週末ゲーム

第635回

5分から3時間まで。気軽に遊べるフリゲ掌編・短編RPG特集

マップや世界観にこだわった作品、独自のシステムやアイデアに凝った作品など6本を紹介

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は“フリゲ掌編・短編RPG特集”として、プレイ時間5分から3時間程度のフリー作品をご紹介。マップや世界観にこだわりを感じる作品、独自のシステムやアイデアに凝った作品など6本を集めた。

 どれも短いプレイ時間ならではのテンポのよいプレイ感で、なおかつ満足度の高い作品ばかりなので、ちょっとした空き時間に気軽にプレイしてみてほしい。

30分で3ダンジョン、気軽に遊べてしっかりとした手応えのある「ショコラいろのセレナーデ」

「ショコラいろのセレナーデ」

 魔法使いの“リナリア”と剣士の“デュランタ”、二人の少女がバレンタインに向けて素材を集める小さな冒険を描いた短編RPG。30分ほどのプレイ時間で3つのダンジョンを攻略していく。シンボルエンカウントでレベルアップの概念はなく、全体的に進行のテンポがよい。

 戦闘では装備品によるキャラクターカスタマイズが重要となるのが特徴。具体的にはリナリアが攻撃補助・防御補助・有利状態補助という3タイプの装備品を最初から多数所持しており、これらの組み合わせで戦闘スタイルが決まる。システムはオーソドックスなターン制のコマンド選択型ながら、こうした戦略要素やボス戦中に発生するちょっとしたギミックなどにより、程よい歯応えのあるバトルを楽しめる。

 おっとりとしたリナリアとクールなデュランタの、軽妙ながらお互いを大切に想う気持ちが伝わってくる掛け合いや、村の人々との会話、色々なものを調べた時に交わされる小ネタなど、シナリオ面も短い中に楽しさが詰まっている。気軽にプレイしつつも『RPGを1本クリアした』という充足感を得られるので、最近なかなかRPGをプレイする時間がないな、という人にもお勧めしたい。

さまざまな装備品の組み合わせにより戦闘スタイルが大きく変わる。状況に応じたカスタマイズがポイント
軽妙な掛け合いや回想シーンなどでリナリアとデュランタの関係が描かれ、心温まる物語を演出する
「ショコラいろのセレナーデ」
【著作権者】
レイ 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.05(16/04/21)

パターン把握が重要な独自戦闘と寂寥感あふれるファンタジーを堪能できる「その頃の魔王」

「その頃の魔王」

 独自システムによる戦術性の高い戦闘と、謎に包まれた物語が魅力の短編RPG。ゲームは朽ち果てた墓の前に透明な姿の主人公“ルイン”が立つ場面から始まり、薄もやに包まれたようなフィールドを、ある場所を目指して進んでいく。

 戦闘は1対1のターン制コマンド選択型。ルインはフィールド探索などで入手した“特殊”と“お守り”を1つずつ装備でき、これにより能力値が変わるほか、それぞれにアクティブ・パッシブスキルが付随しており戦闘スタイルが大きく変わる。経過ターンに応じて威力が変わる攻撃スキルや敵のMPを減らすスキル、敵の行動内容を変化させるスキルなど特徴的なスキルが用意されており、その組み合わせもポイントだ。

 戦闘にランダム要素は一切なく、ターンごとの敵の行動は決まっており、敵の次の行動内容を確認することも可能。敵の攻撃は現在のMPなど攻撃力以外の値がダメージの基準となったり、さらには一見関わりのない能力値同士の差分でダメージが決まったりなど独特で、こうした計算式を含めた行動内容の理解が重要となる。装備は戦闘中に変更することも可能で、特にボス戦では敵の行動パターンを把握し、次々と装備を切り替えながら戦うパズル性の高い戦闘が醍醐味となっている。

 ゲームを進めることで徐々に明らかになっていく物語も見所。ルインは何者なのか、行く先々が物寂しく荒廃した地ばかりなのは何故なのか……。“ライフォス”と呼ばれる男の回想シーンも挟まれ、幻想的で切ない物語を少しずつ紡ぎ出していく。プレイ時間は1時間半程度。やり甲斐のある戦闘と先が気になるシナリオに引き込まれ、一気にプレイしたくなる作品だ。

