒険を描くアクションRPG「ゆりかごのそら」

「ゆりかごのそら」体験版 C86 ver.
ドット絵によるキャラクター表現や描き込まれた背景が見どころ

 「ゆりかごのそら」は、少女達の冒険を描いたアクションRPG。現在Web公開されている体験版では2章までプレイ可能で、冬コミでは3章まで遊べる新体験版が頒布予定。プレイ時間は約4〜5時間と、本体験版の範囲でもかなりのボリュームが遊べる内容となっている。

 物語の舞台となるのは、獣耳と尻尾を持つ人々が“ヒノカミイシ”の光のもとで暮らし、はるか上にある“そら”の存在が夢物語とされている世界。村はずれに母親と住んでいた主人公の少女クーニャは、“そら”を見に行くと手紙を残し突如消えてしまった母を探すため、村長の養女で親友のナツメと共に“そら”を目指して旅立つ。

 本作はまず一目見て、1280×720のHD画面上でキャラクター・背景共に細部まで描き込まれたドットグラフィックに目を惹かれるが、実際に動かしてみるとふわっと伸びるようなジャンプの挙動をはじめアクションの手触りが非常に気持ちのいい作品だ。ひるがえる衣装や揺れる尻尾なども細やかに描かれているほか、イベントシーンでは表情や仕草もくるくると動き、全身で大きく感情を表すナツメと、指を立てたり首を振ったりと仕草が細かいクーニャ、それぞれの可愛らしさを存分に表現している。

 アクションRPGとしては、サイドビューのフィールドで敵を倒し、仕掛けを解いたり、アイテムで行動範囲を広げながら進んでいくオーソドックスなもの。豊富な攻撃スキルを3つの攻撃ボタンおよびボタンと上・下・左右のカーソル入力を組み合わせた計12のスキルスロットへ自由にセットし、連携コンボを組めるのが大きな特徴だ。コンボ数に応じてダメージも増加していく。

 スキルは高速で連撃するもの、敵を打ち上げる・地面に打ち付けるもの、突進するものなどバラエティ豊かで、突進で距離を詰めて打ち上げで敵を無力化し、連撃でコンボ数を稼いで大技でフィニッシュ、などスキルの組み合わせが楽しい。スキルごとの攻撃アニメーションやエフェクトも凝ったもので、キレのいい動きで爽快感のあるバトルを楽しめる。

スキルを操作へ自由に割り当てて、コンボを繋げていくのがバトルの醍醐味

 また、武器も豊富に用意されており、武器によって攻撃力に加え攻撃速度とリーチにも変化が。バランスの良い木刀からリーチはあるが重いバール、さらには“やかん”や“おろし金”といった一見ネタっぽい武器まであり、攻撃速度とリーチによってプレイ感はかなり変わってくるため使い分けが楽しい。ちょっと見つけにくい場所にユニークな武器が落ちていることもあって、ダンジョン探索の楽しさにも繋がっている。

武器はダンジョンで入手するほか、敵が落とす素材などを売ってお小遣いで買うことも可能。やかんの“分類:剣”がシュール
バールはリーチが長いのがウリだが攻撃動作が遅め。連続でどんどん攻撃するのが楽しいゲームなのでプレイ感に結構影響がある

 さらに、ゲームが進むとナツメがクーニャを“おんぶ”して移動することが可能に。これはダッシュ移動したり急勾配を駆け上がれるようになるテクニックだが、ナツメがクーニャを抱き上げるときのアニメーションがこれまた細かく丁寧で、二人の仲良しぶりを感じて顔がほころんでしまう。

ナツメがクーニャを抱え上げ、急勾配を駆け上がる。抱え上げる動作も可愛らしい

 難易度はほどほどでレベルもさくさく上がるため行き詰まるようなことはないが、近付くと丸飲みされてしまう植物やヒット&アウェイを仕掛けてくるコウモリなど嫌らしい敵も居る。回復手段も限られており、緊張感のある探索や、対空技などスキルの使い分けが醍醐味となっている。

