週末ゲーム

第613回

リソース管理系弾幕シューティング「雪晶石 -Malice Eater-」

かすり避けと必殺技のメリハリが楽しい和風ファンタジー作品

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、弾幕シューティングゲーム「雪晶石 -Malice Eater-」をご紹介する。

 本作はパッケージ版がイベントや委託ショップで販売されている同人ゲームで、販売価格は1,542円(税込み)など。作者サイトでは体験版も公開されている。

2つの結界で弾幕を潜り抜けるシューティング

画面は一般的な弾幕シューティングに見えるが、独自の仕掛けがある

 「雪晶石 -Malice Eater-」は、精霊術師の姉・神﨑雪希と、法術師の妹・神﨑時雨という姉妹のキャラクターが主人公の縦スクロールシューティングゲーム。雪深い北国を思わせる“最果ての大地”で、人々を寒さと妖から守っている“北封結界”が弱り始める。姉妹はその原因を突き止めるべく、戦いに臨む。

 ゲームとしては、自機として姉妹のいずれかを選び、多数の敵弾をかいくぐりながら先へ進む弾幕シューティングになっている。姉の雪希は移動が速く攻撃範囲が広いタイプで、妹の時雨は移動が遅く攻撃範囲が狭いがショットの威力が高い。また双方とも高速・低速の移動速度切り替えがあり、高速時は広範囲、低速時は前方集中型と2種類のショットが使える。

 敵を倒して進み、最後にいるボスを倒せばステージクリア。自機は残機(残魂)制でコンティニュー回数制限あり。ショットのほかに、回数制限のある弾消しボム(消幕)も使用できる。

 ここまではオーソドックスな内容だが、本作にはオリジナル要素として“結界”がある。画面下には赤と青の結界ゲージがあり、敵弾にかする(敵弾を近距離で避ける)ことで、高速移動時には右下の青い結界ゲージ、低速移動時には左下の赤い結界ゲージが溜まる。また敵を倒したり、消幕で敵弾を消したりした時には両方のゲージが増える。

 いずれかのゲージが満タンまで溜まったら、結界を発動可能。高速移動中に結界発動ボタンを押すと青の結界、低速移動中なら赤の結界が発動する。結界を発動すると、発動した色のゲージが徐々に減少していく。この間に敵弾を受けてもミスにはならず、自機から一定範囲にある敵弾を消しつつ結界が終了する。つまり被弾を1回だけ無効にできるわけだ。

 結界を発動してから被弾せずにゲージが0まで減少しきった時は、周囲の敵弾を消して通常状態に戻る。結界は2種類あるので、片方を発動させて切れたら、すぐにもう一方の結界を使うことで、ある程度の時間、最大2発まで敵弾に耐えられることになる。激しい弾幕が来ても、結界を使いながら回避していれば、割と安心して切り抜けられるわけだ。

雪希と時雨という姉妹が戦う
敵弾を近距離で避けたり、敵を倒して結晶を得ることで結界ゲージが溜まる
結界を発動すると背景の色が変化。発動中は1回被弾してもミスにならない

かすり避けと必殺技のメリハリを生むリソース管理

結界発動中に再度結界発動ボタンを押すと必殺技が使える

 結界には他にも使い道がある。結界発動中に再度結界発動ボタンを押すと、広範囲を攻撃する必殺技が発動。必殺技の発動中は無敵になりつつ敵に大ダメージを与えられる。必殺技の範囲は結界ゲージの残量が半分以下の時に発動すると狭くなるが、無敵の発生時間には違いが感じられないので、できるだけ避けてから結界終了直前に発動するのが効率的だ。ただし被弾して結界が終了すると必殺技は出せないので、危ないと思ったら積極的に発動したい。

 さらに結界にはもう1つ、重要な効果がある。青の結界発動中に敵弾にかすると、右下にある丸い消幕ゲージが増えていく。これが満タンになると、消幕の使用回数が1回増える。同様に、赤の結界発動中に敵弾にかすると、左下にある丸い残魂ゲージが増加。満タンになると残魂が1つ増える。いずれも最大6つまでストックが可能だ。

 これ以外に残魂や消幕回数を増やす方法はないため、結界中はなるべくかすりを狙っていくことが重要になる。もし被弾してしまっても結界が解けるだけで済むので安全性も高い。余裕がある時には『敵弾にかすりに行く』ことで結界ゲージを増やし、敵弾が多い時に結界を発動して残魂や消幕を稼ぐ。各ステージの序盤で雑魚と戦う時にも、ただ敵を倒すだけでなく、どれだけうまくかすり避けて各種ストックを溜めておくかが攻略のポイントになる。

