イベントレポート

京都のインディーゲームフェス“BitSummit 2015”会場レポート

PC向けの新作タイトルを出展したブースを紹介

 7月11日と12日の2日間、京都・みやこめっせ(京都市勧業館)にて、インディーゲームの祭典“BitSummit 2015”が開催された。入場料は一般1,000円、中学生以上の学生500円、小学生以下は無料。

 “BitSummit”は2013年から始まり、今年で3度目となるイベント。国内外から82の団体・企業が出展し、多彩なインディーゲームが展示された。また今年は米国を拠点に活動しているインディーゲーム団体“Indie MEGABOOTH”も主催に加わり、より国際色の強いイベントになっている。なお昨年までは3月に開催されていたが、今年は7月開催となった。

 昨年に比べると出展者数は3割ほど減少しており、会場もややコンパクトになった。ホール中央に円形のステージを配置し、その周囲にブースを用意するという展示方法で、ステージイベントの存在感が増していた。インディーゲームのお祭りという色よりも、ビジネスショーとしての側面が強くなったという印象だ。

 本稿では、主にPC向けのタイトルを出展していた団体をいくつかご紹介したい。

会場のみやこめっせ
開会式には、主要スタッフとともに京都府のキャラクター“まゆまろ”も登場
PC系以外にもさまざまなブースが。実に30年ぶりの新作となる「ボコスカウォーズ2」も登場(PS4)。常に人だかりができていた
「TorqueL」のFullPowerSideAttack.comでは、折り紙を使ったパズル“いろかたおりがみ”も出展。カードに書かれた絵柄を、指定された回数だけ紙を折って作る

NIGORO

NIGOROブース

 NIGOROは開発中のアクションアドベンチャー「LA-MULANA2」を今回も出展。5月に開催された“東京インディーフェス 2015”で、Unityを使って作り直した新バージョンを公開したが、今回はそれに被ダメージ時のリアクションを加えるなどして、よりゲーム的に体験できるバージョンを用意した。

 Unityを採用したことで、ゲームそのものは3Dで開発されているが、実際のゲームはサイドビューの2Dアクションから変更はない。一見しただけでは3Dだとはわからないが、エフェクトの光が背景に反射する、背景を立体的に作って影を生成させリアリティを高めるなど、3D的要素を演出面で活用している。さらにはステージが90度回るといったダイナミックな動きでインパクトを与える演出なども考えているという。

 ちなみに3Dベースになったなら、解像度は上げないのかと尋ねてみたところ、『解像度は上げないが、ワイド画面にはした』とのこと。解像度についてはレトロ感を出す要素でもあり、これでいいという声も多いだろう。画面がワイドになることはマップデザインにも大きく影響するが、さすがに時代の流れでやむなしといったところだろうか。

 現状でプレイできたのは限られた区画だけで、現在もシステム周りの作り込みを続けている。今後も東京ゲームショウ2015などのイベントがおよそ2カ月おきに開催されるので、それに合わせて最新版を披露するそうだ。発売時期は現時点では未定としている。

一見大きな変化はないように見えるが、Unityで作り直された全くの新作になっている

闇討ちProject

闇討ちProjectブース

 闇討ちProjectは、3DアクションRPG「Dungeons & Darkness(ダンジョンズ&ダークネス)」を出展。会場ではPC版の体験版をプレイできたが、PC版はすでに完成しており、PLAYISMで近日配信予定としている。

 ダンジョンを探索し、最深部へ到達するのが目的。ダンジョン内ではゾンビやスライムなどのモンスターが現れ、剣や魔法で戦う。主観視点になっており、前後左右だけでなく足元から湧き出る敵にも注意が必要。モンスターにこちらを認識されると画面に目のようなアイコンが表示されるが、こちらが認識できていないこともあり、かなり緊張感がある。

 武器の剣は振る角度や距離が決まっているため、闇雲に振っていても当たらない。攻撃が届く位置と向きをきちんと合わせる必要がある。足元にいるスライムには、下を向いて攻撃しないと当たらないという具合だ。ただ武器にも種類があり、横薙ぎに複数の敵を倒せたり、シールドバッシュで昏倒させたりとアクションは多彩だ。