のどかな村の中で異彩を放つ管理局の建物。研究者らしき人物達の会話も気になるところ

 物語が進むと、これまで村人が越えられなかった樹海を越えて冒険の舞台は一転、新たな出逢いから心温まる展開も待ち構えている。一方で、村の生活を支援しつつも異質の文明を持ちどこかきな臭い“管理局”の存在や、樹海を汚染する謎のカプセルの残骸(クーニャ達には“ゴミ”にしか見えないが……)など、バックグラウンドにはSF的な設定を匂わせるものも。アクションも物語も現時点で非常に作り込まれたクオリティを感じさせるもので、完成が楽しみな作品だ。

クーニャ達にはゴミにしか見えないが培養カプセルのような物が打ち捨てられており、そこから水に汚染が広がっている
まだ見ぬ世界で、新たな出逢いと冒険が待ち構えている
「ゆりかごのそら」体験版 C86 ver.
【著作権者】
ノンリニア
【対応OS】
Windows 7以降
【ソフト種別】
体験版
【バージョン】
2a(14/09/15)

ノベルゲーム編

ロケットに青春をかける少年少女達を描く近未来SF「おおきく澄みわたる、あの宇宙(ソラ)へ――」

「おおきく澄みわたる、あの宇宙(ソラ)へ――」Pre-trial disc

 「おおきく澄みわたる、あの宇宙(ソラ)へ――」は、ロケット開発を目指す少年少女達を描いたノベルゲーム。初の体験版となる“Pre-trial disc”は第1話“ソラへのパスポート”と作品紹介のおまけシナリオを収録し、プレイ時間45分ほどの内容。冬コミでは第2話まで収録した“Pre-trial disc2(仮)”を頒布予定となっている。

 主人公の“糸川与一”は湘南に住む学生。亡き母親の跡を継いでロケット技術者を目指す姉“美宇”と共にロケット制作の実験を繰り返しているが、目標である静止軌道・高度36,000kmへ届くロケットの開発はまだ夢の段階。そんな中、ある人物からの誘いにより、種子島宇宙センターへ向かうことになる……というのが1話の概要だ。

 本作の時代設定は2032年だが、東西冷戦が終結していない世界という歴史のifものとしての側面も興味深い。10年前に起きた国際紛争を経てミサイルやロケットの研究・開発自体がタブーとなった世界において、ロケットを飛ばすという少年少女達の夢が、かつて研究の道を絶たれた大人達の願いにも繋がっていくことが示唆される。

主人公達の学園の教師で保護者でもある“梶原しのぶ”(右)。美宇(左)の母の旧友であり、彼女も研究者だったようだ。『ミサイルが都市に降り注いだ日』という言葉が示す通り、日本も戦争の被害を受け、復興の最中にある
戦争で破壊された人工衛星の代わりに高度2万メートルを飛ぶ何万台もの飛行船が通信網を形成する“成層圏プラットフォーム”など、SFらしいガジェットも

 とはいえ堅苦しい話では全くなく、やや天然ボケでブラコン、ロケット以外のことはからきしの美宇と、そんな姉を慕いつつも気苦労の絶えない与一の掛け合いや、ロケットに興味はないが与一のことは気にかかるクラスメイト“楢原あやめ”の乙女心とそれに全く気付かない与一といった、コミカルで微笑ましい展開も大きな魅力だ。

戦争からの復興が進み電力不足に悩む日本の都市部では、突然の停電に姉が怖がり風呂場から飛び出て抱きついてくることも珍しくない……か?
何かと世話焼きの“楢原あやめ”(左)と、与一達の無茶のとばっちりを受けてばかりで文句を言いつつも、何だかんだで付き合いのいい“北条時高”(右)

 またSF面でも、ロケットの仕組みを図とアニメーション入りで解説するなど親切な内容となっており、作品を通してロケットへの興味が沸いてくる。また、本作のメインヒロイン3人のうち第1話に登場するのは美宇だけだが、おまけシナリオでは他のヒロインの紹介も。ヒロインごとにルート分岐するようだが“ヒロイン”と“そのヒロインのルートで制作するロケット”が一対になっており、“ギャルゲーと本格SFの融合”を思わせる構成も面白い。

