週末ゲーム

第588回

スーファミ風の古典らしさとプレイアビリティを両立した王道長編RPG「Mystic Star」

広い世界を冒険する手探り感と、キャラカスタマイズや戦闘の楽しさが詰まった大作

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、王道長編RPG「Mystic Star(ミスティックスター)」をご紹介する。

懐かしい“あの雰囲気”と現代的なプレイアビリティを兼ね備えた王道長編RPG

スーファミ時代の雰囲気を感じさせるグラフィックが特徴のひとつ

 「Mystic Star」は、ファンタジー世界を舞台に、主人公の少年“ハルト”とその仲間達の冒険を描いたRPG。プレイ時間は公称20〜30時間の長編で、作者によると『作品規模・雰囲気共に、昔なつかしSFC(スーパーファミコン)時代の市販RPGに匹敵するものを目指しました』という。

 素朴な味わいのある歩行グラフィックやマップチップ、描き込まれたモンスターグラフィックや戦闘アニメーションなどは確かに古典的で当時の雰囲気を感じるものだが、本作はこれに現代的なプレイアビリティの良さが加わっており、ただ懐かしいだけのゲームではない。プレイ時間は長いがシステム的にも展開的にもテンポがよく、最後までダレずにプレイすることができた。

 物語はハルトの故郷である“メルシア王国”から始まる。従弟であり王子の“ロビン”と共に平和に暮らしていたハルトだが、ある事件により隣国“アスダイン帝国”へ向かうことに。そこでは新たな出逢いとさらなる事件が待ち受けており、やがてハルト達は、ある目的のため“七星珠”を求めて世界へ旅立っていく……。

炎上する故郷から旅立つ王道の展開
千年前に七星珠の力で魔王を倒した英雄達の物語も、ハルト達の旅にさまざまな形で関わってくる

 中盤まではほぼ一本道だが船を手に入れてからは一気に行動範囲が広がり、どの七星珠から探しに行くかなど、進行の自由度はかなり高い。2つの大陸とさまざまな島からなる世界には、船では上陸できないような場所もあり定番ながら冒険心をくすぐられる。

 その分、うっかり上陸した先でザコにボコボコにされて逃げ帰るようなこともあるが、そこも含めて世界開拓の醍醐味といったところ。フラグによる制限ではなく(それも全くないわけではないが)、自分が強くなることで行ける場所が増えていく感覚が心地よく、グラフィックもそうだがそれ以上に、この手探り感こそが古典らしさだと強く感じさせられた。

七星珠のありかを示す世界地図。転移の力を手に入れれば、指定した街へのワープも可能

 一方で、七星珠を手に入れるたびに星珠の力として、世界各地の街への転移といった便利機能が解放されていく。ゲーム進行的にそろそろ作業感が出てきた頃に、当該作業をスキップしたり簡便化できるようになっているのが絶妙なタイミングだ。ダンジョン内はセーブポイント以外セーブ不可だがセーブポイントはかなり細かく設置されていたり、ボス戦前のイベントを任意にスキップできる点も、緊張感と遊びやすさを両立している。

 他にも、ランクの高い攻撃技や魔法が範囲攻撃の場合、個々の敵へのダメージは劣るためボス戦では使いにくい、という“RPGあるある”に対して“対象が1体の場合は威力が上がる”という調整がされており使いやすかったり、詳細はネタバレになるため伏せるが『頑張ってお金を貯めて店売りの最強武器を買ったあとに、イベントで武器が手に入って無駄になりガッカリ』といったことがないよう工夫されているなど、『古今東西のRPGをよく見て研究しているな』と感じる配慮が随所になされている。

 なお本作は、本連載の第486回で紹介した「Labyrinth Star」の作者による新作。もともと約9年に及んだ「Mystic Star」制作の途中で、ゲームシステムの評判を見るための先行パイロット版という位置付けでリリースされたのが「Labyrinth Star」。世界観につながりはあるが直接の続編ではなく、「Mystic Star」からプレイしても全く問題はない。とはいえ、「Labyrinth Star」のプレイヤーならニヤリとしたり、ちょっと感慨深くなる展開も用意されている。

