週末ゲーム

第564回

会社勤めのカエルが戦う2Dアクションゲーム「ケロブラスター」

「洞窟物語」の開発室Pixelの新作。武器の強化や不思議な世界観が魅力

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、2Dアクションゲーム「ケロブラスター」をご紹介する。

 なお本作は有償作品で、ゲーム配信サイトPLAYISMで購入可能。体験版は無いが、スピンオフのフリーゲーム「PINK HOUR」が動作確認版を兼ねている。

会社員のカエルの仕事は“大そうじ”?

主人公のカエルが、ネコ社長に怒鳴られ仕事に出かける

 「ケロブラスター」は、会社勤めのカエルが主人公の2Dアクションゲーム。フリーゲーム「洞窟物語」で知られている開発室Pixelの新作だ。「洞窟物語」は日本のみならず海外でも高い評価を受け、家庭用ゲーム機へも移植され世界中で配信された。「ケロブラスター」は「洞窟物語」と同じサイドビューのアクションゲームで、それもあって公開前から注目を集めていた。

 物語は“キャット&フロッグ社”の社員であるカエルが、ネコ社長に怒鳴られながら仕事である“大そうじ”に出かけるというもの。同僚が黒ネコとオタマジャクシ(のように見える)だったり、全体的にデフォルメされた印象だったりで、コメディ色の強い作品になっている。

 操作は左右移動とジャンプ、攻撃とシンプル。攻撃の操作がちょっと特殊で、攻撃ボタンを押すと自分が向いている方にオートで武器を連射し、攻撃ボタンを離すまでその方向に撃ち続ける。つまり後ろに下がりながら前に攻撃する、といった操作が可能だ。また上を押しながら攻撃すると上方向にも攻撃でき、同様に攻撃ボタンを離すまで上に撃ち続ける。

 ゲームとしては、敵を倒しながらフィールドを進み、最後にいるボスを倒せばステージクリアとなるオーソドックスなスタイル。攻撃操作さえつかんでしまえば、あとは悩まず気軽に遊べる内容になっている。

攻撃は左右と上に撃ち分けられる
ボタンを押したままでその方向に連射し続ける
デモシーンで喋るのは同僚の2人だけ。ピンクのオタマジャクシ?はOLという設定らしい

新たな武器の入手と強化が楽しい!

ゲームを進めると、新たな武器を入手できる

 カエルは最初、弱い武器を1つ持っているだけだが、ステージを進むごとに新たな武器を入手し、強化できるようになる。武器はボスを倒した時などに入手可能で、広範囲へ攻撃できるもの、地面を跳ねるように動く泡状のものなど数種類が用意されており、いつでも切り替えることができる。

 武器は弾の飛び方が違う程度の差に見えるが、それぞれに使いどころがある。たとえば泡状の武器は、地面を跳ねながら進むので、上空の敵は狙いづらい。しかし下へ向かって移動するフィールドでは、跳ねる泡がどんどん下へ落ちていき、敵に当たって次々と倒していける。攻撃は左右と上には出るが、下には出せないので、適切な武器選びでステージ攻略がぐっと楽になるわけだ。他にも特定の武器でだけ倒せない敵や敵弾もあるので、色々試しながら進むのも面白い。

 武器にはそれぞれレベルがあり強化可能。敵を倒した時に入手できるコインを集めて、ステージ途中にあるショップで必要額を支払うことでレベルが上がる。単純に攻撃力が上がるだけではなく、武器の特性が大幅に変化する。最初はショートレンジのマシンガンのような武器が長射程になり、さらにレーザー砲のようになるなど見た目にも実用的にも『強くなった!』と感じられる成長要素は、本作の面白さの重要なポイントだ。

 ゲーム自体の難易度はそれほど高くはない。ボス戦ではある程度パターンを見極めないと勝てないが、極端にシビアな操作を求められる場所は少ない。またダメージを受けた時に消費するライフもコインで上限を増やせるので、ゲームを進めるうちにカエル自身も強化されていく。

 ライフがなくなると残機が減り、直前のポイントから復活する。また残機が0になるとコンティニューしてステージの最初から復活できる。コンティニューの回数には制限がなく、コンティニューしてもコインが減ったり、装備のレベルが下がったりといったデメリットはない。武器の強化やライフの増加をしつつ、ボスの攻略法を考えれば、いずれはクリアできる……というデザインになっている。

武器はそれぞれ特性が異なる。使いどころを考えてやると攻略がぐっと楽になる
武器の強化は強さも見た目も劇的に変化する。強くなった瞬間がとても気持ちいい
ライフの上限も増やしておきたい。武器の強化と同じくショップで購入できる
残機がなくなると病院に運ばれる。コンティニューは何度でも可能

2周目やボスラッシュなどのやり込み要素も

ジェットパックで2段ジャンプが可能になる

 ステージはストーリーに沿って各地を転々とするので、バリエーション豊か。カエルだけあって水中も平気なので、潜水しながら戦う場所もある。水中では泡状の弾が浮き上がってしまったりと、特性が大きく変化するので、戦い方も切り替えが必要だ。またゲームを進めるとジェットパックを入手し、2段ジャンプができるようになる。2段ジャンプを使わないと進めない場所も出てきて、少しずつ難易度は上がっていく。

