週末ゲーム

第567回

タイムライン型バトルで戦略性抜群の中編RPG「輝ける天空の宝」

行動阻害や行動後の隙など、システムを駆使して戦うテクニカルな戦闘が魅力

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、戦略性の高いタイムライン型バトルが特徴のRPG「輝ける天空の宝」を紹介する。

財宝を求めて旅をする中編RPG

少年“キリュ”の依頼を受け、“カミオン”は彼と共に宝探しの旅へ

 「輝ける天空の宝」は、ある冒険家が遺した財宝を求めて旅をする中編RPG。物語は、冒険家の孫である少年“キリュ”が、財宝を探す手伝いをベテラン冒険者“カミオン”へ依頼し、共に旅立つ所から始まる。やがてカミオンの昔馴染みである錬金術師“サフィーナ”も加わり、財宝を求めてさまざまな町やダンジョンを巡っていくことになる。

 本作の特徴は、敵、味方が順次行動し、その行動順がひとつのタイムライン上に表示される戦闘システム。敏捷性のパラメーターが高いキャラクターほどタイムライン上での進みが速いため多く行動できるほか、行動を阻害したり、行動後に隙ができるといった要素により、戦略性の高いバトルを楽しめるようになっている。

ディレイによる行動阻害が肝となるタイムライン型バトル

戦闘画面の左上に表示されるのが、本作におけるバトルの肝となるタイムライン

 基本的な戦闘方式はフロントビューのコマンド選択型。画面の左上に表示されるのが、本作のポイントとなるタイムラインだ。タイムライン上には味方と敵を表すマーカーが表示され、時間経過で右へ進む。マーカーがタイムライン右側の“Action”と表示される領域まで到達すると通常攻撃やスキルなどのコマンドを入力して発動準備状態となり、さらにマーカーが右端まで到達するとコマンドが発動する仕組みだ。

 タイムライン上では、攻撃を受けると“ディレイ”となってマーカーが少し左に戻る。さらに、コマンド入力後の発動準備中にディレイによってマーカーが“Action”領域より左に戻ると行動がキャンセルされ、マーカーは一気にタイムラインの左端まで戻されてしまう。

 コマンドの入力から発動までにかかる時間や、攻撃時に与えるディレイ効果はスキルによって異なり、すばやく発動するスキルや、発動に時間はかかるが相手に与えるディレイ効果も大きいスキルなど、さまざまなものが用意されている。これらを状況によって使い分けて、敵の行動を阻害していくのが本作の戦闘における定石だ。

行動がキャンセルされるとマーカーはタイムラインの左端まで戻されてしまう
すばやく発動するものや、ディレイ効果が大きいものなどスキルにはさまざまな種類が

待機でタイミングを計り、無防備な敵にクリティカルを叩き込め!

 もちろん、味方も同様にディレイとキャンセルの効果を受けるので、発動準備中に攻撃を受けるような状況を避けていく必要がある。このために用意されているのが“待機”コマンドだ。タイムライン上で自分のすぐ後に敵のマーカーがあるような状況では、コマンドを入力しても阻害される可能性が高い。そこで“待機”コマンドを利用するとタイムライン上で僅かにマーカーを左へ戻し、先に敵を行動させることができる。これで敵の出方を見てから自分の行動を決められるようになるわけだ。

どんな強力な攻撃でも、物理攻撃であれば1回完全に無効化できる防御は非常に有用

 具体的には、敵がコマンド発動準備中になると行動内容とターゲットが表示されるため、狙われているキャラクターは防御をしつつ、狙われていないキャラクターが攻撃をする、といった連携が有効。とくに本作では防御の効果が大きく、ダメージを半減する上に物理攻撃は最初の1回のみ完全に無効化できる。防御しなければ一撃でHPが半分以上削られる、なんてことも珍しくないため非常に重要な要素となっている。

 さらに、“無防備状態”も把握しておきたい要素。敵・味方ともに行動後はマーカーがタイムラインの左端に戻るが、タイムライン左側の“!!”と表示される領域は、キャラクターが無防備状態となっていることを表す。これは攻撃が必ず当たり、かつクリティカルヒットとなる危険な状態だ。

 端的に言えば、行動直後には隙ができるということ。ここを狙われないように敵と行動タイミングをずらしたり、逆に敵の隙をつけるよう先読みして攻撃ターゲットを決める、といった戦略が重要となる。加えて、行動キャンセルでマーカーが左端に戻された際も同様に無防備状態となるため、攻める側からすれば敵の攻撃を封じた上に反撃の大チャンスとなるわけだ。

 基本的にはしっかり防御していくのが重要な戦闘デザインとなっているが、耐えきれる自信があるなら反撃を覚悟で攻め込むことが、ときには戦闘の長期化による消耗を避けることに繋がる。敵の出方によって攻撃と防御を臨機応変に使い分けるという駆け引きが楽しい作品だ。

通常戦プレイ動画
行動キャンセルや無防備状態でのクリティカル、防御による物理攻撃完全ガードなどの様子を確認できる

隙を伺い攻め時を見極め、ボスを打ち倒していくのが醍醐味

戦略やスキルを駆使した総力戦が楽しい作品。敵の攻撃も容赦ない

 タイムライン型で行動阻害がポイントとなる戦闘というと、本作も参考にしたというセガサターンの名作「グランディア」が著名なほか、最近では海外製の「Child of Light(チャイルド オブ ライト)」も話題となったが、本作はとくにこのシステムを奥深く突き詰めて、高い戦略性をもたせている。

 行動キャンセルにしても、ただ発動準備中に攻撃を当てればいいというものではなく、タイミングを合わせてディレイ効果の高いスキルを叩き込んだり、複数人で集中攻撃するなど狙って引き起こすには頭を使う。また、行動後の無防備状態があるため攻め一辺倒でなく、待機、防御を駆使しながら隙を伺う必要がある。総じて、『システムを活用すると有利』というレベルではなく、『活用できなければ負ける』という印象。敵の攻撃は激しく、ザコ戦でも気を抜くと全滅しかねない。

 それだけに、狙った戦略がピタリとはまり、敵の攻撃を無効化したときの達成感はかなりのものだ。また、スキルには命中率を下げる盲目、時間経過でダメージを与える毒、一定時間行動できなくする麻痺といった状態異常を与えるものもあり、ボス戦でも多くの場合有効。試行錯誤を繰り返して戦略を組み立て、敵の激しい攻撃を凌ぎながらHPを削っていくのが醍醐味となっている。

 本作のプレイ時間は10時間程度。ザコ戦では100%逃げることが可能なほか、ダンジョン内ではシンボルエンカウント方式のため、ボス戦を戦略で乗り切る自信があるなら、戦闘回数を最低限に抑えてサクサク進めることも可能だ。

 シナリオ面でも、カミオン達一行は幽霊船との遭遇など行く先々で事件に巻き込まれつつも、遺産探しという旅の目的から外れることはなく、大仰ではない等身大の物語がテンポよく進行する。情に厚いが抜け目のないカミオン、真面目だが事情があって祖父を嫌っているキリュ、天真爛漫だがとある事情を抱えるサフィーナと、彼らを取り巻く人々による生々しい、人間臭いやり取りも見所。コンパクトにまとまりつつも、戦闘、シナリオ共になかなか濃い体験のできる中編RPGだ。

ダンジョン内はシンボルエンカウント
世知に長けたカミオンをはじめ、癖のあるキャラクター達も見所

ソフトウェア情報

「輝ける天空の宝」
【著作権者】
ギルフェイム 氏
【対応OS】
Windows 2000/XP/Vista/7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.03(14/07/21)

(中村 友次郎)