杜のVR部

第67回

VRが盛り上がるGDC 2016からその熱気をレポート(前編)

Oculus Rift、PlayStation VR、HTC Viveでどんなゲームが体験できるようになるのか

 3月14日から18日にかけてアメリカ・サンフランシスコで開催された世界最大のゲーム開発者会議GDC(Game Developers Conference )2016。開発ノウハウ等を共有するセッションと、実際にゲームを遊んだり周辺機器が展示されるエキスポの2パートで構成されている。

 昨年まではGDCのセッションの中でVRの話題が多く扱われ、発表なども行われていたが、VRの盛り上がりに合わせて今年からはVRDC(Virtual Reality Developers Conference)というイベントとして併催されることとなった。

GDC 2016
VRの講演の数は非常に多く、ゲームにとどまらず映像制作や、VRの心理的影響などさまざまなテーマで講演が行われた
Epic Gamesがスポンサーとなり設置されたVRラウンジ

 また、エキスポ会場ではOculusやソニー・コンピュータエンタテインメントといった主要なプレイヤーのブースでVRの体験に長蛇の列ができるだけでなく、VRソフトのみを展示する“VRラウンジ”コーナーや、会場のいたるところでVRに関連する周辺機器やミドルウェアの展示が行われていた。

 世界中のメディアが集まるということもあり、VRに関するプレス向けのイベントも多く開催された。

 昨年もレポートをお届けしたが、今年のVRの扱われ方は果たしてどの程度変化したのか。熱気の内実はどのようなものなのか。2回に分けてお送りしたい。

 前編ではいよいよ発売が近付いているOculus Rift、PlayStation VR、HTC Viveで体験できたタイトルについて紹介し、次回の後編では周辺機器など関連技術を紹介したい。

発売に向けた配信タイトルの体験が中心に

 昨年とうって代わり、今年のGDCでは各社とも“いずれ配信されるタイトル”を中心にデモ展示が行われていた。

 それもそのはず、昨年のGDCの時点とは状況が全く異なる。簡単に振り返ってみると、PC向けのOculus Riftは昨年、製品版プロトタイプしか発表されていなかったが、今年は3月28日に製品版の出荷を控えている。また、同じくPC向けのHTC Viveは昨年、ちょうどGDCに合わせてその存在が発表されたばかりでデバイスすら謎に包まれている状況だったが、今年はすでに製品版の予約を開始し4月頭には出荷される。PS4向けのPlayStation VRは、昨年のGDCで製品版プロトタイプを発表し、今年は順当に製品版の価格や発売時期を10月と発表した。

エキスポ会場で最大級の面積を占めていたOculusブース
プレイする様子も積極的にディスプレイしていたソニー・コンピュータエンタテインメントブース

 どのデバイスも製品版発売に向けて、“これまでのゲームと何が違うのか”を感じさせられる体験だった。

ヘッドトラッキングを中心に、これまでのゲームジャンルを再設計したOculus Rift向けタイトル群

 Oculus Riftは、3月28日の出荷に合わせて30のローンチタイトル(明らかになっているのはゲームのみ)と今後配信予定のタイトルが発表された。

 第40回で紹介した「EVE: Valkyrie」や「Lucky's Tale」、「AirMech: Command」などすでに発表されていたタイトルに加えて、テンポ良く敵に憑依するFPS「Damaged Core」や無重力の中をさまようアドベンチャー「ADR1FT」、『遊戯王』のようなカードゲーム「Dragon Front」、鷲になってパリの町を飛び抜ける「Eagle Flight」、日本のコロプラが開発したパズルゲーム「Fly to KUMA」やテニスゲーム「VR Tennis Online」など多様なラインナップが揃っていることが明らかになった。発表された全タイトルはこちら

美麗なグラフィックに息を呑むスペースSTG「EVE: Valkyrie」はオンラインマルチ対戦
キツネのラッキーと冒険を繰り広げる3Dアクション「Lucky's Tale」
戦闘機に変形できるロボットを駆使する対戦ストラテジーゲーム「AirMech: Command」
敵にテンポ良く憑依していく新感覚のFPS「Damaged Core」
事故後の宇宙ステーションをさまようアドベンチャー「ADR1FT」。こちらもグラフィックが美しい
カードからキャラクターが飛び出て戦う『遊戯王』のようなカードゲーム「Dragon Front」
鷲になってパリの町を飛び抜ける「Eagle Flight」は3人対3人のチーム対戦が熱い
日本のコロプラが開発したパズルゲーム「Fly to KUMA」。くまがかわいい
テニスゲーム「VR Tennis Online」。対戦型なので熱くなること間違いなし。サーブの時に玉を追って上を見上げる動きが実在感を高める

