杜のVR部

第70回

VR空間へ自由にウィンドウを展開できる仮想デスクトップアプリ「Virtual Desktop」

デュアルモニター使いの筆者も大満足。VRは物理モニターを凌駕する

 映画『マイノリティ・レポート』や『アイアンマン』に登場するような、複数のモニターが目の前に展開する光景。一度はそんな環境の実現を望んだことがあるのではないだろうか。現実空間への投影こそまだ先の話だが、VRではすでにそれが実現しつつある。

 今回はOculus Rift、HTC Vive向けユーティリティソフト「Virtual Desktop」を紹介しよう。

「Virtual Desktop」公式トレイラー

目の前のVR空間がデスクトップに

 このソフトは、VRの中にPCのデスクトップを展開するというもの。起動してVRヘッドマウントディスプレイを装着すると、目の前には数十インチの広大な画面が表示されている。

目の前には広々とデスクトップが広がる

 内容はモニターに映っているものと同じ。通常のデスクトップと同じようにマウスとキーボードで操作することが可能だ。

 設定を色々変更し好みの画面を作ることができるのも特徴。画面の広さである視野角は15度から360度まで変更できる。また、自分と画面の距離も変えることができる。

視野角や距離、また今見ている画面をモニターにミラーするかどうかなど様々な設定変更が可能

 さらに、マルチモニターも簡単に実現してしまう。2枚の画面を並べてみると、普段モニターを2つ並べるデュアルモニターの環境をこよなく愛している筆者も満足の、広大な表示領域が実現している。

もっとも気になる“文字の鮮明さ”はいかに

 VR内でのこうした表示には夢を感じるが、体験前に気になる点が1つだけあった。それは“文字の鮮明さ”だ。「Virtual Desktop」は、これまでも開発者版であるOculus Rift DK2向けに提供されていた。そのバージョンを筆者も試したが、片目960×1,080という解像度ではまだまだ実用的ではないというのが感想だった。一方、今回リリースされたOculus Rift製品版およびHTC Vive向けのバージョンでは、片目の解像度は1,080×1,200と改善したものの、文字がどの程度くっきり見えるのかが問題となる。

 実際に体験してみると、ハードウェア側の高解像度化が数字以上にVR全体を綺麗に表現していること、そしてソフトウェア側でもおそらくテクスチャの改善等が行われたことにより、いよいよ実用的なレベルにまで達していることが確認できた。

 たとえば、この記事をVRで書くことも、YouTubeを見ながら友人とメッセージを送り合うことも、まったく問題なくできた。ただし、距離を近付けすぎたり、視野角を広げすぎるとぼやけてくるため、常に鮮明というわけではないことは申し添えておきたい。

VRならでは。360度コンテンツの再生は全天球で

 そして、このアプリではYouTubeなどの360度動画を再生すると全天球で楽しむことができる。メニューから[VIDEO]を選ぶと、PC内にある全天球動画の再生が可能。YouTubeの動画はURLを入れることにより、MP4形式でダウンロードしてから再生を行う。通常はスマホでしか楽しめないYouTubeの360度動画を、PCの高解像度かつ高フレームレートという快適な環境で楽しめる。

 なお、同様に360度の静止画もPCに保存されているものであれば全天球で再生可能だ。

360度動画の再生。PCで全天球動画を再生するためにはソフトが必要だったが、この「Virtual Desktop」があれば問題ない
360度動画の再生設定。YouTubeの動画の場合、再生したい動画のURLをコピーし[Paste Url]を押すとダウンロードがスタート、自動的に再生が始まる
360度静止画も同様だ

 最後にこのアプリの課題に言及しておきたい。最大の課題は“操作”だ。VRHMD装着時は手元が見えないため、手探りでマウスとキーボードを操作しなければならない。マウスは一度見つけてしまえばどこかへいくことはないが、キーボードはブラインドタッチが必要となる。

 しかし、その不便さをもってしても、このアプリの体験は『モニターよりも、VRでの表示がいい』と思わせるに足るものだった。今後、VRならではの操作法が模索されるのか、そのときこそ我々が物理モニターから離れ始めるときなのかもしれない。今後のアップデートが非常に楽しみだ。

ソフトウェア情報

「Virtual Desktop」
【著作権者】
Guy Godin
【対応OS】
Windows 8/8.1/10
【対応ハードウェア】
Oculus Rift製品版、HTC Vive
【ソフト種別】
ダウンロード販売(1,480円)
【バージョン】
‐(16/03/31)

評価PCスペック(参考)

マウスコンピューター G-Tune NEXTGEAR-MICRO im550PA6-SP2
【CPU】
インテル Core i7-4790K プロセッサー(4コア/4.00GHz/TB時最大4.40GHz/8MB スマートキャッシュ/HT対応)
【メモリ】
16GB PC3-12800 (8GB×2/デュアルチャネル)
【グラフィックボード】
AMD Radeon R9 Fury X(4GB)
【fps】
90fps

(もぐらゲームス:すんくぼ)