イベントレポート

インディーゲームの祭典“BitSummit 2014”会場レポート 第1回

世界に羽ばたく国産インディーゲームが多数出展

“BitSummit 2014”2日目の様子

 3月7日から9日までの3日間、京都市勧業館みやこめっせにて、インディーゲームの祭典“BitSummit 2014”が開催された。7日は関係者やメディアなどのビジネスデイ、8日・9日は一般開放日で、入場料は500円。

 “BitSummit”の開催は昨年に続いて2度目。前回は海外のメディア関係者を呼んで日本のインディーゲームをアピールすることを目的として、クローズドなイベントとして行われた。今回も当初の趣旨は踏まえつつ、規模は大幅に拡大。会場では、ビジネスデイに112、一般日に116の企業やゲーム制作サークルが参加した。さらにゲームプラットフォームの企業やミドルウェア開発企業などのスポンサーの出展もあった。

 会場では、出展している開発者同士で談笑したり、出展タイトルについて意見交換をしたりする場面が見られたほか、一般来場者には家族連れの姿もあった。有力なタイトルの海外展開を支援する真面目な印象だけでなく、日本のインディー・同人ゲームの開発者が集まるお祭り的な面も強く感じられる、明るいイベントとなっていた。

 イベントのレポートは3回に分けてお届けする。第1回となる今回は、出展していた団体の中から、メインの趣旨である海外展開に関連したものをいくつかご紹介したい。

会場の京都市勧業館みやこめっせ
初日はビジネスデイにも関わらず、海外のメディアを含め多くの来場者が集まった
イベントステージも用意され、稲船敬二氏ほか“ロックマン”シリーズに関わったスタッフによるアクションゲーム「蒼き雷霆ガンヴォルト」など、コンシューマーゲームの新作発表なども行われた。さらには音楽のライブイベントも

SilverSecond(シルバーセカンド)

 ゲーム“シルフェイド”シリーズやゲーム制作ツール「WOLF RPGエディター」などの作者であるSmokingWOLF氏が運営するSilverSecondは、開発中の強制横スクロール型ローグライクRPG「片道勇者+」のデモ版を出展。無料で公開している「片道勇者」に新要素を追加したアレンジ版で、特徴的な新クラスが3つ追加、インターフェイスの改善など、各所のバージョンアップを行っている。

 これまでネット中心に活動しており、即売会などには出展していないSmokingWOLF氏だが、「片道勇者+」に関してはこういった場所で公開しながら意見を求め、今後も改善や新要素の追加を続けたいとしている。そのため、完成時期はまだ未定。最終的にはダウンロード配信サイト“Steam”および自分のサイトで配信する予定だという。

 会場では「片道勇者+」に加えて、先日Steamで販売が開始された「片道勇者」の英語版も出展。こちらは配信直後から好調で、SmokingWOLF氏は『ローカライズ代は十分返せてよかった』と語っていた。

「片道勇者+」の新クラス“忍者”。敵に見つかりにくく、瞬間的な攻撃力重視のバランス
とにかく弱い“観光客”。本作をやりつくした人向け
新機能の1つ“死亡時スクリーンショットを見る”。死んだ後の評価画面でこれを選ぶと、死んだ瞬間の画面が確認できる

NIGORO

 開発中の遺跡探索アクションゲーム「LA-MULANA2」が、Kickstarterによるクラウドファンディングで20万ドル以上を集めたことでも注目されたNIGORO。今回はその「LA-MULANA2」に関して、公開中のデモ版に手を加えた最新版が公開された。変更点は、しゃがみ可能、自分の周りに丸く明かりが点る、敵を倒したときのエフェクトを刷新、ボス登場時に名前を表示……など地味な内容ながら、イベント当日も修正を加えていた。

 ただ既に発表されている通り、来年完成予定の正式版は新規に制作される。このデモ版はあくまで新ステージのごく一部を体感してもらうためのもので、今回の修正も本会場のための特別版という扱いになる。なんとももったいない話だが、開発スタッフによると『どのゲームも毎回3回は作り直している』とか。

 このほか、PS Vita向けに開発中の「LA-MULANA」が、隣接するピグミースタジオにプレイアブルで出展されていた。これは移植作業をピグミースタジオが担当しているため。基本的には単純移植となる予定だが、ピグミースタジオ側からはオリジナル要素を入れたいという話も上がっているという。NIGOROは開発協力および監修といった立場で、「LA-MULANA2」の開発に専念するそうだ。

しゃがみを覚えた「LA-MULANA2」の主人公
ポーズをかけると、カレーではなく寿司を食べる
隣のピグミースタジオに置かれた、PS Vita版「LA-MULANA」
既にかなり遊べる内容になっている