 うまく敵弾にかすり続けていれば各種ゲージは溜まっていくが、思わぬ被弾や想定以上の弾幕で、2つの結界ゲージを使い切ることもある。そんな時に落ち着いて回避したり、消幕したりして結界ゲージを回復することも重要になる。もしミスしてやられたとしても、赤の結界中にかすり続けられれば残魂はまた増やせる。

 2つの結界ゲージを交互に使いながら必殺技で敵を倒し、消幕で弾を消しつつゲージを溜め直し、残魂と消幕の必要な方を溜められるようにかすり避けをする。ただ弾幕を避けるだけではなく、シューティングゲームには珍しいリソース管理能力が求められる。

 純粋な弾幕シューティングとして見ると、それほど厳しい作品ではない。本作の楽しむべきポイントは、緻密な操作で敵弾にかすって各種リソースを稼ぐことと、結界や消幕、必殺技をどんどん使って進む爽快感のメリハリにあると思う。もっとも、4段階ある難易度を上げてやると弾幕も壮絶になるので、激しい弾幕を望むコアなシューターにも歯ごたえのある作品になっている。

結界発動中、必殺技を撃たずにかすり避けを頑張れば、残魂や消幕回数を増やせる
ボス戦になれば弾幕はかなり派手になる。結界を駆使して、守りと攻めを両立した戦いが望まれる

ただ敵を倒すだけでは見えない真実

ステージの最初やボスとの会話で、ストーリーが少しずつ語られていく

 本作はシューティングゲームとしての部分だけでなく、ストーリーにも注目してほしい。“北封結界”が弱ってきたことで、“最果ての大地”は人間が暮らすには厳しい環境になりつつある。姉妹にも悲劇的な出来事があり、それによって少女が戦いへ足を踏み入れることになる。

 精霊術師と法術師という立場から想像できるとおり、敵として現れるのは妖や術師といった和風ファンタジーのキャラクターだ。“北封結界”が今どうなっているのか、なぜ弱っているのか、そもそも“北封結界”とは何なのか。ステージの最初に出てくる記述や、最後に登場するボスキャラクターとの会話の中で、秘密が徐々に明らかになっていく。

 ただし、本作ではただボスを倒して進んでいるだけでは、真実にはたどり着けない。若干ネタバレになってしまうが、何も考えずにボスを撃破して最後まで進むと、バッドエンドを見ることになる。より高評価のエンディング、すなわち物語の真の結末を見るためには、戦いの中であることをしなければならない。

 何をすべきかということは、バッドエンドの内容を含め、ゲームのあちこちにヒントがある。一度何も考えずに最後までプレイしてから、スタート画面にあるイベントリプレイや実績の確認などを見ていけば、どうすればいいかはすぐに気が付くはずだ。もっとも、気付いた後でそれを実践するのは、ただ敵を倒してクリアするよりも一段ハードルが高くなる。

 エンディングは複数あるが、ストーリーの本筋は高評価時のエンディングで、ドラマ仕立ての演出で語られる。物語はなかなかのボリュームがあり面白いので、ぜひ最高評価のエンディングまでたどり着いていただきたい。ただ激しい弾幕シューティングの後に、まったく異質なドラマシーンで物語を一気に語りきってしまう見せ方には、若干の違和感があった。もう少し見せ方に工夫があれば、よりスムーズに楽しめたと思う。

 なお本作は、2015年秋にExtraステージを提供する予定だという。詳しいことはまだ明かされていないが、本作の製品版を購入した人に対して、公式サイトで配布するとしている。購入を検討している方も含め、そちらの動きも忘れずご確認いただきたい。

ボスは魅力的なキャラクターが揃っている。彼らがなぜ戦うのかは、ゲームを進める中で明かされていく
真のエンディングを見るには、最終ステージにたどり着く必要がある。ヒントはバッドエンドや実績画面などにあるので、くまなく見ておきたい
Amazonで購入

ソフトウェア情報

「雪晶石 -Malice Eater-」
【著作権者】
Project Noise(Amusement Makers)
【対応OS】
Windows Vista/7/8/10
【ソフト種別】
パッケージ販売 1,542円(税込み)など(体験版あり)
【バージョン】
1.00

(石田 賀津男)