週末ゲーム

第632回

“ニコニコ自作ゲームフェス2016”お勧め作品ピックアップ 第3回

システムや演出が作り込まれたRPGやアドベンチャーゲームなど9作品を紹介

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ニコニコ動画にて開催されている自作ゲームの祭典“ニコニコ自作ゲームフェス2016”の参加作品から、窓の杜編集部がピックアップした作品を全3回にわたりご紹介する。

 最終回となる今回は、RPGや育成SLG、ノベル・アドベンチャーゲームと計9作品をご紹介。システムや演出が作り込まれた作品、尖った魅力を持つ作品などが集まった。

RPG

自由度の高いスキルセッティングとリアルタイムバトルが魅力の中編RPG「ひびかけ色のキセキ」

「ひびかけ色のキセキ」

 パーティ共有リソースを振り分ける自由度の高いスキルセッティングや、ATBをベースにガードの概念を加えたリアルタイム性の高い戦闘システムが特徴のノンフィールドRPG。個性的なキャラクター達の掛け合いで進むイベントシーンも豊富に盛り込まれた中編作品となっている。

 物語の主人公は、魔法学校の生徒や卒業生など、6人の魔法使いたち。突然“魔者”と呼ばれる異形の存在が現れるという事態に、それぞれの立場や事情で立ち向かっていく。ゲームはこの6人から最大3人を選んでパーティを編成し、次々と敵を倒しながら進行。物語の節目ごとにステージが分かれており、各ステージの最後にはボスが待ち受ける。

 戦闘では敵・味方共に時間経過で溜まる“APゲージ”が満タンになった順に行動。さまざまな魔法(スキル)を駆使して戦っていく。加えて、特定キーを押している間は敵の攻撃をガードし、ダメージを軽減することが可能。ただしガード中はAPゲージが溜まらないので、敵のAPゲージを見てタイミングを計りながらガードしていくことになる。

 スキルはあらかじめセットした数個を戦闘中に使える仕組み。6人の魔法使いはそれぞれ冷気・炎・黒といった先天属性を持ち、レベルアップでその属性の魔法を覚えていく。ポイントは、スキルをセットするスロットは例えば冷気使いの“リジェ”なら“冷気属性3つと白・黒属性を各1つ”など、自分の属性を中心としつつ別のキャラクターが覚えた魔法もセットできる構成になっていること。

 さらに、一部の敵を倒したり“最大ダメージ50突破”といった各種実績を解放することで入手できる“エナジー”をスキルに振り分けて、スキルを強化することが可能。この強化はノーコストでエナジーに還元し、何度でも振り分けをやり直せる。敵の弱点属性といった状況に応じて、パーティメンバーの編成にスキル構成、エナジーを誰のどのスキルに注ぎ込むか……といった試行錯誤を存分に楽しめる仕組みだ。

強力な攻撃を繰り出してくるボスとの戦いではガードが特に重要
エナジーを振り分けてスキルを強化。スキルによって威力や攻撃回数、効果範囲などさまざまな面が強化される

 その一方で、買い物や消費アイテムの概念はなく、装備はアクセサリが1枠だけと、ノンフィールドであることと合わせて力を入れる所と省略する所のメリハリが効いており、プレイの感触は濃厚。コンシューマー携帯機を意識したような見やすく明解なワイド表示のUIや、画面に表示される操作ガイドのボタン名まで変更可能な操作コンフィグなど、ユーザビリティへの配慮も目を惹く。

 こうした作りにより、バトルとキャラクターカスタマイズに集中して取り組めるのが本作の醍醐味。特にボス戦やステージ中盤に発生する連続バトルでは、特殊な攻撃やトリッキーな行動を仕掛けてくる敵も多い。しっかりと戦術を考え、その上で戦線が崩されないよう的確なガードも欠かせないという、まさに手に汗握る戦いを堪能できる。なお、敵に勝てない場合は過去のステージを再プレイして経験値やエナジーを稼ぐことも可能だ。

ゲーム中にガイド表示されるボタン名まで変更できるキーボード・ゲームパッド操作のコンフィグ。ほかにもウィンドウサイズの拡大などコンフィグが充実している
術者に一定ダメージを与えるまで動けなくなる“拘束”など、さまざまな特殊行動を仕掛けてくる強敵も出現

