特別企画

新「Windows Live Essentials」ベータ版を試す 第3回

複数PCのフォルダ同期と遠隔PCの操作が可能な「Windows Live Sync」

(10/06/30)

 「Windows Live Essentials」ベータ版に同梱されるソフトを紹介する本企画。第3回となる今回は、新たに「Windows Live Essentials」への仲間入りを果たしたニューフェイス「Windows Live Sync」を取り上げる。

「Windows Live Sync」とは?

「Windows Live Sync」2011 (Build 15.3.2804.0607)「Windows Live Sync」2011 (Build 15.3.2804.0607)

 「Windows Live Sync」(以下、「Sync」)は、複数PCの指定フォルダをP2P方式で同期するソフト。これまで「Windows Live Essentials」には含まれず単体で配布されていたが、今回のベータ版から新しく「Windows Live Essentials」の一員となった。

 複数のPCを所持しているユーザーにとって、ファイルの管理は常に頭痛の種だ。ファイルの管理をしっかりやっておかないと、作業中のファイルがそれぞれのPCへ散らばってしまい、どれが最新のファイルかわからなくなってしまう。しかし、「Sync」を利用すればそのような悩みも簡単に解決できる。

 たとえば、「Sync」を利用してドキュメントフォルダを同期する例を考える。まず、同期対象にしたいそれぞれのPCへ「Sync」をインストールし、同一の“Live ID”でログインした上で同期の設定をしておこう。すると「Sync」はタスクトレイに常駐してドキュメントフォルダを監視し、中のフォルダ・ファイルが作成・編集・削除されると、それをほかのPCへも反映させる。

 複数PC間でファイルのバージョンを統一するには、共有フォルダやNASを用意して、そこへ保存しておくといった運用ルールを定めるのが一般的だ。しかし「Sync」ならば、いつも通りローカルPCのフォルダへ保存するだけで、複数PC間でファイルのバージョンを常に最新へ保つことができる。

 なお、前バージョンの「Sync」については、以前窓の杜でも特集記事で紹介した。以下にURLを掲載しておくので、興味のある方は参照してほしい。

どこが変わった?

 複数PCの指定フォルダをP2P同期してしまう「Sync」は非常に便利だが、前バージョンには弱点も2つ残されていた。

 1つは、同期の設定が「Sync」単体で完結されていなかったこと。一部の作業をWebブラウザー上で行う必要があり、設定手順が煩雑であった。

 もう1つは、それぞれのPCが同時にオンライン状態にならないと同期作業が行われないこと。それぞれのPC上でオフライン状態のまま同一ファイルを編集すると、バージョンの競合が起こってしまう。1つのPCを常時起動して常にリアルタイムで同期できるようにしておくことでこの状況は回避可能だが、誰もが気軽に行えることでもない。

 しかし、新しい「Sync」では大きく仕様が改良され、この2つの弱点がほぼ解消されている。ただし、新しい「Sync」は古い「Sync」の設定を引き継がないほか、未同期ファイルの代わりに一時的に配置される“プレースホルダ”ファイルの拡張子が“P2P”から“WLX”へ変更されるなど、古い「Sync」との互換性は失われているようだ。古いバージョンの「Sync」を利用している場合は、新しい「Sync」を利用する前にアンインストールしておくことをお勧めする。

 では、各変更点の詳細を紹介する。

ほとんどの設定がソフト上から可能に、設定手順が大幅に簡略化

ユーザーインターフェイスが刷新され、ほとんどすべての同期設定をソフト上で完結可能にユーザーインターフェイスが刷新され、ほとんどすべての同期設定をソフト上で完結可能に

 まず、ユーザーインターフェイスが刷新され、ほとんどすべての同期設定をソフト上で完結できるようになった。使い方も簡単で、まずメイン画面上の“フォルダーの同期”リンクをクリックし、当該PC上から同期対象のフォルダパスを指定する。続いて、同期対象のPCを選択すれば設定は完了だ。同期先PCに同じフォルダパスがあれば、そのフォルダ同士が同期される。

 もし指定した同期先PC上に指定したパスをもつフォルダがない場合は、なるべく同じパスへフォルダが自動作成され、同期対象になる。また、同期先PCに存在しないドライブレターを含んだパスを同期対象とした場合は、ユーザーフォルダ(通常は“C:\Users\ユーザー名”)直下に同じ名前のフォルダが作成され、そのフォルダが同期される。

 このあたりの挙動を不安に感じるならば、あらかじめ同期先PC上にも同じパスでフォルダを作成しておくのが得策のようだ。

 そのほか、IEのお気に入りや「Microsoft Office」の電子メールの署名、スタイル、テンプレートなどを簡単に同期するためのユーザーインターフェイスが追加されている。

MEMO“devices.live.com”で同期デバイス・設定の管理

デバイスの管理やフォルダの同期設定の削除などは“devices.live.com”で行う必要があるデバイスの管理やフォルダの同期設定の削除などは“devices.live.com”で行う必要があるデバイスの管理やフォルダの同期設定の削除などは“devices.live.com”で行う必要がある

