イベントレポート

インディーゲームの祭典“BitSummit 2014”会場レポート 第2回

現在開発中の新作インディー・同人ゲームがプレイアブルで出展

“BitSummit 2014”会場前に設置された立て看板

 3月7日から9日までの3日間、京都市勧業館みやこめっせにて、インディーゲームの祭典“BitSummit 2014”が開催された。7日は関係者やメディアなどのビジネスデイ、8日・9日は一般開放日で、入場料は500円。

 会場レポート第1回に続き、今回は現在開発中のタイトルを出展していた団体を中心に紹介する。

国内外から多くの人が来場した
京都府の広報キャラクター“まゆまろ”も来場

チャイルドドリーム(Child-Dream)

 RPG「Lost Memory」やアドベンチャーゲーム「人形の傷跡」などで知られるチャイルドドリームは、ミステリーアドベンチャーゲーム「緋染めの雪」を開発中。基本的には途中で現れる選択肢を選んでいくテキストアドベンチャーで、タブレッドPCによりプレイアブル出展されていた。

 ゲームは重傷を負って雪穴に落とされた少年の視点で始まり、少年の傍らには遺体が倒れ、そしてその雪穴を覗き込む謎の少女が現れる。その後、物語はこの地域で起こった事件を追うためにやってきた旅の女性へと視点が移る。女性が雪穴に落とされた男の遺体を発見した時、ゲーム画面には“REC”という文字の書かれたビデオカメラのアイコンが現れる。これをタッチすると、女性は手に持ったビデオカメラを回し始め、この場面を撮影する。

 ビデオの映像が後に何かの鍵になることは間違いない。縦書きのテキストと、雪の白、血を思わせる赤で描かれた絵が、和のテイストを強く感じさせる作品だ。

縦書きの文字が和の怖さを感じさせるミステリーアドベンチャー
ビデオを回す、というのが本作のキーになりそう

FullPowerSideAttack.com

 FullPowerSideAttack.comは、以前から開発を進めている「TorqueL(トルクル)」の最新版を出展。PS4コントローラーの○×△□ボタンを押すと、その方向に応じて四角いキャラクターから棒のようなものが飛び出す。この棒を使ったアクションと基本の左右移動を使い、マップの仕掛けを越えてゴールを目指すステージクリア型のアクションパズルゲームだ。

 今回は飛び出した棒が壁にめりこまないようにすることと、物理エンジンの挙動に調整を加えることで、より厳密な操作が可能になった。本作の場合、こういった辺りをいじると、これまで難しかったステージが簡単になったり、逆にクリア不能なステージができたりするので、合わせてステージの構成も作り替えられている。今回は厳密な操作に合わせて、ステージの幅を細く調整しているという。

 今後もイベントなどで来場者に触ってもらい、反応を見ながら調整を続けるとのこと。ゲームはPS4およびPS Vitaで2014年末の発売に向けて開発中。PC版も2015年には提供したいとしている。

4方向に伸びる棒をうまく使ってゴールを目指す。何度でもやり直し可能
SCEブースにはPS Vita版もプレイアブルで出展

札幌ゲーム製作者コミュニティKawaz - TeamVOX

 札幌ゲーム製作者コミュニティKawaz - TeamVOXは、「VOXQUARTER(オクスクオーター)」のデモ版を出展。コマンド選択型RPGと音楽を融合させた“VOX”シリーズの第3弾で、次々と現れる敵を画面下にあるコマンドが書かれた球を動かして倒していく。

 コマンドは攻撃、防御、攻撃魔法、回復魔法などがあり、ステージが進むとコマンドが増えていく。コマンドはその時選んでいるものが、音楽の1小節ごとに自動で実行される。ずっと攻撃のまま放置すれば、1小節ごとに攻撃をし続けるわけだ。またコマンドは、線で繋がった隣のコマンドにしか移動できない。たとえば攻撃からは防御と攻撃魔法が選べるが、回復魔法を選ぶには防御か攻撃魔法を経由しなければならない、といった形だ。

 これらのコマンドを変えると、音楽も変化する。自分の行動に応じた音楽が鳴るというインタラクティブ性がユニークで、なおかつコマンドを選んだという実感も強く、1小節ごとにコマンドを考える必要もあるため、ゲームに集中して引き込まれる感覚が強い。現在はまだプロトタイプというところで、UIを含めてこれから作り込みをしていくという。

選んだコマンドによって行動と音楽が変化する。コマンド選択だけなのに快感がある

Studio F#

 Studio F#は、寄宿舎サスペンスアドベンチャーゲーム「渡り鳥の門は遠く」のデモ版を出展。2009年に制作され、現在は頒布終了している同名の作品を、全グラフィックスを一新したリメイク作となる。

 寄宿舎で暮らす2人の少年が、鐘楼に現れるという幽霊を探しに行く。そこには謎の少女の姿が……。2人はその後、庭師の少年と出会うものの、この少年が忽然と姿を消してしまう。2人はその真相を突き止めるべく動き始める、というのが本作のストーリー。サスペンスあり、淡い恋愛もありの物語が展開される。