第1話冒頭で行われるペンシルロケット射出実験では、アニメーション付きの図解もあり非常にわかりやすい
おまけシナリオでは第2話以降に登場するヒロインの紹介も

 丁寧に描き込まれた背景イラストや、宇宙へ広がっていく夢を思わせるオリジナルの壮大なテーマ曲なども目と耳を惹くもので、いよいよ種子島での活動が始まる第2話以降が楽しみな作品。なお、本作はイベントなどでのパッケージ版頒布のほか、無償版の公開も予定されており、無償版でも1ルートは最後までプレイ可能とのこと。ぜひ気軽にプレイしてみてほしい。

「おおきく澄みわたる、あの宇宙(ソラ)へ――」Pre-trial disc
【著作権者】
少年舎
【対応OS】
Windows Vista/7/8/8.1
【ソフト種別】
体験版
【バージョン】
1.01

“クランチ文体”で綴られる異世界サイバーパンク・ファンタジー「DREAM LESS WORLD」

「DREAM LESS WORLD」体験版

 「DREAM LESS WORLD」は、昏睡状態にある弟を救い出すため、異世界での戦いに身を投じていく少年“神谷悠”が主人公のノベルゲーム。体験版では序盤の1時間ほどをプレイ可能。冬コミでは完成版がリリース予定となっている。なお、本作は三部作構想の1作目にあたる。

 弟が昏睡して以来7年間塞ぎ込んで生きてきた悠は、あるとき突然、夢の世界“ドリームレスワールド”に迷い込む。肉体を離れた精神が訪れるというその世界に弟が囚われていることを知った悠は、弟を探し出して現実へ連れ戻すことを決意。成り行きから、ドリームレスワールドを支配する“カーディナル”に対抗するレジスタンスに身を寄せて戦い方を教わることになる……。

 本作の特徴は、作家・冲方丁氏が編み出した“クランチ文体”を一部採用していること。現実世界では通常の文体である一方、ドリームレスワールドでは助詞・接続詞の代わりに算術記号を文章に混ぜたクランチ文体を用いることで、異世界らしさが醸し出され、戦闘などの緊迫した状況における緊迫感・疾走感の表現にも繋がっている。

現実では通常の文体、ドリームレスワールドではクランチ文体を採用。前髪で目が隠れた悠の立ち絵が、ドリームレスワールドでは意志の篭もった瞳を覗かせるものへ変化するのもポイントだ
戦闘シーンなど緊迫した場面ではとくにクランチ文体がマッチ。キレのよい文章で緊迫した状況が表現される

 最初は情報が高密度に圧縮されたような文体に戸惑う面もあるが、どこか殺伐として乾いた世界観とはマッチしており、単なるイロモノという印象はない。文章が一文ずつ表示されるノベルゲーム形式との相性もよく、会話文の直後に“=”で補足を繋げるなど、テンポの良さにも貢献していると感じた。

 悠を導く謎めいた紳士“ノーマッド”や、陽気だが厳しい師匠役“エテルノ”など、夢の世界で出合った人物達と関わることで、少しずつ成長していく悠の姿も見所。本来は入ったら出られないドリームレスワールドと現実を行き来できる悠の力や、世界そのものの謎なども物語を牽引する魅力となっている。

謎の紳士ノーマッド。一見、思わず怯んでしまうような凄みのある人物だが、ドリームレスワールドのことを親切に教えてくれる
悠を鍛えるのは、スパルタだが陽気な姉御といった風体のエテルノ

 なお“サイバーパンク×ファンタジー”を謳う本作だが、導入部にあたる本体験版の範囲ではマナと総称される魔法の力が戦闘に大きく関わってくる。一方で、サイバーパンクの要素は薄めで(強いて言えばクランチ文体自体にサイバーパンクらしさを感じるが)今後の展開に期待といったところ。作者によると背景グラフィックは大幅にブラッシュアップされるほか、クランチ文体についてもよりスタイリッシュな文章を目指すとのことなので、こちらも合わせて期待したい。

「DREAM LESS WORLD」体験版
【著作権者】
ArkRiot
【対応OS】
64bit版を含むWindows 2000/XP/Vista/7(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
体験版
【バージョン】
1.00(14/08/17)

(シューティングゲーム編:石田 賀津男 / アクションRPG編・ノベルゲーム編:中村 友次郎