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~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~

【第8回】

歌詞がなけりゃ歌えません

(01/11/16)



ケケ中
 オンラインソフトでオリジナルソングを作って、ちょっくら全世界に発信でもしてみまいか!(遠州弁)というこの企画。東大阪から単身上京してきたちょっとおマヌケな歌手志望の青年「ケケ中」は、果たして本当にデビューできるのか!?

 今回は、オリジナルソングの大きな柱、歌詞を作っていくぞ。4小節(くらい)ずつ、ゆっくりアバウトに作ってみよう!


モッティ

「ジャ○アン・リサイタル」からの脱却を目指して……

「モッティさん! アレ、どうにかしてくださいよ。キー!」

 ありゃ? 前回とまったく同じ幕開け。編集担当I氏の指さす先には恍惚とした表情で「ラララ~」と大声を張り上げるケケ中。前回、ケケ中に指示しておいたボイストレーニングの真っ最中だ。確かにまだまだ「ジャ○アン・リサイタル」の域を脱していないが、それはI氏もわかっているはずだ。なのに、なぜ再びモッティが詰め寄られなければいけないんだ?

「歌の練習中だというのはわかるんですけど、無意味な『ラララ~』って声が聴こえてくるとみんな気が散っちゃって仕事にならないんですよ! キー! PCまで調子悪いんですよ! キー!! 早いとこ歌詞を作っちゃってくださいよ! キ~~!」

 ケケ中の声が衝撃波か電波でも発しているのかよ? というツッコミは控えつつ(出していそうだが)、歌詞がなければ歌の練習も中途半端になってしまうというのも事実。歌詞作りに取り組むことになった。

 でもまてよ、ケケ中のプロデュースすべてをモッティが請け負っているとはいえ、せめて歌詞くらいケケ中の独自性を出してあげたいような気がする。歌の練習の息抜きにもなるだろうし、ここはいっちょケケ中にまかせてみよう。

 ケケ中に歌詞作りの話を振ったところ、「歌詞作らせてくれるんでっか? もちろんやりまっせー。ワシの詩的センスの見せどころや!」と乗り気だ。あぁよかった。

 さっそく鉛筆を持って歌詞をひねり始めるケケ中。この間にモッティは別室で楽曲のブラッシュアップを進めよう。

勢い込んで始めたはいいが   顔色悪すぎ……
勢い込んで始めたはいいが   顔色悪すぎ……

 1時間後、何かいいフレーズが浮かんだかとケケ中のいる部屋に出向くと、そこには青い顔をしてうなだれるケケ中がいた。調子でも悪いのか!?

「いや、子供の頃から鉛筆もってノートに向かうとポンポン痛なってまうんですわ。歌詞作り、モッティさんにまかせるよって」

 はぁ……。

「驚異の」自動作詞ツールを使う!

 ため息はついたものの「何か道具出してよ~」と泣き付ける青いネコ型のアレはモッティの傍らにはいない。こんなときはネット上をぐるぐると徘徊しつつ、使えそうなモノを見つけてくる方が手っ取り早い。

「驚異の自動作詞 ミーハー編」
「驚異の自動作詞 ミーハー編」

 で、見つけてきたのは「驚異の自動作詞 ミーハー編」v6.00。初版が1991年ということは、以前一世を風靡した(?)「人工無能」や「~弁変換プログラム」といった類のソフトに近いようだ。

 ドキュメントにはジョークソフトだとあるが、

○○の○○に感じる○○、
○○が○○の○○に映る、
ただ○○の○○だけが、
ぼくの○○を知っているのさ

 といった「基本歌詞」の○○部分に言葉をランダムに当てはめて歌詞を生成する仕組みだ。○○の部分には名詞、形容詞、自動詞、他動詞などの品詞が指定されていて、それぞれの品詞を集めた外部ファイル(拡張子「.DAT」のテキストファイル)からランダムに挿入される。

 ためしに標準の状態のままで歌詞を生成させてみると、シュールな歌詞になったり、そのまま使えそうだぞ! と思わせるような歌詞になったりこれがけっこうおもしろい。これを改変して使ってもいいが、.DATファイルを自作してみるのもいいだろう。基本歌詞をメロディのリズムに合わせて作っておけば自動作詞後の微調整も楽になるし、曲のコンセプトに合わせた語彙を.DATファイルに入れておくという手もある。

 今回は.DATを自作してみた。.DATファイルには「波」「海」「光」など「ちょっとトロピカルなフュージョン風歌謡曲」をイメージさせるような言葉を入れた。そのほか女性的な言い回しはしない、横文字はなるべく使わない、愛だ恋だと、うだうだ言わないなど、モッティの趣味がモロに反映されている(笑)。Aメロ、Bメロ、サビの各パートに分けて作詞させ、メロディとすり合わせていった結果、こんな歌詞になった。I氏に「こんな歌詞クサすぎます! キー!」とか噛みつかれそうだが、「ベタな歌謡曲」っつーことで説得してみるか。なんと言われようがプロデューサーはこのモッティなのだ。

