週末ゲーム

第558回

3つの世代、100の物語。多視点型の青春伝奇ノベルゲーム「Colors/Forest」

断片的な情報のピースを揃えて真実に迫る、パズルのような構成が魅力

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ノベルゲーム「Colors/Forest」をご紹介する。

3つの時代をまたがり、100近いショートシナリオで構成される物語

“年表”という形をとるシナリオ一覧。このほか視点別表示もある
一番最初に解放されるシナリオ“陽動―すみれ―”。この時点では“すみれ”が何者かも、語られる言葉の意味もわからない

 「Colors/Forest」は、怪異や影と呼ばれる存在が“見える人”が多く住む町“香澄町”を舞台としたノベルゲーム。複数の視点による1分〜10分程度のショートシナリオが約100編用意されており、あるシナリオを読むと別のシナリオが解放される……という形で物語が進んでいく。

 “年表”として表現されるシナリオ一覧は、主に1985〜1994年、1995〜2009年、2010年〜の3つに分類されており、異なる時代の物語が並列で進行。1つの時代の中でもシナリオの解放順は時系列とは限らず、最初に読んだときはわからなかったシナリオの意味が、他のシナリオを読んだあとに改めて読むことでわかるようになる……といった趣向も凝らされている。断片的な情報のピースが揃っていくことで物語の全容が明らかになる、パズルのような構造が本作のポイントだ。

 まざまな時代と視点で語られる本作だが、中心となるのは2010年、ある目的で香澄町を調査するため町の高校へ転入してきた少年、“石動(いするぎ)悠”の視点。育ての親である“じいちゃん”から与えられた任務がすべてだった悠だが、成り行きで入った“オカルト研究部”の仲間達と交流するうち、少しずつ気持ちに変化が訪れる。

 悠が調査するのは、15年前まで町にあった研究所にまつわる研究データ。しかし調査を進めるにつれて、研究所の閉鎖に繋がった事故と町の因縁が見えてきたり、人に害をなす怪異と遭遇したりなど、不穏な空気が立ちこめてくる。そしてある事件を契機に物語は加速し、悠は決断を迫られていく……。

転入初日、悠は森の奥、巨大な樹の元で少女と出会う
香澄町では、怪異は日常のすぐそばに在るものとして認識されている
1985〜1994年の物語では主に、悠が通う高校にかつて通っていた人々が描かれる

 また本作では、多視点であることを活かして町に関わるさまざまな人物の思惑が描かれるが、過去の時代のシナリオで若者だったキャラクターが、2010年において事態の裏で暗躍したり、悠達を見守る存在となっているなど、世代を越えた物語が展開されるのも趣深い。

 そのほか、怪異が見えるとはどういうことなのかを脳の認識機能から考察するシナリオがあったり、“見える人”の一部に発現する透視や発火などの超能力が物語のキーを握るなど、SF的な要素も本作の醍醐味となっている。

悠の前に現れる謎の人物。悠のことを知っているようだが……
町の喫茶店“Melody Breeze”のマスター(右)。町を古くから知る者として、悠達に助言を与えることも

個性的なキャラクター達によって紡がれる青春ストーリー

左から遥、大和、すみれ。大和は女性陣に頭が上がらない模様

 2010年のシナリオで中心となるのは、オカルト研究部のメンバー達。明るくてちょっと強引、皆を引っ張る部長の“志々目遥”やクールだが意外とネタ振りへのノリはよい“射水(いみず)すみれ”、お調子者の“船橋大和”、顧問だが全く教師らしくない“白川英公(えく)”など、個性的な面々の掛け合いが楽しめる。

 最初は部活に積極的ではなかった悠ですら、彼らの輪に引き込まれて、なんだかんだでネタ会話に乗っかってしまうのも楽しいところ。そうして徐々に築かれていった繋がりが、いざ不測の事態となったときにお互いの連携として、状況を打開する力となっていくのも熱い展開だ。

 物語を彩るグラフィックもクオリティが高い。さまざまな表情を見せるキャラクターとワイド画面で描かれる背景、とくに作品名にもなっている森の青々とした木々は大きな見所のひとつで、淡い色遣いによる丁寧な塗りも作品のテイストを演出している。一方でイベントグラフィックには、キャラクターの可愛らしさを意外なほどまで前面に押し出したものも。

 さらに、30曲近く用意されたオリジナルの楽曲も本作の大きな魅力で、賑やかな日常から危機感あふれる場面まで、作品を多いに盛り上げてくれる。iTunes Storeなどでサウンドトラックの配信も行われているので、気に入った曲があったらぜひチェックしてみてほしい。

過去へ未来へ、作品を越えて広がる世界観

同サークルによる過去作「死舞草」に、中学生時代のすみれが登場する

 本作「Colors/Forest」は、悠とそれを取り巻く人々の物語としてはひとつの結末を迎える単独の作品ではあるが、同時に本作を制作したゲーム開発サークル“Home Security Company”の作品共通となる世界観における、大きな流れの中の1エピソードでもある。

 同世界観ですでにリリースされている作品としては、ホラーノベルゲーム「死舞草」があり、中学生時代のすみれが主人公の“葉月葉(はづきよう)”を手助けする存在として登場。逆に「Colors/Forest」では、葉が悠達の助っ人として登場する。「死舞草」をプレイしていなくても「Colors/Forest」本編を楽しむのに支障はないが、登場人物の意外な過去を覗けたりもするので、「Colors/Forest」をプレイして射水すみれや葉月葉のファンになった、という人なら彼女らの過去編という観点でも楽しめるだろう。

 また、時代は飛んで2026年を舞台とした次回作「春へと続く丘」も開発が始まっており、PVや作品サイトが公開されている。こちらは「Colors/Forest」のクリア後にキャラクター紹介のページなどを見ると、『この人はもしかして……』とピンと来るはずだ。

 そのほか、「死舞草」および「Colors/Forest」の作中でたびたび言及されている“空の上の冒険”は、サークルのブログにてこれまで“開発の目処立たず”とされていたが、RPGとしての開発が模索されているようだ。“空の上”とは何を指すのか、作中でもかなり思わせぶりに語られているので実現に期待したい。

「Colors/Forest」起動時に表示される画面。本作は発掘された記憶情報の再現という位置付けとなっている

 さらに「Colors/Forest」は、“過去の人物の記憶を読み取る能力により発掘された情報の記録”という体裁をとっており、何者かが情報発掘を依頼したこと、その依頼が遂行されたのが2056年であること、2056年現在は世界の有り様が大きく変わっていることが示唆されている。作者のサイトには、これらの出来事を内包した“全作品共通年表”も掲載されており、作品化の予定がない部分も含め、想像をかきたてる内容だ。

 「Colors/Forest」自体、作中で言及される出来事すべてが直接語られてはおらず、また今後語られる保証もない。そうした空白の期間を想像する楽しみが、余韻のある読後感に繋がっている。生き生きとしたキャラクター達の“今”を描いた作品としてももちろん楽しめる本作だが、怪異が身近な存在として知覚できる架空世界の歴史を切り取った物語として捉えると、また違った読み方ができるだろう。任意のシナリオを読み返しやすい方式でもあるため、ぜひ繰り返し読んで新たな発見をしながらじっくりと味わってほしい作品だ。

ソフトウェア情報

「Colors/Forest」
【著作権者】
Home Security Company
【対応OS】
Windows 2000/XP/Vista(編集部にてWindows 7/8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.02(14/04/13)