週末ゲーム

第532回

学校帰りの探索RPG「放課後ダンジョン」

豊富なアイテムにイベント、合成や料理など充実の内容ながら手軽に遊べる

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、変化するダンジョン、さまざまなイベント、多彩なアイテム、豊富なスキルと内容満載ながら手軽に遊べるRPG「放課後ダンジョン」を紹介しよう。

豊富な要素を手軽に遊べるのが大きな魅力

放課後に同級生とダンジョンを探検するRPG
主人公はちょっと捻くれた性格の女の子“ルカ”

 「放課後ダンジョン」は、2Dトップビュー画面のフィールド探索型RPG。学校帰りに友達とダンジョン探索に出かける、というゆるいノリながら、入るごとに構造が変化するダンジョン、300種類以上のアイテム、それらアイテムを組み合わせて料理やアイテムを作り出せるシステム、装備する武器に応じたスキルの変化、転職、豊富なイベントなど、プレイヤーを飽きさせない多くの要素を備えている。それでいて行動範囲は学校周辺とそれほど広くなく、戦闘で全滅してもペナルティがないため、テンポよく遊べるのが魅力だ。

 主人公となるのは、空気を読むのが苦手な見習い冒険者の女の子“ルカ”。ルカは、友達で魔法剣士の女の子“さな”、体力が多い騎士の“カイト”、罠の解除などが得意なシーフの“ゴロー”と放課後にダンジョンへと探索に出かける日々を過ごす。その中で、野犬を退治したり、妖精を倒したりとさまざまなイベントが発生していく。

 一日の流れはまず学校へ行き、放課後になったら町でアイテムなどを購入したり学校裏のダンジョンを探索し、自宅に戻って料理や睡眠となる。学校のない休日はダンジョン探索はできなくなり、勉強して体力や魅力をアップさせたり、町でアルバイトをしてお金を稼いだり、休日のみ開くお店で食材などを購入することが可能だ。基本的に行動できる範囲は狭く、移動するのに苦労することはない。

 本ゲームのメインと言えるダンジョン探索だが、構造が入るたびに変化する、いわゆる“ローグ系”の階層と、完全に構造が固定された階層の2種類が混在している。学校の裏にあるメインのダンジョンでは、数階おきに固定された構造が登場するというパターン。構造固定の階層は宝箱があり、敵が強く、場合によってはボスが登場する。

 ローグ系の階層は、ダンジョン内に落ちている木材や木箱などを破壊することによってランダムにアイテムが登場。面白いのは、回復アイテムや料理の食材となるアイテムは入手してすぐに使用できるが、スキルを身に付けるための書物や、武器や防具など装備するアイテムは鑑定しない限り使えない。鑑定はダンジョンを出たあと、学校の脇にいる妖精が有料で行ってくれる。鑑定前は“服”“板”などとなっているアイテムが、役立つモノなのかどうかワクワクするのが鑑定の楽しさ。レアアイテムは鑑定時に画面が光るという、思わずうれしくなってしまう演出もある。

青色以外の宝箱には罠がある。罠の解除はゴローが得意だ
入手した武器や防具、書物は鑑定するまで何かわからないのも楽しい
戦闘はコマンド選択式。行動順は敏捷性の数値が大きく影響する

 戦闘はフィールド上でうろうろしている敵に触れることでスタートするシンボルエンカウントを採用しているが、一部の階層では歩いているだけで敵と遭遇するランダムエンカウントになっていることもある。戦闘システムはコマンド選択型で、行動の順番はステータスのひとつである敏捷性で決まる仕組みだ。コンピューターにコマンド選択を任せるオートバトルもあるので、ザコ敵なら自動化して戦闘時間を短縮できる。[Q]キーを押せば、戦闘の表示速度をさらにスピードアップ可能だ。

 なお、ダンジョンの奥に進むと当然、非常に強い敵に遭遇したり、ボスと対峙することがある。レベルが低い場合はあっさり全滅することも珍しくないが、全滅してもダンジョンの入り口に戻されるだけで、ペナルティは一切ない。基本的には全滅することで強い敵を認識したり、ボスがどんな攻撃をしてくるのか、どんな攻撃に弱いのか覚えていくというのがこのゲームのスタイルだ。ただ、戦闘は前述した通り高速化できるので、レベルアップの作業はそれほど苦ではない。あれこれ戦略を考えるのが面倒なら、ひたすらレベルアップするのもひとつの手だ。

装備する武器で覚えられるスキルが変化。役割分担を考えるのが楽しい

特定のキャラクターしか覚えられないスキルも多い

 戦闘において重要となるのが、武器、スキル、魔法だ。武器には片手剣、両手剣、小剣、投擲武器、鈍器の5種類があり、装備する武器によって使えるスキルが異なる。たとえば、防御力は下がるが威力の高い攻撃が可能なスキル“大切り”は両手剣を装備しているときにしか使えない。ちなみに、スキルはダンジョンに落ちている“スキルの書”で覚えることが可能だ。さらに、キャラクターごとに装備可能な武器は異なる。魔法剣士のさやは、片手剣、両手剣などは装備できるが、投擲武器は装備できないといった具合だ。