 波の音がまぶしく ちょっとだけ目を伏せる
 肌をつつく光が 海への道に誘う

 まるで子供のように はしゃぎながら
 白いシャツを脱ぎ捨てて 飛び込んだら

 甘い水の中 見つけた秘密
 隠したって なくしたって 手にできる気がしていた
 気まぐれな歌が 聞こえてきたら
 急に背中押されて かける


 ひとつひとつきらめく おかしい夢のかけら
 笑いながら集めて 海へと投げ捨てる

 たとえ時間さえ 忘れ去って
 夏の色に染まりながら 溶け出しても

 甘い水の中 探した秘密
 忘れたって 壊したって 手にできる気がしていた
 気まぐれな歌が 聞こえてきたら
 チカチカした姿で 飛び出す 今
 甘い水の中 見つけた秘密
 急に背中押されて かけてく

 ケケ中、待ってろよ。この歌詞でイヤというほど歌わせてやるぞっ!

一杯の牛丼を友と分かち合え!

 さてさて、楽曲のブラッシュアップの方も進行中。前回公開したMIDIファイルは、実はグルーブクオンタイズをかける前にリズムをけっこういじってあった。具体的にはバスドラムのタイミングを変更し、ベースラインをそれに合わせたという作業を行なったものだ。また、オープンハイハット→クローズハイハットというフレーズをスネアドラムの直後に入れてアクセントにしてある。

 リズムパターン以上に困ってしまったのは、バッキングのピアノ(エレクトリックピアノ)とオルガンのフレーズだ。モッティは鍵盤楽器が苦手でどうしても後回しになってしまう。オルガンの方は全音符や2分音符などでコードを適当に鳴らしていればいいが、ピアノは短めの音でリズムを刻まないと面白みがない。しかし、そのときにどんな音を鳴らせばいいのか……。

 こんなときにはフランクン古田さんにきいてみよう。いつもモッティがたずねる前に先回りされてるから、今度はちゃんとメールで質問してみるのもいいな。

 と、メールソフトを立ち上げてみた。ん? 未読1件? 変な予感が……。

> モッティ、がんばってるか? 何か質問が来そうな予感が
> したので先回りしてみた

 予感的中。メールで先回りされている……。いや、ありがたいんですけど。

> バッキングを作るときには『清貧の思想』を思い出せ。一
> 杯の牛丼を友と分かち合えばひとり200円だ

 今は140円ですね。

> ひとつのコードを複数の楽器で構成する手法もあるのだ。
> オルガンとピアノ、双方合わせてひとつのコードになるよう
> に音を並べてみろ。これはクラシックの和声法だが、ポピュ
> ラー音楽に応用しても面白いぞ。じゃ!

たまには古田氏も脱力
たまには古田氏も脱力

 これだ! オルガンとピアノで同じコードを鳴らしてもお互いの音が重なっちゃうから、バラすといいんですね! ありがとうございます……。

 というわけで、オルガンとピアノの音をいろいろと調整してみたMIDIファイルを用意した。せっかく歌詞もできたことだから、フルコーラス作ってある。「olsdebut-08.mid」だ。また、MIDIファイルだけだと音源によって音の感じがガラっ と変わってしまうので、MP3ファイル「olsdebut-08.mp3」と併せて聴いてほしい。

 さて、次回はギターだ。実はこれもかなり不安たっぷりなんだが……。こんな調子で果たしてケケ中はデビューできるのか!? 注目せよ!!

フルコーラスのMIDIサンプルファイル

olsdebut-08.mid
(38.3KB、4分22秒)
フルコーラスのMP3サンプルファイル

olsdebut-08.mp3
(2.54MB、4分26秒)

今回使用したオンラインソフト

・「驚異の自動作詞 ミーハー編」 無料で使えるソフト
  【著作権者】Y.Yamazaki、K.Kasahara、Y.Yamamoto
  【対応OS】Windows 95以降
  【バージョン】6.00(00/06/20)
  □驚異の自動作詞 ミーハー編 for Win9X
  http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se150483.html

(文:モッティ  監修:フランクン古田)


 記事中の楽曲制作者は望月 貞敏氏です。著作権は同氏に帰属しますので、こちらのファイルの無断転用・転載は著作権法違反となります。
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【バックナンバー】

最終回:オリジナルソング完成!! そしてケケ中の運命は……!?

第10回:運命の歌&ギター録音当日……

第9回:ギタリスト促成栽培計画!

第8回:歌詞がなけりゃ歌えません

第7回:ケケ中バージョンアップへの道 ボーカル編

第6回:曲の構成その3 そしてボーカルのメロディ完成へ!!

第5回:曲の構成その2 Aメロ、Bメロを作ってサビにつなげ!

第4回:曲全体の構成開始! イントロからいってみよう!

第3回:聴かせどころ「サビ」を作るぞ!

第2回:まずはリズムから作ってみよう

第1回:オンラインソフトで音楽制作に挑戦だ!

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