 ストーリーはステージの合間や、ステージ進行中に会話シーンが挟まることで展開。緊迫した状況の中でも、賑やかな掛け合いが場を和ませてくれる。一方で、異なる進路へ進み、互いに複雑な想いを抱えながらの再会となった卒業生達の関係や、魔者という存在に隠された真実など、ビターな展開も待ち受ける。それぞれの決意や仲間への想いが描かれるシナリオも、本作の大きな見どころとなっている。

 また、こうしてシナリオ上で描かれるキャラクター性が、スキルスロットの構成やキャラクターごとに豊富に用意されたパッシブスキルなどでも表現され、欠点も含めキャラクターに愛着が沸いてくる。パーティの別メンバーのMPを補給する“リンケージ”コマンドや、リンケージした相手に特殊効果を付与するパッシブスキルなどもあり、仲間同士の連携を戦闘でも実感できるのが面白い。システムとシナリオが絡み合ってキャラクター達の戦いの日々を鮮やかに描き出す、和製RPGらしい魅力が詰まった良作だ。

ときにかしましく、ときにシリアスに。戦いの日々を精一杯生き抜く魔法使い達が描かれる
「ひびかけ色のキセキ」
【著作権者】
ecoddr
【対応OS】
Windows 7/8/8.1/10
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.22d(16/03/23)

高難易度、セーブなし。達成感抜群のパズル戦闘RPG「ヴァルキリー・ハラング」

「ヴァルキリー・ハラング」

 スキルやステータスが特徴的なキャラクターを5人選んでパーティを編成し、“ヴァルハラ”を目指し戦っていくRPG。ステージクリア型となっており、各ステージはすごろくのようなマス目で構成。1マスごとに敵との戦闘や買い物などのイベントをこなしながら進み、奥で待ち受けるボスを倒すとステージクリアとなる。

 戦闘に参加するメンバーは、5人の中から3人が戦闘ごとにランダムで選ばれる。戦闘システム自体はオーソドックスなターン制のコマンド選択型。特徴は、行動順が“速度”のステータスで決まり、敵の速度もすべて表示されること。加えて敵のHPもオープンになっている。命中率・回避率・防御力の概念もなく、各キャラクターごとのスキルの威力もほぼ固定のため、さまざまな特殊攻撃を仕掛けてくる敵に対し、どういう順番で倒していくか?といった戦術をパズル的に組み立てるのがバトルの醍醐味だ。

 敵の行動もパターン化されており戦闘自体にランダム要素はほぼないが、“誰が戦闘に参加するか”はランダムという、ランダム要素と固定要素のバランスが絶妙で、同じ敵でも戦闘参加メンバーによって異なる戦術を考える必要があるのが面白い。また、パーティメンバーのうち1人をリーダーに指定でき、リーダーは必ず戦闘に参加する。出現する敵に応じてリーダーを切り替えていくのも重要な戦略となる。

敵の行動パターンを見極め、さまざまなスキルを駆使して戦っていく

 使用できるキャラクターは、強力な攻撃魔法を持つがMP消費が激しい“グリル”、どんな敵にも通用する即死攻撃を持つが使用にはHPを消費し、行動が遅く使用時にHPが足りなければ不発となる“とらわれ”など、一長一短で癖のあるキャラクターばかり。レベルアップの要素もあるが、レベルアップボーナスは新スキルの取得または特定ステータスの向上が複数提示される中から1つだけを選ぶ仕組みで、レベルアップ回数にも限りがあるため取捨選択に悩む作りとなっている。

 そのほか特徴的な要素が、“悪評”によるペナルティ。ステージ道中のザコ戦は負けてもゲームオーバーにならないが、負けると“悪評”が上昇。通常、戦闘はHP/MPが最大の状態で始まるが、悪評に応じて戦闘開始時のHP/MPが減ってしまう。また、戦闘中は2ターンごとに“審判”が行われ、この時に戦闘不能のメンバーが居る場合も悪評が上昇。悪評5の時に戦闘に負けるとゲームオーバーだ。ただし悪評5の時に戦闘に勝てば悪評は0に戻る。