“特殊”は戦闘時の“特殊”コマンドで発動するアクティブスキル、“お守り”にはパッシブスキルが付随する
敵の次の行動内容を、ダメージ等の計算式も含め確認できる。ボス戦では特に重要
透明な姿で何も語らないルインは何者なのか。ライフォスと呼ばれる男の回想も挟まれ、徐々に真実が明かされていく
「その頃の魔王」
【著作権者】
きぎぬ 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.10(14/11/06)

魔法少女が大暴れ!独創的でギミック満載なマップが楽しい「超人類の憂鬱」

「超人類の憂鬱」

 常人離れした身体能力や超常現象を引き起こす力により、“超人類”とも呼ばれる魔法少女達の戦いを描いた短編RPG。プレイ時間は2時間から3時間ほど。

 本作の特徴は何より、独創的なマップの数々。幻想的かつ(いい意味で)珍妙な光景が目を惹く。“触れるとマップの反対側まで吹っ飛ばされるクマの人形”などさまざまなギミックも楽しく、びっくり箱の中を歩いているかのような感覚がユニークだ。BGMの選曲もノリのよいものが多く、SEも破壊音を中心にとにかくド派手で爽快感がある。

 戦闘はターン制のコマンド選択型で、パーティメンバーそれぞれ固有のスキルを駆使して戦っていく。複合的な効果を持つスキルや先制行動できるスキルが多く、効果の把握が重要。1ターンの間ダメージを無効化する障壁を張ったり仲間の攻撃威力を大きく増加させるスキルなどもあり、メンバー間での連携もポイントとなる。エンカウント方式はシンボルエンカウントで、レベルも上がりやすいため経験値稼ぎはほぼ不要な印象だ。

 ゲームは主人公の“ココア”とその仲間達が、魔法協会の一員としてさまざまな任務をこなす形で進行。後先知らずな戦闘狂で周囲に被害を出しまくる“パティ”など、魔法少女は癖のある人物ばかりで、激しいツッコミの応酬も見所となっている。その一方で、中盤以降は情に厚いココアが仲間のために戦うという王道展開が加速。ハイテンションかつ熱い物語を、非現実感あふれるマップを駆け抜けながら堪能するのが楽しい作品だ。

独創的な光景と派手なギミックの数々により、見た目にも、触ってみても楽しいマップとなっている
戦闘時の演出もド派手、コマンド選択後の応酬もハイスピードで爽快感が高い
魔法少女は血の気が多い者ばかり?ハイテンションで熱いストーリーが展開する
「超人類の憂鬱」
【著作権者】
あず 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.10(16/02/28)

高難易度ボス戦特化、ダークで幻想的な復讐劇「歪者行進曲」

「歪者行進曲」

 チュートリアルを兼ねた序盤以外は基本的にボス戦のみで進行する短編RPG。レベルの概念はなく、ダンジョン探索やボス撃破により入手したさまざまな装備品や、同様に入手した“TC”というポイントを使って任意に習得できるスキルの組み合わせで、ボスごとに対策を立てて戦うのが醍醐味の作品となっている。

 ゲームの目的は、“世界最終憎怨記録”の上位命令によって目覚めた“憎獄人形0118”を倒すこと。村を滅ぼされた“レヌンヴェイド”と“ドラヴォロワ”の二人は復讐のため、憎獄人形0118を追って遺跡の奥へと挑む。

 ……と、概要だけでも独特な設定とネーミングセンスが伺える内容だが、独自の美学をも感じさせるダークで幻想的なテイストが、敵や装備品の名前など、ゲーム全体に渡って貫かれているのが特徴だ。マップデザインやBGMの選曲もこだわりを感じるもので、トータルで作品世界を演出している。

独特のネーミングセンスやマップなどにより、ダークで幻想的な世界観を作り上げている

 装備品の説明文などは一見意味がとれず、そうした不条理感も魅力のひとつではあるが、核となるストーリー自体は復讐劇を軸とした骨太で一本筋が通った内容。遺跡内で拾った文書から断片的に明かされていく世界観や、狂気を感じさせる憎獄人形0118との対峙といった殺伐とした展開も見所だ。

 戦闘はターン制のコマンド選択型。主人公側のHPは低く、ボスの強力な攻撃や多種多様な状態異常により、あっさりと戦闘不能になってしまうことも多い。しかし“回復スキルは戦闘不能も回復”、“戦闘不能は2ターン後に自然回復”という仕様により、二人のうちどちらか片方が生き延びれば挽回のチャンスはある。