 本バージョンの「Sync」では、ほとんどの設定がソフト上で行えるようになった。しかし、同期に参加するPCなどの各種デバイスの管理は引き続きWeb上で行う仕組みになっている。

 同じ“Live ID”に紐付けられたデバイスを管理するには、“devices.live.com”へアクセスする。“devices.live.com”では、各デバイスの名前やアイコンを変更することも可能なので、自分にとってわかりやすい名前・アイコンを設定しておくと後々便利だ。

 そのほか、フォルダの同期設定を削除するといった作業も、Web上で行う必要がある。

 なお、編集部にて試用したところ、“devices.live.com”にはWindows Mobile搭載のスマートフォンも登録されていた。これは以前、Windows Mobileとデータを同期するWebサービス“My Phone”へ登録したスマートフォンで、今回管理が“devices.live.com”へ移されたようだ。今後は、Windows Mobile端末との連携強化にも期待したいところだ。

“SkyDrive”と2GBまで同期可能に、Webブラウザーさえあればどこからでも参照可能

オンラインストレージサービス“SkyDrive”と同期可能にオンラインストレージサービス“SkyDrive”と同期可能に

“SkyDrive”と同期済みのフォルダ・ファイルはWebブラウザーからも参照可能“SkyDrive”と同期済みのフォルダ・ファイルはWebブラウザーからも参照可能

 また前述した2つ目の弱点は、PCのほかにオンラインストレージサービス“SkyDrive”と同期可能になったことで解消されている。“SkyDrive”は常にオンラインなので、常にリアルタイムな同期が可能になり、常に最新バージョンのファイルが“SkyDrive”へ一元的に保存されるというわけだ。

 加えて、“SkyDrive”を同期先に指定することには、もう1つのメリットがある。同期済みのフォルダ・ファイルをWebブラウザーから参照できるのだ。

 最近話題のオンライン同期サービスでは一般的な機能だが、「Sync」はあくまでも複数PC間を直接同期させることにフォーカスしており、これまでWebブラウザーで同期フォルダ・ファイルを閲覧できる機能は備えていなかった。Web上からファイルを削除するといった編集機能は一切備えていないが、閲覧用途に限れば“Dropbox”や“SugarSync”のように利用することも可能だろう。

 なお、“SkyDrive”は25GBまで利用できるが、「Sync」から利用できる領域は“SkyDrive 同期ストレージ”という特殊なもので、容量は2GBに限られている。

リモートデスクトップ機能

“リモート接続”機能を搭載“リモート接続”機能を搭載

 さらに新しい「Sync」では、新機能として“リモート接続”機能を搭載。これは、Windows標準の「リモート デスクトップ接続」によく似た遠隔PCの操作機能だ。

 利用するには、「Sync」のメイン画面にある“リモート”リンクをクリックする。すると、「Sync」をインストール済みでかつ同一の“Live ID”に紐付けられたPCが一覧表示される。あとは、接続したいPCを選択して“このコンピュータに接続”リンクを押せば、リモートデスクトップ画面が現れ操作可能になる。なお、リモート接続を行うには、あらかじめ接続先のPCの「Sync」上で“このコンピューターへのリモート接続を許可”リンクをクリックし、リモート接続が行える状態へ切り替えておく必要がある。

 「Sync」のリモートデスクトップ機能は、Windows標準の「リモート デスクトップ接続」よりも若干低速で、Aeroユーザーインターフェイスなども利用できないようだ。しかし、インターネット越しでリモート接続する際に必要なセットアップ作業が大幅に簡略化されているのは便利。

“リモート接続”を利用した様子。編集部にてデュアルモニター環境に対応することを確認した“リモート接続”を利用した様子。編集部にてデュアルモニター環境に対応することを確認した

使ってみよう ―― オフィスに飽きたらカフェで仕事

 日頃から“デスクトップ”へ作業中のファイルを保存して仕事をしているユーザーは少なくないだろう。そんなユーザーにお勧めなのが、「Sync」でWindowsの“デスクトップ”フォルダを同期してしまうことだ。

 たとえば、オフィスのデスクトップPCとノートPCの“デスクトップ”フォルダを同期してしまえば、オフィスでの作業に飽きたらノートPCを持ち出してカフェで仕事の続きをするといったワーキングスタイルも可能。最近一部で話題の、いわゆる“ノマド”ワーキングを実践できるわけだ。

 さらに、「Sync」ならばリモートデスクトップ機能も備えているので、もし出先でデスクトップPCでしかできない作業が発生したとしても安心。同期済みのフォルダ以外に必要なファイルが保存されていても取り出せるし、デスクトップPCにしかインストールしていないソフトも利用できる。この点は、“Dropbox”や“SugarSync”といったオンラインファイル同期サービスにも真似ができない点と言えるだろう。

【著作権者】
Microsoft Corporation
【対応OS】
Windows Vista/Server 2008/7/Vista x64/Server 2008 x64/7 x64
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2011 (Build 15.3.2804.0607)(10/06/25)

(柳 英俊)