 魔法は、ルカとさやの2人が扱える。スキルと同じくダンジョンで手に入る書物で覚える仕組みだ。複数の敵に同時攻撃できる魔法も多く、効率よく敵を倒すのに便利。ただし、魔法を使うのに必要なMPは各キャラクターともそれほど多くはない。MPの回復方法は基本的にダンジョン内を歩く、ダンジョンを出て次の日にするなど時間経過しかないので、MPを浪費すると強敵やボス戦でピンチになる。使いすぎには注意したい。

 ちなみに、スキルや一部の魔法の発動には“TP”が必要となる。これは戦闘を重ねることで上昇するゲージで、最大100まで溜まる。各キャラクターとも独自の必殺技とも言える強力なスキルをもっており、その発動には多くのTPが必要だ。それだけに、ボス戦の前にはTPを溜めておくのも重要となる。たとえば、ルカのスキル“全員防御体制”は1ターンの間だれも行動できなくなるが、敵の攻撃がほとんど効かなくなる。ボスが強力な攻撃をしかけてくるターンに狙って使うとピンチをしのげるというワケだ。

 強い敵と戦う際には、属性も重要だ。属性には、“炎”“氷”“雷”“水”“大地”“風”などがあり、多くの敵は一部の属性が弱点となっている。このほか、“毒”“暗闇”“沈黙”“混乱”“睡眠”“痺れ”“スタン”といった状態異常も存在する。これも敵によって効果はマチマチ。状態異常を起こす攻撃は、敵にカーソルを合わせると何%の確率で効くのか表示されるのでわかりやすい。

 逆に、特定の属性や状態異常に強い防具も存在している。風属性の攻撃ばかりをしてくるボスなら、風属性に対して耐性をアップさせる武器を装備して戦いに望めば、かなり有利になる。ボスに関する情報は、学校の図書室に行けばある程度わかるので活用したい。

 なお、本作にはHPを回復できるスキルや魔法が存在しないため、回復アイテムがとても大切だ。とくに仲間全員を大幅に回復できる“カレーライス”は切り札とも言えるアイテム。ボスと戦うときには絶対に持っておきたい。ちなみに、回復アイテムは1種類につき1~3個程度しか持つことができない。これも全滅しやすい大きな理由だ。ボスと戦うと決めてダンジョンに潜ったときは、ザコ敵と遭遇してもとにかく逃げて、回復アイテムを温存した状態で臨むことで、ボスを倒せる確率がグッとアップする。

 スキルという点で、非常に面白いのがルカだ。ルカは一緒に冒険するメンバーの中で唯一転職が可能となっている。魔女や道具屋などさまざまな職業にチェンジでき、多くのスキルや魔法を覚えられるほか、装備できる武器も職業ごとに変化する。転職できる職業を増やすには、ダンジョン内の一部モンスターを先生として学校に連れてくるというのもユニーク。たとえばエルフを先生として連れてくることで、狩人に転職できるというワケだ。

 このほか、ダンジョン探索を進めていくとさまざまな料理のレシピや、武器や防具を合成するための書物を見つけることもある。料理は非常に重要な回復アイテムを生み出すことができ、合成は特定の属性に強い武器や防具を作り出せることが多い。どちらも戦いを有利にするために重要な要素だ。

ルカは転職することでさまざまな魔法やスキルを覚えられるのが魅力
武器や防具の合成では特定の属性に強いタイプを生み出せることが多い

 また、ダンジョン探索の奥深さとは別に、のほほんとしたクラスメイトとの会話、ノリツッコミのようなアイテム解説など、ギャグテイストな文章も見どころ。とくにクラスメイトとの会話は学校などで数日おきに発生するので、それもゲームを進める意欲につながっている。

コミカルな会話や解説がいたるところに散りばめられているのも見どころ
休日はアルバイトや勉強のほか、魚釣りなども楽しめる

 このように、変化するダンジョン、限定されている回復方法、突然強くなる敵、さまざまな属性や状態異常とやり込み度は高いが、学校では戦いに関する情報を手軽に入手できるため、投げ出したくなるような苦労を感じるシーンはほとんどない。強力な攻撃を防ぎつつ、弱点となる属性をうまく突かないとなかなか倒せないボス戦は緊張感たっぷり。ダンジョンはアイテムを見つける楽しみがあり、だれにどのスキルを覚えさせるか悩むのも面白い。ルカがプレイヤーに話しかけるようなメタ的な会話は人によっては若干気になるかもしれないが、全体的には非常に丁寧に作り込まれている。壮大な設定などはないが、友人達との気軽な探検を楽しめる作品。じっくりと遊べるRPGを求めているならオススメの1本だ。

ソフトウェア情報

「放課後ダンジョン」
【著作権者】
ショコドラ 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.18(13/05/12)

(芹澤 正芳)