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AirCraft 97 for NIFTY SERVE


評価時: 2.0 (10/31/97)


オートパイロット・ログブラウザ機能を内包した統合的なNIFTY SERVE専用通信環境。

AirCraft 97 全景とリッチメール機能
AirCraft 97全景とリッチメール機能
 従来の通信ソフトの概念を大きくうち破った画期的なコミュニケーションツールと言っても良いAirCraft 97。待ちに待たれていた正式版が1997/10/31ついに公開された。WWWブラウザとの連携を含むハイパーリンク機能やMIMEメールへの対応に加え、初心者にも簡単に使えるという点でも、「ニフティマネジャー」を超えたか。

[各種基本機能]
  AirCraft 97 の基本となるのは、洗練されたオートパイロットログ自動整理機能を核とした高度な情報収集・整理機能である。NIFTY SERVE のサービスのうち、今週のお知らせ、課金情報、クリッピングサービス、メールの送受信、フォーラム会議室・パティオ・ホームパーティの巡回と発言、データライブラリのアップロード&ダウンロード、プロフィールの取得・変更など利用頻度が高いと思われるものは全てオートパイロットで対応している。(掲示板は今後対応予定)

 また、手動によるフォーラム会議室、データライブラリ、リアルタイム会議、ファイル検索、サービス検索や電子メールなどへのアクセスをオンライン支援する「ナビゲータ」機能も装備している。

 取得した情報は全て、オートパイロットであると手動アクセスであるとに関わらず自動的に整理して保存されるので、オフラインでじっくり、ゆっくりと読むことができる。オートパイロットの経路等も全く利用者が気にする必要はない。AirCraft 97 が効率のいい巡回経路を自動的に計算してくれるからだ。Win95 の能力を十分に引き出した超高速な動作とあいまって、課金と電話代の大幅な削減が可能だ。もっともあまりに便利すぎるのでついついあれもこれもと欲張ってしまい課金が増えることも考えられるが(笑)。むろん節約されるのは課金だけではない。膨大なログの整理や検索に費やされる時間をほぼゼロにできるメリットは大きい。

 「ナビゲータ」機能の一つとして内蔵しているチャットアダプタ(リアルタイム会議支援機能)は、後述するアドレス帳機能と連動して動作するので、一度保存したプロフィール情報や以前の交流記録などを参照しながらチャットをすることが出来てとても便利だ。今のところ、フォーラムのリアルタイム会議だけの対応だが、NIFTY SERVE 全体のチャット機能である「CBシミュレーター」もサポートする予定。

 NIFTY SERVE への接続方法は、FENICS-ROAD / NIFTY-ROAD / HyperROAD を利用した通常の接続方法の他に、インターネット経由の接続である Telnet 接続にも対応している。ただし、Telnet 接続は現時点で NIFTY SERVE 側が暗号化をサポートしていない為、パスワード等のデータが途中の経路で覗かれるリスクがある。NIFTY SERVE と同じ富士通系の HyperROAD や InfoWeb でインターネット接続している場合は安心して使ってよいが、それ以外の場合は、パスワードを頻繁に変更するなどの注意が必要だろう。

また、MIMEメールにも対応しているので、画像などのバイナリファイルの添付が可能だ。もちろん添付操作はドラッグ&ドロップで簡単にできる。デコード・エンコード方式もMIMEの標準であるBase64以外にuuencodeにも対応しているから殆どのメーラーユーザーとやりとりすることが出来る。

 AirCraft 97 ユーザー同士なら、上の図のようなリッチテキスト形式を利用したメールも可能だが、今さらという感がないでも無い。どうせなら、HTMLメールに対応して貰いたかった。

 他には、一人が複数の ID を使い分ける場合の「サブID」や、複数人が別々の ID を持っている場合などの「マルチユーザ」に対応している。「マルチユーザ」ではユーザ毎に殆ど全ての環境設定を行うことができる。メールなどは個人別に、会議室のログは共有フォルダに保存するといったことが出来るのでディスクの節約にもなるだろう。

 なお、AirCraft 97 には、無期限ライセンス版(タイプA)と、年間ライセンス版(タイプN)という2つのライセンス形態が用意されている。基本的な機能には差はないが、無期限ライセンス版のみのおまけ機能として、ツールバーのカスタマイズ機能と「ティッカ機能」という電光掲示板機能がついている。