レベルアップボーナスはどれも魅力的だが、選べるのは1つ。取捨選択が悩ましい
2ターンおきに行われる審判。この際に戦闘不能者が居ると悪評が上がってしまう

 さらに、ボス戦では悪評の数に関わらず、負けると一発でゲームオーバー。中盤以降のボスは特に手強く、初見で倒すのは難しい。勝つためにはパーティ編成やリーダー、成長方針まで見直す必要があるが、本作はなんとセーブが存在しない。リトライのたびに最初からやり直しのため、先へ進めば進むほど、ゲームオーバー時のショックも大きいというわけだ。

 だがそれだけに、難所を切り抜けた時の達成感も格別。プレイを重ねることで最初は苦労していた所もパターン化でき、プレイが上手くなっていくのを実感できる。悪評5のジリ貧状態から何とか勝利して悪評をリセットできた時の一発逆転感も、やり直しが効かないからこそ得られるものと言えるだろう。尖った作りゆえ万人にお勧めの作品ではないが、戦略・戦術を考えるのが好きなバトルマニア系のRPGファンにはぜひ挑戦してみてほしい一本だ。

戦闘にランダム要素がほぼないだけに、ボス戦で『詰んだな』というのも途中でわかってしまう。それでも足掻きたくなるのが人情というもの……
店では消費アイテムのほか、持っているだけでさまざまな効果があるアクセサリも売られている。これらの活用もポイント
「ヴァルキリー・ハラング」
【著作権者】
yako 氏
【対応OS】
Windows XP/Vista/7/8.1/10
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.13(16/03/13)

アイテムの使用が鍵を握るローグライク・ランゲーム「Rogue Runner」

「Rogue Runner」

 強制スクロールするサイドビューのフィールドで敵を倒しながら進んでいく、ローグライクRPGとランゲームが融合した作品。3,000kmの走破を目指す。

 ゲームはリアルタイムに進行。アイテムが落ちていれば自動で拾い、敵とぶつかれば自動で戦う。プレイヤーが行う操作は、一覧からアイテムを選び左クリックで使用、右クリックで捨てるという2つだけ。アイテムのうち剣や盾は使用すると装備し、ポーションや巻物といったその他のアイテムはその場で効果が発動する。

 剣と盾は装備すると攻撃力や防御力が上がるが、使用回数の制限があり、戦闘で消耗して回数が尽きると壊れる。また、持てるアイテムの数は12個までで、アイテム一覧が満杯になると新たにアイテムを拾えなくなってしまう。強力だが使用回数の少ない“ガラスの剣”などを使い切るか温存するかといった判断や、ときには不要なアイテムを捨てるという選択も重要になってくる。

 リアルタイムにゲームが進行する中、残りHPを気にしつつ、必要なアイテムをどんどん選んでいくのは忙しくも面白い。特に巻物にはHPを半分にして全所持品を変化させるもの、ランダムにアイテムを捨ててレベルを上げるものなどユニークなものも存在し、さまざまなアイテムを使ってみる楽しみがある。魔法攻撃を行う巻物は効果範囲が決まっているため、画面がスクロールする中で狙いを定める必要がある点はアクションゲーム的でもある。

 プレイ時間は10分程度。ローグライクRPGとしての難易度はやや緩めで、ハイテンポに駆け抜けながらリアルタイムの判断をしていくのが醍醐味の、気軽に遊べる作品だ。なお、実の所ポーズ機能もあるのだが、緊張感を削ぐので筆者としては利用しないことをお勧めしたい。

「Rogue Runner」
【著作権者】
kido 氏
【対応OS】
Windows(Windows 8.1で動作確認)またはWebブラウザー(Firefox推奨)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0

育成シミュレーションゲーム

かわいらしい精霊を育てるSLG+お手軽爽快STG「ウィズ メルクリウス -perficio-」

「ウィズ メルクリウス -perficio-」

 かわいらしい精霊を育てる育成シミュレーションゲームと、マウス操作でお手軽ながら大量の幾何学的オブジェクトを破壊していく爽快感にあふれたシューティングゲームが融合した作品。Webブラウザー上でプレイできる。