 本作で特徴的なのが、お金の概念がないこと。装備にはそれぞれ異なる性能が付与されており、より強力な装備を求めてダンジョン深く潜っていく。全体として非常にシリアスなゲームデザインで、ゆっくりした動きの敵を相手にしていても緊張感がある。サウンドもダンジョンの反響音があったりして雰囲気を高めている。

極めて硬派な3DアクションRPG。アクション好きなゲーマーにヘッドフォンをかぶせて遊ばせたい

ARTIFACTS

ARTIFACTSブース

 ARTIFACTSは、自動探索型RPG「マジックポーション・エクスプローラー」を出展。製品版が完成し、本会場で初めて販売した(体験版も公開中)。ダウンロード版も近日発売予定としている。

 画面左にあるフローチャートのような絵はダンジョンで、主人公の少女がモンスターと戦いながら地下へと進んでいく。プレイヤーは直接的な指示は出せないが、主人公が得た経験値(RP)を使って主人公を成長させることができる。体力や攻撃力を強化すれば、ダンジョン探索もどんどん進む。

 主人公が途中で力尽きると、再びダンジョン入り口から再開となる。ペナルティはないので、何度も挑戦していればいつかはクリアできる。基本的には放っておいても進行するが、画面左下のボタンを押せば中断はできる。のんびりやってもいいが、真剣にやるとどの能力を高めるのかを瞬間的に判断するという、割と忙しいゲームになる。

のんびり遊ぶも熱中するもプレイヤーの自由。ゆるめの世界観も楽しい

Pon Pon Games

Pon Pon Gamesブース

 Pon Pon Gamesは、ダンジョン脱出RPG「ヒーラーは二度死ぬ」を出展。戦士とヒーラーの2人がダンジョンから脱出するため、次々と現れるモンスターを撃退しながら進む。本作はPlayStation Mobileで配信されていたタイトルだが、PlayStation Mobileがサービスを終了してしまうこともあり、今回はWindows版も出展された。Windows版は会場で初売り。

 主人公はヒーラーとなり、前にいる戦士をひたすらサポートする。戦士は頭、体、左手、右手、足の5つの部位に分かれてダメージを受けるので、ヒーラーは回復魔法で部位を指定して回復していく。戦士は目前の敵を順次攻撃していくが、横並びになっている敵のうち、どれを攻撃するのかはプレイヤーが指定できる。

 敵を倒していくとレベルが上がり、強力な回復魔法や戦士の強化魔法など、新たな魔法を覚えられる。魔法を駆使して戦士が倒されないように回復しつつ進んでいくのが基本だが、ダンジョン内は暗闇なので、たいまつがないと何も見えなくなってゲームオーバーとなる。たいまつは拾ったアイテムを合成して作れるので、戦士の補助と合わせてアイテム合成も必要になる。のんびりしたゲームに見えて、実は結構忙しい。

プレイヤーはあくまで回復係だが、戦士とたいまつの状態確認、敵を倒す戦術など、瞬時に判断すべきことが多い

Throw the warped code out

Throw the warped code outブース。写真は開発者の一條貴彰氏

 Throw the warped code outは、3Dアクションアドベンチャー「Back in 1995」を出展。モンスターが徘徊する建物の中で、武器を拾って撃退しながら進んでいく。

 タイトルに“1995”とある通り、1995年頃にあった3Dアクションゲームをイメージして制作されている。固定カメラでシーンが切り替わるように進行し、当時を思わせるようなドットが見える3Dグラフィックスになっている。

 操作は上で前進、左右で向きを変える(回転)。武器もきちんと敵に向かって振らなければ当たらない。当時のゲームを知る人なら、「アローン・イン・ザ・ダーク」と「バイオハザード」の間くらいをイメージしていただければ概ね間違いない。すぐに逃げられないとか、攻撃しながら動けないとかいう、あの頃感じた操作の不親切感もそのまま再現している(笑)。今のゲームではなく、20年前のゲームを懐かしむつもりで遊んでいただきたい。

