週末ゲーム

第568回

町民風の超人が戦う2D対戦格闘ゲーム「稲歩町ダイナマイトボム」

初心者歓迎の簡単コンボあり、マニア向けの駆け引きありの本格派

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、2D対戦格闘ゲーム「稲歩町ダイナマイトボム」をご紹介する。

 本作は同人ゲームとして頒布されており、執筆時現在はPLAYISMなどのダウンロード販売サイトで購入可能。PLAYISMにて体験版も公開されている。なおPLAYISMでは通常864円(税込み)のところ、2014年8月8日から18日までサマーセールのため半額の432円(税込み)で販売中だ。

やたら熱血な超人達が集う稲歩町

登場するのはこの8人。いずれもただの住人ではなく超人ばかり

 「稲歩町ダイナマイトボム」は、超人が集う町を舞台にした2D対戦格闘ゲーム。登場キャラクターは8人の稲歩町住民なのだが、“魚屋でプロレスラー”、“医者で仙女”、“本屋で魔法使い”、“刑事でサイボーグ”など、町民の顔の裏に超人的な能力をもつ格闘家達が集まっている。

 ゲームは対戦格闘という形を取っているが、普通の町に見えて超人だらけという、濃いキャラクター達が強い魅力を放つ作品だ。作者は『本来は「超人住民によるバトル」をゲームジャンルを問わず表現したかった』と語っており、根幹がキャラクターにあるというのも納得できる。

 キャラクターはクールな女性もいるのだが、全体的に熱血タイプが多い。キャラクターやシステム周りのボイスは暑苦しさすら感じるほどで、アクションも力の籠った豪快なものばかり。“ダイナマイトボム”という名前も納得してしまう内容だ。

 ストーリーも短いながら、各キャラクターごとに用意されている。主人公の風格をもつ“高校生で格闘戦士”の“鉄 虎徹”は、書いた願い事が叶うというノートに『もっと戦いたい、強くなりたい』と書いたところ、あらゆる人から襲われるようになる。元凶であるノートを再び手にして問題を解決するため、超人的な力をもつ町の住人を倒しに行く。『他に方法があるのでは?』と思ってしまうが、とりあえず戦ってしまうのがこの少年の熱い(?)キャラクターなのだ。

 他にも、鳳凰の卵から雛を孵すのに生命力のぶつかり合いが必要だからと戦う仙女や、猫の像を壊してしまったことで呪われ、店が無数の猫に襲われている魚屋など、破天荒だったり、くだらなくみえる理由で各々が町内の戦いに繰り出していく。

これは医者と魚屋の戦いであり、仙女とプロレスラーの戦いでもある
見た目にもユニークなキャラクターが次々と登場する
戦う理由も強引だったり脱力系だったり、でも本人にとっては深刻な問題ばかり

お手軽操作で大技が出せる爽快コンボシステム

派手なコンボも簡単に出せる

 さてゲームの方は、キャラクターを選んで対CPU戦を勝ち抜いていくストーリーモードと、2人のプレイヤーで対戦するバーサスモードの2つがある。内容はどちらも1対1で戦う対戦格闘アクションゲームだ。

 操作は上でジャンプ、下でしゃがみ、相手と反対方向でガード。攻撃はパンチとキックでそれぞれ弱と強の計4種類、それにコマンド技というオーソドックスなものだ。コマンド技は各キャラクターごとに複数あるのだが、ほとんどは下→斜め前→前か、下→斜め後ろ→後ろに続けて攻撃ボタンという操作で出せる。

 さらにコマンド技には、攻撃やダメージ時に溜まるゲージを消費して発動する、追撃コマンド技がある。コマンド技の発動後、上下左右いずれかの方向を入れながら攻撃ボタンを押すと、強力な必殺技が発動。その前のコマンド技が命中していれば、さらに連続してコンボになり大ダメージを狙える。

 操作の流れとしては、通常攻撃からコマンド技、さらに追撃コマンド技と入れるだけで大ダメージが狙えるようになっている。格闘ゲームの経験があれば、しゃがみ弱攻撃からコマンド技という連携は理解しているはずなので、そこから簡単な操作で追撃コマンド技を狙うことが可能。ダメージだけでなく見た目にも派手で、実に爽快だ。

 コマンド技の出し方がほとんどのキャラクターで共通しているので、技表すら見ないでも遊べるお手軽さがある。追撃コマンド技も、発動時に押す方向によって全く違う技に変化するので、使い分ければ見ていて飽きない(技ごとにダメージ差はあるので、勝つためには強い攻撃を狙いたい)。

 ちょっと慣れれば派手なコンボを出せるというのは、格闘ゲームの導入においては重要な要素だ。ゲーム的に簡単すぎても難しすぎてもプレイヤーは飽きてしまうが、見た目の爽快感があれば、しばらくはキャラクターを変えて楽しもうという気になる。本作はその点をしっかり押さえている。