 舞台となるのはとある錬金国家の王立錬金術学院。プレイヤーは師匠より、人工精霊(メルクリウス)の子を預けられる。メルクリウスを育てつつ、その力を借りて古代の遺産“イニティウムの書”を解読していくのがプレイの目的。この解読を行う錬金パートがシューティングゲームの形で表現されるのが本作のユニークな点だ。

 メルクリウスの育成は、体力と魔力を司るイグニス、知力と精神を司るアクアといった“エレメント”を与えることで、対応するパラメーターが上がっていくというもの。このパラメーターは錬金パートにおけるショットの威力やライフ、移動速度などに影響するほか、パラメーターによってメルクリウスはさまざまな容姿や性格へと成長していく。

 錬金パートは、マウスカーソルで自機移動、ショットは自動発射で左クリックによりボムにあたるスペシャルアタックの発動とお手軽なもの。ステージをクリアするとエレメントのほかサブウェポンにあたる“マテリア”が生成され、自機の左右に1つずつ装備できる。マテリアをどんどん入れ替えて試すのもプレイの楽しみのひとつとなっている。

メルクリウスは育て方次第で容姿や性格が変化
成長に応じてスペシャルアタックも変化する。画像は自機の周囲に発生した巨大な光球がダメージを与えながらゆっくりと進む“プラズマブレード”

 また、錬金にはイニティウムの書を解読しメインシナリオを進める“遺失錬金”のほか、エレメントとマテリアの生成のみを行う“自由錬金”があり、それぞれ時間経過で回復するスタミナを消費する。また、任意の量のスタミナを消費し、シューティングパートなしでエレメントのみを生成する“元素錬金”もある。

 全体的なプレイ感としてはサービス運営型のスマホゲームに近いが、スタミナの回復速度は速く、画面上をちょくちょく横切る猫(?)をクリックすると大量に回復するという要素もあるため、集中してプレイしたい際に困ることはあまりない。コツコツと溜めたスタミナを元素錬金に注ぎ込んでパラメーターを上げるもよし、より良いマテリアを求めて自由錬金しまくるのもよし、シューティングの腕を頼りにひたすら遺失錬金を進めるもよしと、遊び方の幅が広いのも魅力となっている。

 というわけでプレイ時間も人によりけりだが、公称ではエンディング到達まで平均5〜8時間。錬金パートのスコアランキングや難易度変更、さまざまな実績要素などもあり、クリア後もやり込みを楽しめる。その一方で、ランダムに切り替わる穏やかなBGMをバックにメルクリウスが漂う様子を眺め、ときに会話して癒やされるというのんびりとした楽しみ方も用意されている。

さまざまなサブウェポンを駆使し上位難易度のステージに挑むのもよし
メルクリウスとの会話に癒やされるのもよし
「ウィズ メルクリウス -perficio-」
【著作権者】
矢口 マサムネ 氏
【対応OS】
Webブラウザー
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.25

ノベル・アドベンチャーゲーム

世界観の異なる3つの物語が交錯するビジュアルノベルの序章「W-Standard,Wonderland Lv.1」

「W-Standard,Wonderland(ダブルスタンダード・ワンダーランド) Lv.1」

 世界観の異なる3編の物語が交錯していくビジュアルノベル。三部作予定の第1作となるが、本作だけでもプレイ時間12時間ほどとボリュームのある作品。有償の同人ゲームとして頒布されており、体験版も公開されている。なお、オリジナルは18禁作品だが、グロテスクな表現と性的表現に自主規制を施した全年齢版もリリースされている。

ワンダーランド編

 本作で描かれる1つ目の物語は、ファンタジー風の世界にある王国“トキアラント”から始まる“ワンダーランド編”。心優しく素朴な少年“トト”の視点から、自由奔放な義妹“ポッケ”や強気で正義感あふれる幼馴染みの少女“エバンナ”との冒険、そして彼らを見守る大人達との交流が描かれる。トキアラントの人々が生まれながらに持つ“ギフト”と呼ばれる特殊能力や、人々の生活において時刻の概念がない点も世界観の特色となっている。

異世界編

 もう1つの物語は、現代日本らしき鄙びた町“葦野里(よしのさと)”が舞台の“異世界編”。お調子者の大学生“俺”と考古学専攻の大学助手“竹井瑠衣”が、“葦野里古墳”を調査するためこの地を訪れたことから物語が始まる。視点人物は“俺”で、メルヘン調のワンダーランド編とは打って変わって現代ものラノベ調と語り口が変わるのも面白い。