 さらに本作は2周目のゲームプレイも用意されている。武器の強化レベルはそのままだが、ライフが減って、体の色が黄色になった状態で最初からプレイし直しになる。ステージのデザインも若干変更され、敵が増えたり強化されたりしていて、少々歯ごたえが増している。とはいえ1周目ですべての武器を強化するのは難しく、2周したくらいで概ね強い装備が揃ってくるので、装備集め気分でも楽しんでプレイできる。

 2周目もクリアすると、最後にボスラッシュが待っている。これはタイムアタックになっており、すべてのボスを倒すまでの時間が記録される。最後のやり込み要素、といったところだ。

 筆者が2周クリアするのにかかった時間は4時間程度。すべての武器を強化しようとすると、さらにもう少し時間がかかる(タイムアタックは強化した武器で挑めるので、すべて強化する意味がある)。ただゲームとしては概ねそのくらいのボリュームと見ていいだろう。

2周目はカエルの色が黄色くなる。ステージの配置や見た目も少し変わっているが、強化した武器はそのまま使える
ボスラッシュはタイムアタックになっている。武器選択と戦術を練ってタイム更新を狙いたい

細部まで気配りされたアクションと、不思議な世界観を味わう一作

衝撃的な手ごたえはなくとも、丁寧な作りでストレスを感じさせない

 本作はゲームとしてはとてもオーソドックスにまとまっており、何気なく遊べば、『普通のアクションゲームだな』で終わってしまうかもしれない。他のゲームで見たことがないような驚きのアイデアがあるわけではないので、インパクトのある作品だとは言いがたい。それに「洞窟物語」を知る人からすると、どうしても期待度が高くなってしまうというのもある。

 しかし筆者自身は、本作のプレイにとても満足している。特筆すべき注目点は少ないかもしれないが、逆に何かダメなところがあったかと言われると、これもまた思いつかない。そしてよくよく内容を思い返してみると、ゲームの中にストレスを感じさせるものがほとんどないことに気づいた。

 まずはゲームの導入部。タイトル画面が出る前に、攻撃してこない敵が配置してあり、それを倒すことでタイトルが現れる。ゲームに慣れた人ならものの数十秒ほどで終わる内容だが、攻撃ボタンを押したり、はしごを登ったりという操作が盛り込まれており、基本操作を理解するためのチュートリアルとして機能している。これを見て、『今、チュートリアルをやらされている』というストレスを感じる人はほとんどいないはずだ。

 ステージの合間には、会社に戻ったカエルがネコ社長に怒鳴られ、それを見ている同僚たちが会話するというデモシーンが入る。アクションゲームとはいえストーリーも求めたいところだが、このステージ間のデモシーン以外に、ストーリーを語る場所はない。それでも、カエルが主人公という不思議な世界観をうまく伝えている。デモシーン自体も会話のやり取りは数回程度で、長すぎて退屈だったりすることもない。

 ビジュアルやサウンドは、今時のハードに合わせたリッチなものというわけではない。むしろ8bitテイストで古めかしささえ感じられる。ただそれも作品の味で、あえてこういうテイストにしただけで、手を抜いているのではないことが伝わってくる。荒いドットで描かれたキャラクターなのに妙に個性的に見えるし、音楽もサントラが別途用意されるほどにニーズがある。

 遊び終えた感想を素直に言うなら、『いいゲーム』だ。武器を強化する瞬間の気持ちよさ、リトライを繰り返すほどでもない程よい難易度、不思議でちょっと笑えるキャラクター、8bitテイストのビジュアルとサウンド、そのどれもが実にいいバランスでまとまっている。

 アクションゲームが上手な人からすれば、すぐに終わる、ボリューム不足といった評価になるかもしれないが、ゲームがつまらなかった、遊んでいてストレスを感じたという評価はほとんど出ないだろう。熱狂的になる面白さではなくとも、友達に『面白かったよ、遊んでみたら?』と気軽に薦めたくなる、気配りの行き届いた作品だ。筆者としては、本作はアクションゲームとしてだけでなく、ゲームの世界観を味わうつもりで遊んでいただきたいと思う。

ゲーム開始直後に動かない敵を倒す。これがチュートリアル代わりになっている
グラフィックスはリッチではないが、それも本作の味のうち
キャラクターはドット絵なのに妙に魅力的。ピンクのOLは多くのプレイヤーに大人気のようだ

 最後にもう1つ。本作はWindows版の他にiPhone版も提供されている。こちらは攻撃がフリック操作になっており、上、左、右のいずれかのショット方向を選ぶと、オートで撃ち続ける。バーチャルパッドで操作するゲームとは違う独特のインターフェイスなので慣れは必要だが、攻撃ボタンを押し続ける必要がなく、操作に集中できる。

 これはWindows版でもそうなのだが、攻撃方向を固定するというスタイルのおかげで、敵の方を攻撃しつつも、敵の攻撃を避ける操作だけを考えられるのがいい。特にスマートフォンのバーチャルパッドは、指の位置がずれると攻撃や移動が思うようにできなくなるストレスがあるので、操作するボタンを減らすことはプレイの快適性に直結する。それをこの形でゲームに組み入れたのはアイデア賞もの。スマートフォン向けのアクションゲームとしては見事なアプローチだ。

iPhone版も画面はWindows版とほとんど同じ。操作方法は異なるが、スマートフォン用アクションとしては極めて快適に作られている

ソフトウェア情報

「ケロブラスター」
【著作権者】
開発室Pixel
【対応OS】
Windows (編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
ダウンロード販売 720円(税込み)など
【バージョン】
1.0.7.2(14/06/11)

(石田 賀津男)