コマンド技の操作はほぼ全キャラ共通。基本を覚えてしまえば他のキャラクターも何となく操作できるのがうれしい
コマンド技から追撃コマンド技への連携も簡単。慣れれば派手なコンボが簡単に出せるようになる

奥深い駆け引きを楽しめる各種システムも充実

キャラクターによって動きの速い遅いはあるが、ダッシュを使えばその差はぐっと埋まる

 ゲームの難易度という意味では、本作のストーリーモードはさほど難しくはない。先述の追撃コマンド技まで覚えてしまえば、エンディングを見るまでさほど時間はかからないはずだ。コンティニュー回数も無限なので、少しずつ頑張れば何とかなる。

 本作はさらに、対戦格闘ゲームとしての深みも備えている。まず移動面では、前後方向へのダッシュに加え、空中でのダッシュが可能。ダッシュ中に前方へジャンプすれば、敵に高速で飛びかかることもできる。

 攻撃を受けた際の受け身も可能。受け身中は無敵状態になり、追撃しようとする敵から離れたり、逆に近付いて反撃したりできる。単純にダウンすると、ダッシュで近寄られて起き上がりの追撃を受けやすく、受け身を覚えることでスムーズな回避と反撃が可能になる。

 さらに敵の攻撃を受け流し、自分が先に動ける状態を作る、見切りカウンターというシステムもポイント。これはワンボタンで発動でき、敵の攻撃を読み切っていれば、ガードするより有利に動ける。ただし発動前後には隙があるため、乱発していても勝てない。

 攻撃面では、敵を空中に飛ばして追撃可能な状態にする打ち上げ攻撃や、ガード不能の溜め攻撃も使用可能。溜め攻撃は空中でも使用できるので、対空技で待ち構えている敵のタイミングをずらしてやるという使い方もある。さらには溜め攻撃もキャンセルできるので、溜め状態を狙ってくる敵を迎撃する……ということも可能。

 説明だけだと難しそうに聞こえると思うが、ひとつひとつの要素としては役割が明確で、やってみるとわかりやすい。ただ使いどころはプレイヤーの腕次第。起き上がりの追撃を見切りカウンターで受け流したり、それをさらに予想して起き上がりに溜め攻撃を仕掛けたりと、瞬時の駆け引きが随所に発生する。

 他にもしゃがみガード不可の攻撃など、対戦格闘ゲームによくある仕組みは本作にも用意されている。一発でも攻撃をもらえば追撃コマンド技まで続くお手軽コンボが待っているだけに、互いのゲージが溜まっている時は、とくに集中力が求められる。

受け身を覚えると起き上がりの攻めを避けやすくなる。ワンランク上の戦いを目指すならまずこれを覚えたい
見切りカウンターはタイミングが命。うまく使えば反撃できるが、外せば逆に無防備になってしまう
打ち上げ攻撃は全キャラクターがもっている。ここからの空中コンボを考えるのも楽しい

レトロなB級対戦格闘が好きな人へ

見た目はやや古さも感じるが、対戦格闘ゲームとしての完成度は高い

 本作は「2D格闘ツクール2nd.」を使って開発されている。このツールは10年以上前に発売されたもので、それゆえに本作はビジュアルエフェクト、解像度(640×480ドット)など見た目の古臭さは否めない。またオンライン対戦機能をもたないなど、今風でない部分も多い。

 しかしプレイした感覚は、手軽な操作感と爽快なコンボ、多彩な駆け引き要素があり、格闘ゲームとしての完成度の高さは手触りとして伝わってくる。それに加えて熱いキャラクターがゲームを格段に盛り上げてくれる。

 誤解を恐れずに言えば、90年代に多数登場したB級感あふれる対戦格闘ゲームが好きな人に、ぜひプレイしてほしい作品だ。対戦ゲームとしてのクオリティの高さは間違いないのだが、それ以上に勢いと熱で押してくるタイプのゲーム、と言えば感覚的に伝わるだろうか。真面目にバカをやっているという、このテイストを堪能していただきたい。

キャラクターが前面に出たゲームではあるが、対戦格闘としての作り込みも十分。その上で力技のギャグテイストを許容できる人にオススメの作品だ
プレイ動画
簡単な操作で派手なコンボを出せるおかげで、手軽にスピード感のあるバトルを楽しめる。濃いキャラクターにも注目してほしい

ソフトウェア情報

「稲歩町ダイナマイトボム」
【著作権者】
hoe2 氏
【対応OS】
Windows 98/Me/2000/XP(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
ダウンロード販売 864円(税込み)など(体験版あり)
【バージョン】
1.31(14/07/30)

(石田 賀津男)