週末ゲーム

短編RPG「停滞少女」

止まった世界と少女アリスの物語

(12/02/10)

タイトル画面

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、短い時間でしっかり遊べる小粋なRPG「停滞少女」を紹介しよう。

時の止まった不思議な世界が舞台の短編RPG

アリスが訪れる世界の時は止まっている。闇人とアリス、敵となる“時の傷跡”だけが動いているアリスが訪れる世界の時は止まっている。闇人とアリス、敵となる“時の傷跡”だけが動いている

 「停滞少女」は、銀髪の少女“アリス”となって、時の止まった不思議な世界を体験するフィールド探索タイプの2D RPG。アリスが住む“時計の国”には人間がアリスのほかに時の管理者“ティスカ”しかおらず、あとは人の姿をしていない“闇人”という影のような者しかいない。ある日アリスが目覚めると、時計の国にある“大時計”の針がなくなってしまうという事件が起きていた。アリスは大時計を修理するティスカの手伝いをするために、針を探すため時の止まった5つの世界を探索しにいく……というストーリーだ。

 戦闘に敗北してもゲームオーバーにはならず、大時計に戻されて続行可能という親切設計で、冒険の舞台も比較的コンパクト。ステータスの上昇は戦闘で獲得できるポイントを3つのパラメーターへ任意に振り分けていく形式で、テンポよく遊びやすくなっている。

世界に点在する“碧の歯車”を発見し、破壊していく。これが探索の基本だ世界に点在する“碧の歯車”を発見し、破壊していく。これが探索の基本だ

戦闘は1対1。攻撃などのコマンドは画面右下の“EC”を消費する戦闘は1対1。攻撃などのコマンドは画面右下の“EC”を消費する

 アリスはパーティを組まずソロで行動し、戦闘も敵と1体1で戦う。敵となるモンスターは“時の傷痕”と呼ばれる存在で、通常戦闘はランダムエンカウントで発生。また、中ボス的存在として朱、碧、翠の3色の“歯車”で表される敵が点在している。朱の歯車は各世界のボスで、これを倒すと時計の針が入手でき、その世界はクリアとなる。ただし朱の歯車と戦うには、碧の歯車を全部破壊しなければならない。翠の歯車は破壊するとアイテムなどが入手できるので、発見したら破壊していくといい。

 戦闘は行動ゲージが溜まると行動できるアクティブタイムバトルで、行動はコマンド選択型。使用できるコマンドはあらかじめセットしておいた“スキル”によって変化する。最初から用意されているスキルは、通常攻撃にあたる“ショック”のほか“逃走”と“防御”の3つ。それ以外は、特定のスキルを一定回数以上使うなどの条件を満たすことで増えていく。

 また、多くのコマンドは実行するのに“EC”というポイントが必要。ECは1ターンに1ポイントずつ増えるため、ECを消費しない“防御”などのコマンドを選択することで最大4ポイントまで溜めることができる。強力なスキルを使うには2~4ポイントのECが必要だ。コマンドは5つまでセット可能なので、スキルの必要ECと効果をよく考えて選択しよう。なお、画面上には表示されないが、敵側にも同様にECの概念がある。

 さらに、回復や一時的なステータスアップなどの効果がある消費アイテムもコマンドの1枠にセットすることになる。強敵となる朱の歯車、碧の歯車は位置が固定なので、交戦前にコマンドのセットを変えるといいだろう。

スキルは最大で5つセット可能。これが戦闘中のコマンドとなるスキルは最大で5つセット可能。これが戦闘中のコマンドとなる

序盤の主力となる攻撃スキル“ブレイン・ブルー”。ECを2つ必要とする大技だ序盤の主力となる攻撃スキル“ブレイン・ブルー”。ECを2つ必要とする大技だ

戦闘は攻防タイミングの見極めが重要。成長方針や装備で戦闘スタイルも変化する

獲得したForceでステータスを上げる。どれを上げるかはプレイヤー次第獲得したForceでステータスを上げる。どれを上げるかはプレイヤー次第

 アリスのステータスはLP(耐久)、PSY(威力)、AGL(敏捷)の3種類。これらは戦闘に勝利すると得られる“Force”というポイントを振り分けてアップさせられる。LPはダメージに耐える体力、PSYはあらゆる攻撃の威力、AGLは行動の速さで、どのステータスを重視するかで戦闘の組み立ても変わってくる。

 ちなみに、筆者のお勧めはLP重視。LP回復のスキルはECが2ポイント必要なので、回復が間に合わずにやられることが多く、またスキルにはLPを消費して発動するものもあるからだ。LPは戦闘終了後や移動時にある程度回復するが、大ダメージを受けた場合は回復アイテムを使いたいので、戦闘では回復アイテムを消費したくないという都合もある。そういった事情もコミであえてPSY重視で戦ってみるのもアリだが、どうも戦闘に勝てないという場合はLP不足を疑ってみるといいだろう。

 攻防の要は、敵と自分のECをいかに見極めるかだ。強力な攻撃を出すには防御を選択してECを溜める必要があり、敵も同様に防御したあとは強い攻撃を出してくる可能性が高まる。敵の防御中に強力な攻撃を出してダメージを半減されないようにし、敵の強力な攻撃は確実に防御するように手の内を読むのが大切だ。

街には“闇人”と呼ばれる黒い者達しかいない。ここは種を植える花壇だ街には“闇人”と呼ばれる黒い者達しかいない。ここは種を植える花壇だ

時計の国でアリス以外に唯一の人間ティスカ。大時計の番人である彼は何者なのか?時計の国でアリス以外に唯一の人間ティスカ。大時計の番人である彼は何者なのか?

 回復アイテムはForceと引き替えに購入したり、街の花壇に種を植えて育て収穫できる。植えた種は戦闘で受けたダメージに応じて生長するので、収穫は容易だ。また、消費アイテムとは別に装備品も用意されており、1つだけ装備することが可能。ステータスアップや一定の確率でダメージ2倍といった補助的な効果があるので、これも戦闘の組み立ての一環として利用しよう。

 ストーリーは、一言で言うと少し恐いおとぎ話、となるだろうか。各世界の朱の歯車を破壊すると、断片的に少女の記憶のようなものが蘇っていくのだが、それが何なのか明確には示されない。時計の国でアリス以外に唯一の人間であるティスカとは、そして闇人とは何者なのか? なぜ世界の時は止まっているのか? アリスはなぜこの不思議な世界にいるのか?……謎は最後に解き明かされる。

 プレイ時間はゆっくり遊んでもおよそ半日といったところ。筆者は5時間ほどでクリアすることができた。ステータスをしっかり上げていけば、行き詰まることはまずないだろう。テンポよく進みながら世界の核心に迫っていくのはなかなか気持ちよく、短編小説のページをめくるような感触だった。描きたい世界、物語のために必要最小限のものを無駄なく揃え、ゲームとして構築した手腕はお見事。面白かった! という手応えを残してくれる。RPGをプレイしたいけど遊ぶ時間があまりないという人にもおすすめだ。

【著作権者】
うた 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.41

(藤井 宏幸)