週末ゲーム

ユニークなシステムを多数搭載した長編RPGの意欲作「Princess Saviour」

魔法障壁“AFF”など独自要素満載のバトルが熱いッ!!

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ユニークなシステムを多数搭載した長編RPG「Princess Saviour(プリンセスセイバー)」を紹介しよう。

意欲的な独自システムを多数搭載した長編RPG

未開拓地の調査の一環としてフェルアルナを訪れた青年マリス。危険な仕事をこなしてきた経験から、生存技術に長ける

 「Princess Saviour」は、外界から隔絶された“封王森国フェルアルナ”を舞台に、青年マリスとその仲間達の戦いを描く長編RPG。調査のためフェルアルナを訪れたマリスは、“吸血姫(きゅうけつき)”の異名をもつ女性剣士の“ユーカ”や、田舎の村に暮らしている少女“ミゾカ”と出会う。そしてある事件をきっかけに、3人はさまざまな異能をもつ超越者“10人の王と姫”と戦うため、フェルアルナ各地を巡る旅へと出ることになる……。

 本作は、2D見下ろし型のフィールドにコマンド選択型のバトルと基本構成はオーソドックスだが、ユニークなシステムを多数搭載し、戦略性の高い戦闘やキャラクターカスタマイズを楽しめる。一方で、不要なザコ戦や回復アイテムの調達など、作業になりがちな部分を省略できるシステムを備えており、RPGの面白いところだけをギュっと凝縮したような手触りだ。

金髪の女性剣士ユーカ。彼女自身も“10人の王と姫”の一人であり、ある決意のもとほかの“王と姫”を打倒する旅に出る。一人称は『小生』
記憶をなくした14歳の少女ミゾカ。小柄な身に似合わぬ大剣を使いこなせるが、その理由は本人も知らない

戦略性とスピード感を両立したバトル。魔法障壁“AFF”を突き崩せッ!!

戦闘はコマンド選択型。画面右上に行動順が表示される
攻撃を受けてもMPがあれば、AFFが発動しダメージを抑えられる

 まずは本作の肝とも言える戦闘から紹介しよう。基本的なシステムはコマンド選択型で、敵・味方ともに行動順が入り交じって一覧表示される、いわゆるCTB方式だ。行動順はすばやさを表すステータスである“反応”に依存し、反応が高ければそれだけ行動機会が増える仕組みとなっている。行動順が回ってきたら通常攻撃や、ターンごとに徐々に溜まっていく“AP”というポイントを消費して使うスキルで戦っていく。

 そして、本作の戦闘における最も重要で独特な要素が、“AFF”と呼ばれる魔力障壁の存在。AFFは敵・味方ともに使用するバリアのようなもので、攻撃を受けたときに自動発動し、HPへのダメージを大きく軽減する。バリアの残量は“MP”で示され、AFFが発動するたびに減っていく。本作におけるMPは、一般的なRPGのそれとは全く異なる意味をもつのだ。

 AFFは、MPが0になると解除されて“オーバーヒート”という状態になり、一定ターンが経過してMPが自動回復するまで、バリアのない無防備な状態になる。そのため、敵のAFFをいかに突き崩すかが、戦略の要となるわけだ。物理攻撃はAFFの影響を受けにくいがMPをあまり減らせず、魔法攻撃はAFFの影響を強く受けるがMPを大きく減らせるという特性があるので、この2つの使い分けが大きな意味をもつ。また、ステータスには通常の防御力のほかに、AFFの堅さを表す“抵抗”という値もある。HPは低いがMPや抵抗がやたら高い敵なども居るため、“AFFを無視して敢えて物理攻撃で押し切る”といった戦術の見極めも重要だ。

 また、敵は火、水、風という3つの属性に対して弱点や耐性をもち、弱点を突くと大ダメージを与えられる。ここまではRPGとしてよくある要素だが、本作では属性攻撃の方法が珍しい。本作にはたとえば火属性の“ファイア”といった特定属性の攻撃魔法などは存在せず、その代わりに“ZONE”と呼ばれる“場の属性”の概念がある。ZONEは戦闘中、一定ターンごとに火→水→風と順々に移り変わっていき、一部のスキルでこのZONEに応じた属性攻撃を行うことができる。

 そのため、敵の弱点をうまく突くためには、ZONEの移り変わりを読んで攻撃のタイミングを合わせる必要がある。ZONEが変化するタイミングは敵・味方の行動順一覧に併せて表示される仕組み。さらに、ZONEを強制的に変遷させるなど、ZONEを制御するスキルも用意されている。