特徴的なロールボタン機能
特徴的なロールボタン機能
[インターフェース]
 Macではおなじみのタイトルバーだけへの最小化という珍しい機能も実現している。タイトルバーの右上に通常ある「最小化」「最大化」「閉じる」ボタンの他に「ロール」ボタンがあり、これをクリックするとウィンドウを巻き取ってタイトルバーだけにしてくれるのだ。他のアプリで対応しているものを寡聞にして知らない為、他のウィンドウの上にタイトルバーだけ表示というのはイマイチ画面がすっきりしないように思えるが、なかなか面白い機能だ。

 ニフティマネジャー 3.0以降でサポートされている、NIFTY SERVE内のハイパーリンク機能(ニフティURL)をサポートしていて、会議室発言やメールなどのメッセージ中に、nifty:FAIRTERM/MES/12/3や、nifty:FINETAP/LIB/1/10というような文字列が含まれている場合に、これをクリックしただけで簡単に該当発言やファイルをダウンロード(予約)することが出来る。また、インターネットのURLにももちろん対応しており、インターネット接続が可能な場合は、自動的にブラウザが立ち上がる。

 ネイティブでインテリマウスに対応しておりインテリマウスのホイール機能も使える。

[強力なデータベース機能]
 オートパイロットにより集めた様々な情報の中から、自分あてのメッセージや、特定のキーワードを含むメッセージなど、興味のある情報を自動的にクリッピングしてくれる「トピックス」機能は、情報の洪水の中から自分にとって意味のある情報を効率的に集める上で強力な助けとなる。

 アドレス帳に代表される個人データベース管理も強力だ。IDや名前などの基本的データだけでなく、住所などのパーソナルデータやメモ、プロフィール、電子メールの送受信記録や発言記録、リアルタイム会議でのやりとりなどありとあらゆる情報が自動的に整理される。発言記録からは実際のログにリンクが張られるのでダブルクリックするだけで該当発言やメールを読むことができる。これは感動ものだ。

[将来の発展性も期待大]
 将来は POP3 / SMTP による E-mail や、NNTP による NetNews、HTTP によるウェブ巡回までもサポートする予定で、これからの発展も非常に楽しみだ。

 DOS 時代の air craft で高度なオートパイロットのカスタマイズに利用されていた PAD 処理もサポートされることが決まっている。Netscape や MS-IE などのブラウザに見られるようなプラグイン機能の装備も予定されており、本体だけではサポート出来ない機能は外部のプラグインを導入することで追加されていく。

 これだけの機能を備えたソフトが、半永久的な使用権のある無期限ライセンス版で2,500円(年間ライセンス版は900円)だというから、非常にリーズナブルと言っていいのではないだろうか。なお、上記のウェブ巡回機能などは、プラグインにより有償で提供される予定なのでそちらの料金も気になるところではあるが。

[気になる問題点]
 さて、ずいぶんと良い点ばかり述べてきたような気がするが、改良を望みたい点が無いわけではない。まず、画面にいろいろな情報が詰め込まれすぎているように思えるし、全体的にボタン類が多くごちゃごちゃしている印象がある。従って、ノートパソコンの狭い画面だと少々辛い(ツールバーを非表示にするなどである程度はカスタマイズできるが)。さらに、キーボードによる操作がしにくいのも気になった。AirCraft 97の最大の特徴であるデータベース機能を考えるとやはり常に携帯して活用したくなるがそんな時にはちょっと操作に難を感じるかもしれない。また、細かいことになるが、ブラウザ画面でタイトル上をカーソル移動させただけで未読マークが既読マークに変わってしまう点は改善して欲しい。

 ようやく正式版ということで動作もかなり安定してきてはいるが、解決されていない既知のバグもいくつかある。巡回結果はグローバルログとして完全なまま保存されており、万が一の不具合で異常が起きたとしても復旧は比較的簡単に可能(グローバルログの読み込み・解析機能が装備されているからである。)なのでそれほど心配する必要はないが、是非とも改良して欲しい点である。

 ニフティ社自身が提供するニフティマネジャー以上に、NIFTY SERVEとインターネットをシームレスにする予感を感じさせてくれるこのソフト、是非おためしあれ。


(Reported by 黒柳 一誠 / 幸田 拓耶)

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