『20年前の3Dアドベンチャーってこうだったな……』と懐かしみながら遊ぶと楽しさ倍増

Maruchu

Maruchu氏

 Maruchu氏は開発中の作品として「バウンデッド!」を出展。以前「七人のハナコさん」という作品で使用した、さまざまなものを切断するというアクションをベースにした新たなアクションゲームとなる。

 サイドビューの2Dアクションゲームで、左右の移動とジャンプが可能。加えてマウスで線を引くようにドラッグ&ドロップすると、その場所に主人公が滑空し、斬撃を加える。柱やモンスターを好きな角度で切断できるのが爽快だ。

 ゲームのポイントは、斬撃のターゲットとなる敵やオブジェクトがあれば何度でも滑空を続けられるが、何もない空中を斬ってしまうとそのまま落下してしまうところ。ゲームとしてはまだ未完成だが、今後はその辺りの仕組みを使って、ステージのギミックを組み立てていくことになるそうだ。

マウスで自在に斬る感覚が既に爽快。しかし空中を滑空して進むアクションはなかなか手ごわそうだ

ほしさらい

ほしさらいブース

 ほしさらいは、開発中のアクションゲーム「アトの跡」を出展。ロボットのような主人公が、後ろをついてくる少女を守りながら、さまざまな敵が待ち受ける森を進んでいく。

 主人公は何度攻撃を受けても死なないが、少女が攻撃を受けると倒れてしまい、一定時間内に駆け寄って助けないとゲームオーバーになる。主人公は回転する鎌のような武器と、足を踏み鳴らして周囲の敵を吹き飛ばす攻撃が使える。

 本作は以前から開発されているが、今回は新たに竜巻のようなものを発生させて敵などを吸い込む要素が追加された。複数の敵や敵の弾を集めて、吹き飛ばし攻撃でまとめて弾き飛ばすという動きになっている。ただ竜巻の要素はあくまでテスト的なもので、今後どうするかは未定だという。

敵を引き込んでから弾き飛ばすというアクション。ボスの大量の弾もまとめて引き込んではじき返すと爽快

AstralGate

AstralGateブース

 AstralGateは、オープンワールドアドベンチャー「GENSO」を出展。オープンワールドというと、自由に移動できる3Dアクションゲームを想像するが、本作における意味は全く違う。

 「GENSO」はPC版のアドベンチャーゲームを中心としたコンテンツ。今回見られた部分では、PC版で進んだ先にある扉に謎のスイッチが付いており、その解除方法がわからない。そのヒントとなるのが同人誌(紙媒体)で、最初から破られた状態のページと、ゲーム内で見られる破れたページのデータを重ね合わせると、1つのページが出来上がる。これをヒントにしてスイッチの解き方を考える、という仕組みになっている。

 その先もさまざまな謎や仕掛けがあるが、ゲームとしては進めても何かしらの謎が残る。そこを同人誌やスマートフォンなど別のメディアを組み合わせることで、謎が解けたり世界観が理解できたりするようなものにしたいという。ゲーム内でオープンなのではなく、ゲームの外にある現実世界においてオープンなアドベンチャーというわけだ。

 現在はスマートフォン向けの脱出ゲームを開発中で、これ単体でもプレイできるが、もちろん遊んだ結果がPC版の進行に影響するというわけだ。その後の展開は検討中だという。現状ではゲームとしてできたものがほとんどないのだが、荒廃したビジュアルや文字を使わないセンスなどが評判を呼び、すでに注目作となっている。ただ作者は本作の全体を『10年くらいかけて作りたい』と語っていたので、プレイヤー側も本作の世界を長く楽しむつもりで見ていくとよさそうだ。

PC版の謎を解くために、スマートフォンアプリや同人誌など他のメディアが絡んでくる。1つ1つでも遊べるものにはなるという(右はスマートフォンアプリ)

(石田 賀津男)