Novectacle(ノベクタクル)

 Novectacleは、サスペンスホラーのビジュアルノベル「ファタモルガーナの館」の英語版を出展。会場でデモを流しつつ、デモデータ入りのディスクも配布していた。

 またHTML5環境でノベルゲームを配信する“ノベルスフィア”に「ファタモルガーナの館」(日本語版)を提供することも発表。3月にWebブラウザー版を提供した後、4月にはスマートフォン版も提供予定としている。会場ではiPhoneでデモを行っており、高解像度でPC版と遜色ない画像が見られた。

 “ノベルスフィア”を利用するメリットとしては、スマートフォン対応だけでなく、インストールが不要なこと、セーブデータがサーバー上に保存されるため環境を変えてもプレイを継続できることなどがある。

開発中の英語版。特に違和感ない形で差し替えられている
iPhone版(日本語)のデモも。高解像度の画像で十分楽しめる

えーでるわいす

 えーでるわいすは、昨年末のコミックマーケットで頒布され注目を集めたアクションシューティングゲーム「アスタブリード(Astebreed)」の英語版を出展。プレイ中のセリフが英語で表示される(音声は日本語のまま)ほか、ゲーム内の設定資料も全て英語になっている。こちらは日本語・英語両対応版として、Steamでの配信が予定されている。なお既存のパッケージ版に関しては、英語版への対応はしない予定だという。

 ゲーム内容については日本語版と同様。ただ元の完成度が高いことや、初日に入り口から一番近い場所にあったことも影響してか、海外メディアなど外国人からの注目度は会場随一。ひっきりなしに外国人が訪れては、熱心にゲームをプレイする姿が見られた。

画面下に出るセリフなどが英語に翻訳されている。ゲームの見た目の美しさもあり、海外からの来場者の人気を集めていた

ZENITH BLUE

 ZENITH BLUEは、3D剣戟アクションゲーム「巫剣神威控」の英語版を出展。既に完成したバージョンで、3月11日にはSteamで配信を開始する。

 ゲーム内容については日本語版と同様だが、主人公に新たなコスチュームが追加されたほか、難易度設定にVERY HARDの上となるINFERNOが追加された。INFERNOはどんな攻撃でも1発食らうとゲームオーバーになるという究極の難易度になっている。なお、日本語版でもBitSummit直前に同様のアップデートが実施された。

英語版の完成に合わせて、一撃死の最高難度モードを追加。日本語版もアップデートされている
開発中の新作アクションゲーム「SkyLens」も展示されていた

飛翔システム

 飛翔システムは、3Dバトルアクションゲーム「マジカルバトルフェスタ・魔法少女☆星咲いおん」の英語版を出展。文字情報は全て英語化されているが、人気声優陣を起用した豪華なキャラクターボイスは日本語のまま収録される。

 英語版はダウンロード配信サイト“PLAYISM”にて、今春配信予定。なお現在はパッケージ版のみの販売となっている日本語版についても、英語版と同時にダウンロード販売が開始される予定。

「マジカルバトルフェスタ・魔法少女☆星咲いおん」の英語版を出展。日本語版もバランス調整などのアップデートが行われている

Flying Carpets Games

 ここまでは日本の作品の海外展開について触れてきたが、Flying Carpets Gamesはカナダのモントリオールからの出展。3Dアクションゲーム「The Girl and the Robot(少女とロボット)」は、来場している開発者の中でたびたび話題に出ていた。

 内容は、少女とロボットを交互に動かし、建物のあちこちにある謎を突破して先に進む、パズル要素の強いアクションゲーム。ロボットは剣や弓矢を使って敵と戦える強さをもつが、足が遅く、段差が越えられない。少女は戦えないものの、ジャンプができたり、ロボットが通れない細い道を通れたりする。プレイヤーは任意のタイミングでこの2人の操作を入れ替えることでパズルを解いていく。またロボットが少女を抱え上げて一緒に移動することも可能だ。

 キャラクターを入れ替えながら謎を解いていくという内容や、文字情報が一切ないにも関わらずマニュアルなしで遊べてしまうというゲームのつくり、ひとりぼっちの少女がロボットと心を通わせるという不思議な世界観は、多くのゲームファンの心を掴みそうだ。昨年11月にはKickstarterで資金を求め、目標額を大幅に上回る約38,000カナダドルを集めた。現在は年末の完成を目指して開発中で、Steamでの配信が予定されている。

少女とロボットのセリフのない触れ合いが、逆に叙情的な世界を作り出している
2人を交互に操作して、建物に仕掛けられた謎を解いていく

(石田 賀津男)