神視編

 そして、これらの物語へ割り込むかのように予測不能なタイミングで挿入されるのが“神視編”。解像度の粗い実写動画に重ねて全画面へ表示されるテキストという、他の2編とは全く違うテイストで、いつ、どこともつかない場面が展開していく。その意味はプレイを進めることで徐々に明らかになっていく。

 これら3つの物語が、直接的に、あるいは思わぬところで繋がりを持ち、1つの真実を照らし出していく。それを読み解いていくのが醍醐味の作品だが、これを補強するのが用語集などのシステムと、画面を彩るバラエティに富んだ演出だ。

 用語集自体はノベルゲームでは定番の要素だが、独自用語や固有名詞の解説に加えて、基本的に一人称視点の本作において状況を俯瞰して語る役割や、ある場面においては(ネタバレを避けるためぼかした言い方になるが)“世界への違和感を喚起させる装置”としても機能する。また、プレイ中に“GEAR”と呼ばれるサブエピソードを取得することがあり、異なる場所や時間の出来事や資料的なテキストが、登場人物達の過去を垣間見せたり、物語の繋がりを補完していく。

用語集の内容は独自用語の解説のほか、状況解説などバラエティに富んでいる。なかには余談やネタ的なものも……?
GEARの中にはテキスト資料的なものも存在

 演出面も大きな見どころだ。漫画風の描き文字やメッセージウィンドウを飛び出すテキスト、RPG風の戦闘画面など、見た目に楽しいだけでなく、文字通り独自の世界観を演出するものとして、本作の大きな魅力のひとつとなっている。派手な演出だけでなく、画面に注目することで、テキストを追っているだけでは気付かない違和感が徐々に大きくなっていくといった“静かな演出”もあり、システム面と合わせ、ゲームだからこそ描ける物語を存分に堪能できる。

描き文字にRPG風戦闘画面、実写を取り込んだ動的演出など、画面がとにかく賑やかで飽きさせない
徐々に違和感が膨れ上がっていく世界。トトと“俺”は何を見、何を感じるのか……

 本作は三部作の第一部だが、本作の中でのクライマックスも十分にあり、一つの区切りまでがしっかりと描かれている。終盤に向けて、世界への違和感がどんどん膨れ上がっていくような展開も目が離せない。一方で次作以降への持ち越しとなる謎も多く残されており、物語を読むこと、そしてそれについて考えを巡らすことが好きな方へ、ぜひお勧めしたいゲームだ。

 なお、汎用エンジン(NScripter)をベースに独自の機能や演出を多数盛り込んでいるためか、システム面ではロード時に画面の一部が読み込まれないなど、やや不都合も見受けられた。プレイに大きな支障があるものではないが、続編での改良に期待したい。

「W-Standard,Wonderland Lv.1」
【著作権者】
Circletempo
【対応OS】
Windows XP/7/8
【ソフト種別】
ダウンロード販売 1,404円(税込み)ほか(体験版あり)
【バージョン】
1.02(15/09/03)

あるゲーム作家の“最後の戦い”を描くアドベンチャーゲーム「ANGEL WHISPER」

「ANGEL WHISPER」

 亡くなったゲーム作家が遺した、自分を主人公として制作されたゲームをプレイするという形で進むアドベンチャーゲーム。オリジナルは1999年にリリースされた作品で、現在はリメイク版をスマートフォンやWebブラウザーでプレイできる。プレイ時間は5時間程度。

 ゲームの主な舞台となるのは、都内の中堅ゲーム会社“レムソフト”。1998年の春、開発が遅れている“アンゴルモア”というゲームの追加スタッフとして、主人公の“由島博昭”をはじめとしたメンバーが集められる。序盤は寄せ集めのチームが徐々に連帯感を強めていく様子が描かれ、ゲームクリエイターものとしても楽しい内容。しかし夏に差し掛かるころ社内で不可解な殺人事件が発生し、ここから物語は大きく動き始める。