 なお本作では、敵の弱点属性や残りHP・MPは敵の上にアイコンやゲージで表示され、攻撃時には与えるダメージ値の予測まで出る。さらに“アナライズ”コマンドを選択することで、ターンやAPを消費することなく、何度でも敵の全ステータスを確認することが可能。逆に言えば、『戦闘におけるあらゆる数値をいつでも把握できる』ことを前提とした戦闘バランスになっているということでもあり、やみくもに戦っていてはザコ戦でも苦労するだろう。敵のステータスから有効な戦術を選択し、場の流れを読み切った者に勝利は訪れるのだ。

ZONEに応じた属性攻撃ができる魔法“ブラスト”。弱点攻撃の基本だ
アナライズでは敵のステータスのほか、敵が使うスキルも確認可能

 そのほか、パーティ共通で溜まっていくポイント“FP”を消費して使う“フォーススキル”があったり、アイテムは戦闘前にキャラクターごとに4つまでセットした中からしか使えないなど、戦闘に深みをもたせるさまざまな要素がある。とはいえ、各種のシステムはゲームの進行に応じて徐々に解放されていき、チュートリアルも用意されている。自然と活用できるようになるので、煩雑に感じることはないだろう。

 むしろ、戦術がマッチすればどんどん大ダメージを叩き出せるので、戦闘のテンポはよい。さらに、戦闘後にはHPが自動で全快し、戦闘不能からも回復する。戦闘不能だと経験値が入らない、といったペナルティもないため、目の前の敵を全力で倒すことだけに集中できるというわけだ。

キャラカスタマイズは自由自在でやり直し可能。パーティ内での役割分担が重要

豊富に用意されたスキルから、スロットの制限内でセットするものを選ぶ

 このように戦略性の高い戦闘だが、その戦略の中心を担うのはやはり、豊富に用意されたスキルだ。本作のスキルは一部のキャラクター固有スキルを除いてパーティ共通で習得し、任意のスキルを好きなキャラクターにセットできる。

 ただし、スキルは各キャラクターごとに12個用意された“スロット”の範囲でセットする仕組みで、強力なスキルは複数のスロットを使用する。さらに、1つのスキルをセットできるのはパーティで1人だけという制限もあるため、各キャラクターが同時に利用できるスキルはかなり限られることになる。スキルの取捨選択や、キャラクターごとの役割分担が重要になるわけだ。

 スキルには、物理攻撃・魔法攻撃スキル、回復・補助スキル、ZONE制御スキル、フォーススキルといった、コマンドとして利用するもの。そして、セットするだけで効果がある“パーソナルスキル”が存在する。

 スキルの数は100以上あり、その効果はさまざまだ。とくにパーソナルスキルは、属性攻撃で弱点を突くとAPが増加する、補助スキルを使うと次の行動順が速くなる、アイテムの効果が2倍になるなど、キャラクターの戦闘スタイルを特徴づけるユニークなものが多数揃っている。セットできるスキル数に限りのある中で、コマンド系のスキルを増やして戦術の幅を広げるか、キャラクターの強化に注ぎ込むかなども悩み所であり、面白いところだ。

ステータス向上には武器が重要な役割をもつ。武器は短剣、長剣、大剣の種別と通常武器・特殊武器の違いでアイコン分けされている

 一方、キャラクターのステータスのカスタマイズにおいては、武器が重要な要素だ。本作では防具の概念はなく、武器によって攻撃力だけでなく、防御力や魔力、抵抗、反応と全ステータスが変化する。また武器によって戦闘時、ターンが回ってきたときに増加するAPの量が変わってくる。AP増加量が大きければスキルを使える機会が増えるので、気にしておきたいパラメーターだ。

 なお武器は、店で売られているほか、ダンジョンの宝箱などからも入手でき、ダンジョンで手に入る武器は“クリティカル率アップ”などのさまざまな特殊効果をもっている。ただし、ダンジョンで手に入る武器は、特殊効果と引き替えに性能が著しく低かったり、一部の性能のみが高くほかは低いなど、ピーキーで扱いにくいものが多い。安定した性能の店売り武器を使うか、探索で入手した武器を使いこなすかも、プレイヤーの戦略次第だ。

 また、補助的な装備品としてワッペンやバッジなどの“装飾品”もある。ステータスの変動効果は比較的少なめだが、戦闘開始時の初期APにプラス補正がかかるため、こちらもスキルを効率よく使うには欠かせない要素となっている。