スキルと“魔珠”による自由度の高いキャラクターカスタマイズ

 冒険の舞台は魔族の住む氷雪地帯に地底世界とさまざまに広がり、ハルト達の仲間も増えていく。戦闘においては性格も戦闘スタイルも個性豊かな仲間達から、4人を選んでパーティを組んで戦う形となる。

 キャラクターの個性が出るのが、キャラクターごとに用意されたスキル習得画面。ここでは戦闘勝利時に経験値とは別に入手する“SP”を消費して、好きな順番でスキルを習得していく。攻撃スキルなどの“特技”はもちろん、特定属性への耐性やクリティカル率の向上といったパッシブスキルもキャラクター毎に異なるものが用意され、その上で何を優先して習得していくかはプレイヤーの手に委ねられている。

分野ごとにツリー状になっているスキルの根元から習得していく
この手のシステムだと『気付いたらSPが余ってスキルを取り忘れていた』ということがあるが、あらかじめ“予約”しておきSPが溜まると自動で習得できる機能が便利

 キャラクターカスタマイズでもう1つ重要なのが“魔珠”。各属性の魔法を使えるようになるものと、各種ステータスを向上させたり、“回復アイテムの効果を全体化”など特殊効果を持つものがあり、こちらは完全に自由に付け外しが可能。魔珠をセットできる数もスキル習得により増えるので、特技やパッシブスキルを取るか魔珠をたくさんセットするか、優先順位にプレイスタイルが出るところだ。もちろん、物理重視や魔法マスターなど、キャラクターごとに方針を変えてもよい。

魔珠によりキャラクターを自由にカスタマイズできる。なおキャラクターごとに得意属性があり、得意な属性の魔法は威力が上がり消費MPが下がる。スキル習得で上げられる属性耐性もこの属性のもの
魔珠はモンスターを倒したりして入手する“魔石”を合成して作れる。限られた魔石を魔法と能力向上、どちらに注ぎ込むかも考え所だ

 そのほか、装備品はとくに防具の種類が身体防具と靴のほか腕輪、指輪、紋章……と充実。さまざまな特殊効果を持つものも用意されている。防具はスキル習得により装備枠が最大5枠まで増えるので、組み合わせを考えるのが悩ましくも楽しい。

テンポの良いCTBサイドビューバトル。状態異常の活用がアツい

戦闘はCTB方式のコマンド選択型

 戦闘は、フィールド上ではランダムエンカウントで、ダンジョン内はシンボルエンカウント。敵、味方が入り交じって順次行動するCTB方式のコマンド選択型となっており、特技や魔法のアニメーションも見所ではあるが、演出はスピーディで非常にテンポよく進行する。

 特技はTP、魔法はMPという個別のポイントを消費して発動する……という点は定番のシステムで、TPとMPは行動後に一定量ずつ回復する。しかし特技使用時はTPが、魔法使用時はMPが回復せず、TP・MP回復アイテムも存在しないため、とくに長期戦ではどちらかを偏って使っているとジリ貧になっていく。パーティ内での役割に加え、TP・MP管理も頭に入れてバランスよく戦っていくのが重要で、さまざまな特技や魔法を使い分ける楽しみにもつながっている。

 また、各キャラクター2つずつ習得できる“奥義”も存在。ダメージを与えた時に溜まるゲージを使う“青奥義”は強力な攻撃技、ダメージを受けたり防御した時に溜まるゲージを使う“赤奥義”はキャラクターごとにユニークな効果が設定された技で、とくに赤奥義は戦術に組み込むとなかなか面白い戦い方ができ、強敵とのバトルを盛り上げてくれる。