 プレイヤーは由島となって、事件の背景に潜む謎へ迫っていく。サスペンス寄りの展開も多く、ときには由島自身が危険に晒され、選択次第ではバッドエンドになることも。由島が見る不思議な夢や、すべてを見透かしたような存在から送られてくるメールなど、オカルティックな一面も見せながら物語は進んでいく。

たびたび見ることになるどこか懐かしい風景の夢や、謎の存在からのメールなど、不可思議な現象も由島を悩ませる

 システム面では、実在するWebサイト上からヒントを探す“リアルミッション型”を謳う作品で、初リリースから15年以上が経った今でもサイトは残されており、ゲーム内外を行き来する楽しさは確かに感じられる。ただそれ以外は昔ながらの場所移動や会話によるフラグ立てで進む作りとなっており、やや古さを感じてしまうのは否めない。

 しかしながら、描かれるストーリーは今あらたにプレイしても新鮮で、特に終盤で明かされるとある設定は、SNSとクラウドの時代である今だからこそ、“そういうこともあり得るのかもしれない”と納得感を増す内容だ。一方で、作中で作るゲームはそのタイトル通り、1999年頃にブームとなった恐怖の大王アンゴルモアをモチーフとしており、人によっては懐かしく感じられるかもしれない。

 ある大きな陰謀の存在を察知し、ゲーム作家として、そして一人の人間として、作品と仲間のために立ち向かっていく由島の姿も胸が熱くなるもので、人間ドラマとしても読み応えのある作品となっている。

“知ってしまった”由島は、信頼できる仲間達の協力も得つつ、とある陰謀へ立ち向かっていく

 なお、本作の制作元であるChild-Dreamは、ほかにもアドベンチャー作品を今回のゲームフェスに投稿。完結作品としては「ANGEL WHISPER」と同様に旧作がリメイクされた「人形の傷跡」と、2015年リリースの近作「緋染めの雪」が投稿されている。いずれも謎とサスペンスでプレイヤーを引き込みつつ、人間の強さ、優しさをも感じられるような内容が落ち着いた筆致で描かれる良質のアドベンチャー作品となっている。

失踪した姉の足取りを追いつつ、とある研究室の真実に迫っていくサイコサスペンス調のアドベンチャーゲーム「人形の傷跡」。プレイ時間は4時間程度。なお、RPGツクールMVによる再リメイクも進行中
過去の事件を追って“緋ノ山”を訪れたフリー記者の“真由”と、目覚めると雪洞に閉じ込められていた“瞬”という2人の視点を切り替えながら進む推理アドベンチャーゲーム「緋染めの雪」。プレイ時間は3時間程度
「ANGEL WHISPER」
【著作権者】
Child-Dream
【対応OS】
Webブラウザー、Android 2.2以降、iOS 6.0以降
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
(プラットフォームにより異なる)

快楽殺人者と復讐者の対峙を描くマルチサイト型サスペンス・ノベル「ホワイトノイズ」

「ホワイトノイズ」

 快楽殺人者と、彼女に家族や“自分を”殺され復讐者となった女子高生、二人の女性を主人公にその対峙を描くマルチサイト型のサスペンス・ノベルゲーム。元は2010年にWindows向けとしてリリースされた作品で、現在はノベルゲーム配信サイト“ノベルスフィア”にて、PCやスマートフォンでプレイ可能なWebブラウザー版が公開されている。

 主人公の一人“上村多加子”は、普段はOLとして働きながら理由のない殺人を繰り返す快楽殺人者。ある日、もう一人の主人公“榊原瑞希”を家族ごと惨殺するが、何故か瑞希は生き返り、犯人への復讐を誓う。この出会いをきっかけに、二人の“日常”は徐々に歪んでいく。

 ゲームは主に多加子と瑞希、それぞれの視点で進行し、選択肢によりシナリオが分岐。面白いのは二人が直接対決するシーンにおいて、それぞれの行動の組み合わせで勝敗が決すること。マルチサイトを活かし、プレイヤーが神の視点で状況を動かすという仕掛けだ。