アルターパーツによる武器の強化では、魔力、反応などから任意の強化項目にパーツを割り当てられる

 そのほかにも、“アルターパーツ”というアイテムで武器を強化できるなどカスタマイズの自由度は高い。その上で、『あらゆるカスタマイズは、ノーコストでリセットできる』のが最大のポイントだ。装備はもちろんだが、スキルのセットや武器の強化も、いくらでもやり直すことができる。敵の特性や新装備・スキルの入手に応じて、戦闘スタイルをがらっと変えることが可能なわけだ。

不要なザコ戦は“エンカウントキャンセル”でスキップ

 ゲームの進行は、基本的にはストーリーの進行に応じて新たなダンジョンが現れ、これを攻略していくというもの。エンカウント方式にはシンボルエンカウントを採用しているが、“エンカウントキャンセル”というシステムがあり、これをONにすると敵シンボルが半透明になって触れても戦闘が発生しなくなる。効率よく使用すれば、ザコ戦をとことん避けてダンジョンの奥まで進むことが可能だ。

エンカウントキャンセルにより、敵シンボルが半透明化し通り抜けられるようになる

 ただし、エンカウントキャンセルをONにしている間は“ENCゲージ”が上がり、一定量になると“ENC Lv”が上昇。ENC Lvが上昇するとザコ敵が強化される。最高レベルのEnc Lv 5になると、エンカウントキャンセルが行えなくなり、ザコ敵は下手をするとそのダンジョンのボスよりも強くなるほどに強化されてしまう。ENCゲージは敵と戦闘したり、ダンジョンに落ちている“ホワイトジェム”を拾うことで下がるので、上がり過ぎないように制御することも大切だ。

 そのほか、HP回復などの消費アイテムは街などの安全地帯でなら無料で支給される仕組みとなっていたり、街やダンジョン間の移動はワールドマップから地点を選ぶだけで可能など、煩雑になりがちな要素は大胆に省略されている。

イベントシーンも見どころ。血と涙の果てに辿り着く真実とは……

熱い台詞の数々は本作のシナリオの醍醐味
“王と姫”の一人“鉄姫”はユーカのかつての親友。彼女達の決断は……

 このように、RPGとしての戦略性と遊びやすさを追求した本作だが、シナリオにも力が入っており、長尺かつ密度の高いイベントシーンも見どころ。ある目的のため、自分以外の“王と姫”を倒す決意をするユーカだが、それは決して正義の戦いではなく、ときには民衆に慕われている君主や、かつての友とも戦わなければならない運命が待ち構えている。剣士として高い志をもつように見えるユーカがなぜそのような戦いを続けなければならないのか、さらにはマリスやミゾカの過去、そもそも“10人の王と姫”とは何者なのか……などなど、物語を進めていくたびに謎はどんどん深まっていく。

 これらの謎や伏線が、終盤で畳みかけるように収束していくさまは圧巻だ。なお、一部ストーリー上の時系列に矛盾を感じる場面があるかもしれないが、最後までプレイすればしっかりと答えは出るので安心してほしい。

 全体を貫くストーリーは重厚だが、会話には適度なユーモアが散りばめられており、ときには突然のネタ的展開に噴き出してしまうことも。セーブポイントでは“ミーティング”として進行に応じた会話シーンを楽しめたり、街やダンジョンでさまざまな物を調べたときにパーティメンバー三者三様の反応が見られるなど、キャラクターの魅力や意外な一面を感じられる場面も多い。

 主人公達が相対する“王と姫”達や旅先で出会う人々も、キャラが立っている濃い面々ばかり。お互いの意地や理想をぶつけ合う、丁々発止のやり取りも本作の醍醐味だ。主要キャラクターには立ち絵が用意されているほか、重要なイベントシーンでは1枚絵が表示され、物語を彩ってくれる。

“王と姫”の誰かに殺された妻子の仇を討つため旅する“クライン”と、その護衛を務める“シャミン”
どう見ても中に人が入っているが、ロボットだと言い張る“推理ロボ”。意外と手強い
ここぞというシーンに挿入されるイベント絵が物語を彩る

 プレイ時間は20〜30時間ほどで、フリーのRPGとしては長編の部類に入る。とはいえ、ひとつひとつのダンジョンは短めで、物語がテンポよく展開していくので飽きずに進められるだろう。移動速度が高速なのも相まって、筆者はプレイしていて作業感や退屈を覚えることが一瞬もなく、文字通り駆け抜けていくように熱中したままクリアまで到達できた。戦略やキャラクターカスタマイズなど、『考えて戦う』のが好きならぜひプレイしてみてほしいRPGだ。

ソフトウェア情報

「Princess Saviour」
【著作権者】
あなす 氏、スバルイチ 氏
【対応OS】
Windows 2000/XP/Vista/7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.12(13/04/12)

(中村 友次郎)