 行動順の基準となる敏捷性のステータスが敵ごとに明示されていたり、スキル使用に必要なSPを回復しつつ敵の攻撃能力を1ターンの間下げる“呪印”という特殊なコマンドが存在するのもポイント。スキルの習得状況はノーコストでTCに還元でき、ボスに応じた二人の役割分担も戦術の要となる。戦闘不能さえもあらかじめ見込んでその回復タイミングをも戦術に組み込んだ立ち回りが求められるのが、難しくもやり甲斐を感じるところだ。

 ボスの強さは数値で示されており、装備から算出される自分達の強さとの比較で敵う相手かどうか推し量ることが可能。一度到達したボスの元へワープする仕組みもあり、勝てなかったボスへのリベンジなどもしやすい作りとなっている。プレイ時間はプレイヤーによって左右されると思われるが、筆者の場合は3時間程度。熱い戦闘と熱いストーリーを堪能しつつ、テンポよく進行する作品だ。

理解しがたい言動を繰り返す憎獄人形0118など、強烈な個性を持つキャラクター達の台詞回しも魅力
一度到達したボスの前までワープできる機能。強さの基準値も表示され、挑戦するタイミングを計る目安となる
「歪者行進曲」
【著作権者】
ンギョッポラーヌ 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.23(15/12/24)

王道RPG「孤独勇者の冒険譚」、その実はバグ探索メタRPG「デバッガーのな・や・み♪」

 王様に魔王討伐を依頼された勇者“クレス”が旅立つ王道RPG。……かと思いきや、開始早々エラーが発生し、ゲームが進行不能になってしまう。

「孤独勇者の冒険譚」の始まり……と思いきや
『ついてまいれ』と王様が別の部屋に移動しようとした所でエラーが発生。ゲームの進行が止まってしまう
改めて、メタRPG「デバッガーのな・や・み♪」のスタート

 実はクレス達は、ゲームのバグを修正するため、現実世界からゲームの中に召喚されてしまった存在。エンディングまで無事に辿り着けるようバグを修正して現実世界へ戻るため、ゲームのシナリオに沿ってデバッグを進めることになる。ゲームタイトルは「デバッガーのな・や・み♪」に変更、Readmeまで更新されるという凝りようだ。

 ゲームは基本的にはオーソドックスなRPGとしてプレイしつつ、発見したバグをゲーム作者の“アゲハ”に報告しながら進行する。ゲーム制作者や熟練のプレイヤーなら『あー、あるある』と感じるおかしな挙動に遭遇したり、見落としがちなバグを探し当てるのが楽しい。クレスを始めとしたパーティメンバーの、ゲーマーらしい雑談も随所に散りばめられている。

バグを発見し、報告しながらゲームを進めていく

 ユニークな設定が目を惹く作品だが、RPGとしての楽しさもしっかりと詰まっている。戦闘はターン制のコマンド選択型で、スキルを使うのに必要なSPのやり繰りが重要。戦闘開始時のSPは最大SPの半分と決まっており、SPを回復しながら攻撃できるコマンドや、味方のSPを回復できるスキルなどを駆使しながら戦っていく。武器により攻撃コマンドが変化するなど、さまざまな装備品の活用もポイントだ。

 プレイ時間は3時間程度。王道RPGからメタRPGへと転換するコメディ色の強い作品だが、ゲームを進めるとさらに、クレス達にはある転機が訪れる。魔王を演じる存在をはじめキャラクター達の熱い想いを感じられる展開も見所だ。

戦闘ではSPの制御が重要
魔王側を率いるのも召喚された現実世界の人間。彼の思惑により、物語にはさらなる転機が訪れる
「孤独勇者の冒険譚」
【著作権者】
アトハ 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.10(16/04/08)

少年の成長をシステムで語る掌編「君がたたかう物語」

「君がたたかう物語」
『姉を助けて』という少年の頼みを断りつつ、少年に力を貸し与える“旅のお姉さん”の思惑は……

 モンスターに襲われた姉を助けるために頑張る少年の姿を描いたRPG。プレイ時間5分ほどの掌編で、制限時間付きのコマンド選択や、さまざまな技を当てて敵の弱点を“見切る”ことで敵を倒すという独自の戦闘システムが特徴となっている。

 キャッチコピーは『「たたかう」1回で終わるRPG』。とある仕掛けにより、一度は逃げ出した少年の成長をシステムで表現するアイデアが楽しく、クリア後はほっこりとした気持ちになれる作品だ。

「君がたたかう物語」
【著作権者】
森越一 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.00(16/03/28)