死んでも何故か生き返る瑞希。そのたびに昔からあった“肩の痣”が1本ずつ消えていく
二人の主人公、それぞれの視点で選択肢を選び状況を動かしていく

 殺したはずの対象が生きていることに戸惑う多加子と、復讐に取り付かれ徐々に正気を失っていく瑞希。多加子の同僚であり瑞希の親友の兄でもある“高橋稔”や、一連の事件に強い執着を持つ刑事“田沼慎一郎”などの人物も、二人の行く末に影響を与えていく。テキスト・ビジュアル共に猟奇的表現もあり、扱うテーマ的にも万人向けではないが、同人ノベルゲームらしい突き抜けた魅力を感じられる作品だ。

家族を失った自分を支えてくれた友人に対し、いつの間にか“最悪、盾として使えばいい”などと考えるようになっている瑞希
二人の主人公以外の視点も。多加子が起こす事件に執着する田沼刑事は、一家殺人で唯一生き残った瑞希に目を付ける

 なお、ノベルスフィアでリリースされるにあたり、新たな仕掛けとして“犯罪タイプ診断”というWebコンテンツと、その結果に応じてシナリオを分岐させる機能が導入されている。これを利用した場合は初回プレイ時の展開は自動で決定され、2周目からは選択肢を自由に選べるようになる仕組み。

“犯罪タイプ診断”の結果にもとづきシナリオを分岐させることが可能
「ホワイトノイズ」
【著作権者】
イヌビト
【対応OS】
Webブラウザー(Google Chrome推奨)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-

童話や民謡の異変を解決していくコメディチック・アドベンチャー「FunkyStoryMode」

「FunkyStoryMode」

 童話や民謡といった物語の内容がおかしくなってしまうという異変の原因を探っていく探索型アドベンチャーゲーム。物語ごとに丁寧に作り込まれたマップや表情豊かに描かれる自作のキャラクターイラスト、細部まで描き込まれた自作のキャラドットなど、グラフィック面も大きな見どころの作品だ。

 主人公は“ヘンゼルとグレーテル”のヘンゼル。記憶を失った状態で目が醒めたヘンゼルは、“お婆ちゃんが強くなって狼を退治してしまう赤ずきん”など、さまざまな物語の世界で異変が起きていることを知り、異変と自分の記憶喪失の原因を掴むため探索を開始。他の物語の登場人物とも協力しながら、物語の世界を渡り歩いていく。

さまざまな物語に異変が起き、本来の筋書き通りに進まなくなってしまう

 物語世界の住人達は、遙か遠くの世界で物語を楽しむ人達のために、物語を繰り返し“演じている”という世界観もポイントで、ある物語の人物が別の物語へと遊びに来たりといった掛け合いも楽しい内容。登場する物語は10以上にも及び、多数のキャラクターが入れ替わり立ち替わりヘンゼル達を取り巻く、非常に賑やかな作品となっている。

 ゲームは物語世界の住人達の憩いの場となっているカフェを起点として、各物語の世界へワープしていくという形で進行。物語世界は異変が起きている場面を舞台とした小さめの1マップで完結しており、多数の物語を行き来しても歩き疲れるようなことはない。次に行くべき場所のヒントもあるため、ゲームはテンポよく進行する。

 プレイ時間は4〜6時間程度。中盤以降はちょっとしたミニゲームもあり、コメディチックな物語を気軽に楽しめる作品だ。

個性豊かなキャラクター達が多数登場。豊富なイラスト差分で描かれる表情や仕草も見どころだ
「FunkyStoryMode」
【著作権者】
KNIT豆 氏
【対応OS】
64bit版を含むWindows 7/10
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.08(16/02/29)

生々しい人物達のコミュニケーションとその齟齬が描かれる中編ADV「四人の王国」

「四人の王国」

 試練に挑む主人公と3人の仲間達の旅路を描いた探索型アドベンチャーゲーム。

 主人公はとある国の王家の血を引いて生まれ、次期王子候補の一人となった青年。しかしトレジャーハンターになって自由に生きるのが本来の夢である主人公は、自分の人生を自分で決められない心労から、声を失ってしまう。そんな中で、王子候補の中から王子を決める“王の試練”が開催。主人公はその本心を知る王から『1位になれば自由に生きてよい』という条件を出され、夢見がちな少女“クー”をはじめとした仲間と共に試練へ挑む。