 絵だけ見ると女性向けの印象を持たれがちだが、特に限定しているわけではないそうだ。Windows向けに5月に完成予定で、本編のメインストーリーのみ無料でプレイできる。完全版には後日談ゲームも同梱される(ただしこちらは15歳以上推奨)。

 このほか、PS Vita向けウェイトレス体験アドベンチャー「ファー×メイツ!」も出展。客の注文を覚えて運ぶという、記憶と操作の正確さを求められるゲームになっている。

「渡り鳥の門は遠く」は序盤からホラーっぽい雰囲気のシーンも。先々はサスペンスと恋愛を描いたものになる
「ファー×メイツ!」は注文を覚えて運ぶ、記憶力が求められるゲーム

ドラキュー

 ドラキューは、PS4用ロボットアクションシューティングゲーム「重装機兵レイノス」を出展。1990年にメガドライブで発売された同名作品のリメイクとなる。

 ドラキューは「機装猟兵ガンハウンド」などのロボットアクションゲームを展開しているが、これらの作品は「重装機兵レイノス」や続編の「重装機兵ヴァルケン」のオマージュとして開発したのだという。しかし原点となる作品はいくら待てども続編が出ることはなく、しびれを切らしたドラキュー代表取締役の富野裕樹氏は、現在「重装機兵レイノス」の版権を持つエクストリームに『続編を作らせて欲しい』と直談判。その熱意が伝わり、今回のリメイクが実現したとのこと。

 ゲーム内容はメガドライブ版をベースにしつつ、ボスが登場しないステージに新ボスを入れるなど現代的にアレンジ。また新ボスが出ない、オリジナル版に近い構成となるモードも搭載するという。映像面はPS4のパワーを活かして大幅にアレンジし、物理エンジンまで搭載して美しさを高めた。富野氏は、『当時のマシンでは処理能力やメモリの制約でできなかったことも、PS4では軽々と実現できるのが幸せ』と語っていた。発売は2014年の予定。

PS4のパワーもあり、グラフィックスはリッチで滑らか。ゲームのプレイ感は原作同様2Dだが、物理エンジンを搭載して今風のゲームに仕上げている

Project ICKX

 Project ICKXは、3Dフライトシューティングゲーム「VERTICAL STRIKE -ALTERNATIVE-」を出展。ゲームとしてはオーソドックスなスタイルのフライトシューティングゲームなのだが、本作は同サークルが開発している3Dフライトシューティングフレームワーク「alternator」のデモ用作品という位置付けでもある。

 「alternator」は現状、若干のプログラムコードを書く必要があるのだが、出展されていたゲームでは数十行程度しか書いておらず、残りはフレームワーク側で対応しているという。最終的には、シナリオを用意し敵の出現位置およびタイミングを設定できれば、3Dフライトシューティングが作れるくらいのものにしたいそうだ。

 なお「VERTICAL STRIKE -ALTERNATIVE-」そのものもゲームとして開発する予定。これの反応を見ながら、「alternator」の機能拡充なども行いたいとしている。

「VERTICAL STRIKE -ALTERNATIVE-」は見た目こそオーソドックスだが、「alternator」を使って作られているというのがポイント

哲人ドリル

 哲人ドリルは、ヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”を使ったバーチャルリアリティソフト「木造校舎を歩く」を出展。日本の古い木造校舎の中を歩けるというもので、移動はゲームパッドを使い、視点はOculus Riftのモーションセンサーで上下左右360度を自由に見渡せる。

 あくまで校舎内を歩くだけでゲーム的な要素はないが、机や窓際などに近付くと環境音が変化するなどインタラクティブ性はある。現状は2つの教室に移動でき、昼と夜の教室を体感できる。Oculus Rift対応のソフトはいくつか出展されていたが、デバイスならではのバーチャルリアリティを見せるソフトとしては、本作が際立っていた印象だ。

 ただ現状ではOculus Riftは開発者向けにしか販売されていないため、ソフトも一般販売するのは難しい状況だ。デバイスとソフトの双方で今後の展開に期待したい。なお本作は他にiOS版も同時開発されている。

ウェブマジック

 ウェブマジックは、オープンワールド型アクションアドベンチャー「Karvan's」を出展。中世ユーラシア大陸をイメージした世界を自由に生き抜くゲームで、ストーリーが存在しないことを強調している。

 プレイヤーキャラクターは、体型・体格によって能力が決まる。足が長ければ走るのが速く、腕が太ければ力強いといった仕組み。武器や防具も能力に影響し、重い鎧を着ければ動きが制限され、力自慢のキャラクターは小さな武器が使いづらいこともある。キャラクター自体は成長しないため、自分の体と目的に合う装備を探し求める。

 キャラクターの変化としては、異性のNPCと子供を作ることができる。自分とNPCの体格や顔つき、技能などの能力が交配情報として子供に受け継がれる。NPCはランダムに生成されるので、好みのNPCを探して子供を作り続けることで、理想のキャラクターに近付けていくという寸法。ただし顔つきも遺伝するので注意が必要だ。完成は今夏の予定。

今回はキャラクターの交配や武器の生成のデモのみ展示。初めから海外を見据えて、洋ゲーテイストのビジュアルにしているそうだ

(石田 賀津男)