 どのゲームもOculus Rift製品版に付属するXbox Oneコントローラーで体験するものになっている。360度を見渡すことのできるVRヘッドマウントディスプレイの最も基本的な特徴を活かして、各ジャンルのゲームをどのように再設計するかという点に挑んでいるように感じられた。

 Oculus Touch向けなどの手を動かすコンテンツと比べると実在感が浅いのは確かだが、“なかなかやめられないゲームとしての面白さ”を感じられる作品は非常に多い。

プレス向けイベントの会場で体験できた、2人対2人で撃ち合うOculus Touch向けFPS「Dead & Buried」。身を隠しながら銃を構えて狙撃し合うのが熱い

みんなで遊べる非対称なゲームや手を動かすものも注目のPlayStation VR

 10月発売のPlayStation VRもゲームの多くはOculus Riftと同じ発想の、既存のゲームジャンルをVRでどのように実現するか模索しているものが多い。これまでモニターでプレイしていたタイトルをVRでもプレイできるようになるのは、一つ一つのゲームの楽しみ方がより深くなるという点において非常に魅力的だ。筆者が今回プレイしたのは、バイオレンス・アクション「Thumper」やパズルゲーム「GNOG」、戦車を動かして戦うFPS「Battlezone」。いずれも通常のモニターでも遊べるものだが、VRに対応することで更にのめり込むことができた。

文化庁メディア芸術祭などでも注目されているリズムバイオレンスゲーム「Thumper」。鳴り響くリズムとめまぐるしく変化する光が、ゲームを遊びから体験そのものに昇華させる
ユニークなデザインのパズルゲーム「GNOG」(トレイラーはPS4版)。目の前に広がるステージのギミックの色々なところをいじってパズルを解いていく。さらに表と裏があるのでくるくる回していると、ついついミニチュアをいじっているような気分に
戦車を駆り、襲い来る敵軍を撃退する「Battlezone」

 また、PlayStation VRは他のVRHMDにない特徴としてソーシャルスクリーンという機能を備えている。これは、VRHMDを着けているプレイヤーの視界をテレビ等に映して回りの人も楽しめる機能だ。さらに、第36回でも紹介した「The Playroom VR」は、PlayStation VRを被ったプレイヤーとモニターを見ているプレイヤーで異なる役割があり、協力したり、対戦するという非対称デザインのゲームだ。「The Playroom VR」はPlayStation VR購入者は無料でダウンロードできる。

「The Playroom VR」公式トレイラー。複数人で楽しめるミニゲームが数多く収録されている

 他にも「Until Dawn:Rush of Blood」など、手の動きをトラッキングするPlayStation Moveコントローラー(別売)を使用したコンテンツは、より一層実在感の高い体験が楽しめる。

ホラーゲーム「Until Dawn」の世界観をVRで体験するレールシューター×ホラー「Until Dawn: Rush of Blood」
映画の中のような体験を詰め合わせた「PlayStation VR Worlds」

ルームスケール&手の動きを活かした、さらに踏み込んだVRゲームが登場しつつあるHTC Vive

 HTCとValveが共同開発しているHTC Viveは、Oculus RiftやPlayStation VRと異なり、手を動かすコントローラーが標準付属、さらに最大3m×4mを自由に死角なく動くことのできるルームスケールが特徴だ。そのため、HTC Vive向けのゲームはこの“手と足を動かせる”特徴をフル活用したものが多い。

 筆者が体験したValve社の公式コンテンツ「The Lab」は、HTC Viveの特徴をフルに活用したコンテンツを詰め合わせた体験だった。弓矢を引いて城門を守るゲーム、巨大な玉を掴んで飛ばして荷物の山を崩していくゲーム、手に掴んだドローンを動かして弾幕をかわすシューティングゲームなど、これまでのゲームのジャンルを“手足を動かす”要素を使っていかに再設計するかに挑んでいる。

HTC Vive製品版
「The Lab」のアイコン