 多彩な攻撃を仕掛けてくるボスとの戦いも醍醐味で、中盤以降は歯応えのある難易度となっている。ポイントは、状態異常が結構ボスにも効くこと。当然失敗しやすいのだが、状態異常付与の成功率を上げる方法もいくつかあり、工夫しがいのあるポイントだ。

 そのほか、アイテムはあらかじめセットしたものを1回の戦闘中に一度だけ使える仕組みで、セット枠はスキル習得で増やせるが最大でも3つまで。大量のアイテムに頼った持久戦はできないようになっており、限られたアイテムの使い所の見極めが必要なのも戦闘の緊張感につながっている。ちなみに使ったアイテムは数に余裕があれば戦闘後に自動で補充されるため、再セットに気を遣う必要はない。

状態異常は完全に効かない場合は“GUARD”、効く可能性はあるが失敗した場合は“MISS”と表示され、試行錯誤の目安になる
陣形の要素も。配置に応じて狙われやすさやステータスなどに変化があるほか、特技や魔法には横一列、縦一列といった攻撃範囲を持つものがあり、敵の範囲攻撃を誰が受けるかにも影響してくる
「Mystic Star」戦闘プレイ動画
ザコ戦と、ボス戦の一部を収録。自作のアツい戦闘曲も魅力だ

コメディあり、熱い展開ありの王道シナリオ。一度のプレイで充足感を味わえる作品

 シナリオ面は、奪われる故郷、立ち塞がる四天王、世界各地で事件を解決しながら重要アイテムを得ていく展開……とまさに王道。それでいて、人物像も種族もまちまちな仲間同士や、旅先で出逢う人々とのコミカルな掛け合いも賑やかで、キャラクターを身近な存在として感じられる。ちょっとしたやり取りの積み重ねがキャラクターを形作っていき、終盤においてそのキャラクターなりの決意として語られるさまはなかなかに熱い。

魔法を得意とし、冷静な判断でパーティを引っ張る“イナーシャ”だが、10年ほど前に書かれたノート“禁断の魔法書”を発見されて慌てふためく一面も
最初の街で『アイテムを使わなくても魔法でHP回復が可能』という親切なアドバイスをくれる兵士に、道具屋の主人から一言
行く先々で鉢合わせる、しゃべるスケルトンの“スケさん”。敵ながらどこか憎めないコメディリリーフだ

 他にも賞金首モンスターの討伐や、世界中に散らばる“ミスティックコイン”を集めてアイテムと交換してもらう要素などもあり、ダンジョンの種類もバラエティ豊か。探索や戦闘、キャラクターカスタマイズを存分に楽しめる作品となっている。その一方でクリア後のオマケや周回プレイ限定要素といった無闇にプレイを引き延ばす仕組みはなく、クリア時には大作をやりきったという充足感と、終わってしまう寂しさも込みの余韻に浸ることができた。

賞金首モンスターを倒すと賞金とレアアイテムをゲット。どこに居るか探すところから勝負だ
ミスティックコインは見つけにくい場所に隠されていることも。ただしこれを含めアイテムの落ちている場所は必ず光っているので、棚や樽をしらみつぶしに調べる必要はない
ダンジョンはバラエティ豊か。さまざまな仕掛けも待ち受けている
ハルト達の壁として立ち塞がる難敵など、王道ながら熱い展開も見所

 グラフィックのほか、とくにボス戦曲が燃えるサウンド面、ゲームバランスやシナリオ、インターフェイスなどすべてにおいて統一感をもって古典風に仕上げた内容と、現代のプレイヤーがそれに浸ることを阻害しないプレイアビリティの高さが隙のないクオリティで融合した「Mystic Star」。懐かしいと感じる人もそうでない人も、RPGが好きならぜひプレイしてみてほしい作品だ。

ソフトウェア情報

「Mystic Star」
【著作権者】
砂川 赳 氏
【対応OS】
Windows 98/Me/2000/XP/Vista/7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.081(15/02/14)