 本作のポイントは、豊富に用意された選択肢の積み重ねにより主人公がどんな人間かが形作られていき、しかもそれを仲間達が“覚えている”こと。ちょっとした会話の中で語ったことについて、その場では軽く流されたので特に興味はないのかな、と思っていたらかなり後になって『あれ好きでしたよね』などと言われて驚いたり嬉しかったり、なんて経験は現実でもままあるもの。本作ではこれがゲームの中でも上手く利用され、キャラクターを連続性をもったリアルな存在として感じられる仕掛けとなっている。

 一方で、喋れないためジェスチャーや筆談が中心となる主人公と周囲の“会話”は、ときに相手の都合よく解釈されたりと、コミュニケーションのもどかしさ、人の身勝手さも感じられる内容。主人公が王子になりたいものと信じて疑わないクーと、本当のことを言い出せない、あるいは言おうとしても伝わらない主人公の見えないズレが積み重なっていき、先々への不安を感じさせる展開もなかなかに“痛い”。

主人公をはじめ、キャラクター達の情報がどんどん蓄積されていく
トレジャーハンターになりたい、という主人公の夢はクーに都合良く解釈されてしまう

 クー以外の仲間達や他の王子候補達も、それぞれの行動原理や人間関係の軋轢、好き嫌いなどが生々しく描かれ、本作ならではの味となっている。その中でも主人公に自分の理想を投影し、甲斐甲斐しく尽くしてくるクーのキャラクター造形は絶妙で、可愛いと感じるか、鬱陶しく感じるかはプレイヤーによって大きく割れるだろう。

 主人公の夢自体、冒険RPGの世界なら旅立ちの立派な理由になるが、社会がリアル寄りに描かれている本作では、単なるモラトリアムと言えなくもない。後半にはそれが突き付けられるようなシビアな展開も待ち受けている。登場人物達をどう受け止めるかはプレイヤー次第だが、いずれにしてもその生き様が強く印象に残るのは間違いない作品だ。

部下や他の王子候補達、多数のキャラクターひとりひとりが生の人物として描かれる
「四人の王国」
【著作権者】
yako 氏
【対応OS】
Windows(Windows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.121(16/02/21)

窓の杜で紹介済みの“ゲームフェス2016”参加作品リンク集

 “ニコニコ自作ゲームフェス2016”には、本特集以外の窓の杜の記事で紹介した作品も参加している。以下に記事へのリンクを掲載するので参考にしてほしい。

  • 「木精リトの魔王討伐記+」
    2012年に公開されたシミュレーションRPGのリメイク版。誰もが勇者への期待を失っている世界で勇者にされてしまった主人公が持ち前の機転で信頼を得ていき、やがて世界を脅かす大きな流れに立ち向かっていく姿を描く。癖のある多くの仲間達によるコミカルな掛け合いが楽しい一方で、そうして培われた絆が発揮されるシリアスで熱い展開も見どころだ。
  • 「結晶石と錬金銃」
    マウス操作で敵を撃ち倒す2D一人称視点のガンシューティングに、豊富なエピソードから物語や世界観を読み解いていくノベル要素、フィールド探索や武装強化といったRPG要素が融合した作品。初出は2015年夏の“WOLF RPGエディターコンテスト”で、その後マップや敵シンボル挙動のリファインによる遊びやすさの向上をはじめとした大幅なアップデートが施されている。
  • 「武器に願いを2」
    武器を製造・販売する経営と、そこで売られた武器が使われる戦略、2つのパートからなるシミュレーションゲーム。敵国との戦争が進む中で、寡黙な鍛冶屋の青年が辿る運命を描くストーリーも見どころとなっている。
  • 「雪晶石 -Malice Eater-」
    敵弾にかすることでゲージを溜めて“結界”を発動しながら戦っていく弾幕シューティングゲーム。低速移動時と高速移動時で溜まるゲージが異なり、2つのゲージによるリソース管理がポイントとなるテクニカルな作品。和風ファンタジーのテイストで纏められたグラフィックや音楽面も魅力となっている。
  • 「モロコシくんの冒険 〜おおきなイモといたずらドラゴン〜」
    コミカルな雰囲気の横スクロールアクションゲーム。オーソドックスな作りにワンアイデアを加え、脱力感のあるキャラクターと新鮮なプレイ感を両立。ステージデザインも練られており、程よい歯応えを味わえる。