杜のVR部

第56回

国外ではOculus Rift並みに注目されているVRヘッドセット“HTC Vive”体験レポート

2016年4月発売の製品版直前のプロトタイプを体験!

 2016年がついに幕を開けた。2016年前半は、製品版の高性能なVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)3機種が相次いで発売される。OculusのRift、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPlayStation VR、そしてHTCのViveだ。いずれも存分にVRの世界を楽しむことができるデバイスとして登場する。発売に向けて価格、予約開始時期などの情報が徐々に発表されるので注目したい。

 そして2016年開始早々に開催されたのが、ラスベガスで年1回開かれる世界最大規模の家電見本市CESだ。Oculusやソニーによる展示だけでなく、周辺機器や360度全天球での撮影ができるカメラが広大な会場のさまざまなブースで展示。また、合わせて発表も相次いだ。Oculusは1月6日より、Oculus Rift製品版の予約受付を開始(599ドル、日本へは送料等込みで94,600円)したほか、HTCはViveの製品版に近い新型プロトタイプVive Preを発表した。

 またHTCは10日、Vive製品版の予約を2月29日から開始することを明らかにしている。筆者はHTCがCESにて設けた招待制のブースにて、Vive Preをいち早く体験してきた。

CESに合わせて公開されたVive Preのティザー映像

 今回は、HTC ViveとはどのようなVRHMDなのか、Vive Preの体験レポートをお届けしたい。

VRヘッドマウントディスプレイとしての性能はOculus Riftと同程度

 Vive Preのヘッドマウントディスプレイとしての性能は、解像度が有機ELによる1,080×1,200のパネルが2枚で実質2K相当、描画の滑らかさを表すフレームレートが90fpsと、Oculus Rift製品版と同程度だ。実際の体験もあまり違いを感じるものではない。視覚だけでも十分、まるでその世界にいるかのような実在感のある体験が可能になっている。

Vive Preの外見。プラスチックの筐体はすべすべだ

 外見は開発者向けということもあり、幾分無骨だ。付け心地は前世代機に比べると改善されたものの、まだ若干の重さを感じるというのが実際のところだ。

装着したところ

注目が集まる第一の秘訣“ルームスケール”

 では、HTC Viveのユニークな点は何か。大きく挙げると2つの特徴がある。その1つが“Lighthouse”と呼ばれるポジション・トラッキングシステムで実現する“ルームスケール”のVR体験だ。ベースステーションと呼ばれる2つの装置をプレイ空間の角2カ所に設置することで、最大5m×4mのプレイ空間を実現する。この広さは部屋の広さに匹敵し、この空間内をプレイヤーは自由自在に動くことができることから“ルームスケール”のVR体験と呼ばれている。非常に高精度なトラッキングなため、寝そべる、歩くといった動きも360度自由自在に可能だ。まさにVRの中を自由に動くことのできる体験と言えよう。

Lighthouseのための装置。部屋の中の2カ所に設置する

 筆者は「the Blue」というアプリで、海の中の水没船の甲板にいて、近くを通り掛かる魚に近付いて見ることができるという体験をした。もちろん床に座りながら眺めることも、寝そべりながら上を見ることも可能だ。デモの最後には巨大なシロナガスクジラが近付いてきて、目を合わせることができた。近付いて海の生き物を見るという、水族館ではできないことがVRで可能になっていることに感動してしまった。

座りながら魚を眺めてみた

 動き回れるとはいえ、VRを体験する際に接続しているケーブルが邪魔になってしまうのは、Oculus Rift、PlayStation VRと同様、第一世代のハイエンドVRHMDとしてはどうにも解決できなかった課題だ(Gear VRはポジショントラッキング機能がないためここではミドルレンジに位置付け、除外している)。

 安全性という面ではケーブルこそなくならなかったものの、Viveは意識した取り組みを行っている。プレイ範囲はユーザーがプレイ時に自由に設定することができ、プレイ中に境界線に近付いてしまった際は、青白い格子状の壁が表示され、これ以上先には進めないことを教えてくれる。

 また、Vive Preから新たに導入されたChaperoneシステムでは、Vive Preの前面に搭載された小型カメラを使用し、人間や物体の輪郭を見ることができる。この仕組みが非常にユニークで、表情などを見ることはできないが、輪郭がくっきりと表示されるため、Chaperoneモードに入った際は、椅子に座ったり、飲み物を飲むといった行動がVR内にいながらにして可能になる。

スティック状コントローラーでの操作はまずまず

スティック状のSteam VRコントローラー

 このViveのコントローラーは専用のSteam VRコントローラーになる。スティック状のコントローラーだ。前世代の物に比べかなり軽く、そして操作性も向上した。このコントローラーも当然Lighthouseのトラッキングにより、非常に正確に手の位置をトラッキングすることが可能だ。手を動かすとVR内の手もその通り動く。人差し指の裏にあるトリガーボタンで、手を伸ばして物を掴んだりといったかなり直感的な動きが可能になる。

 他のVRHMD用のコントローラーとの比較で言えば、PlayStation VRのPlayStation Moveコントローラーとスティック状という点で共通する。精度はより上という印象だ。また、Oculus Rift専用のOculus Touchコントローラーとの比較では、やはり体験の感想として“棒を握っている”感覚はどうしても付随するため、Oculus Touchの“現実の手と錯覚する”というレベルには至らないというところだ。

 特に、今回体験できたコンテンツのうち、仕事のシミュレーションをするという「Job Simulator」は、Oculus Touch版と全く同じ内容なこともあり、Oculus Touchとの差は明らかだという印象を持った。

第二の秘訣“Steam”

 Viveは台湾のスマートフォンのメーカーであるHTCと、全世界に1億人以上のユーザーを有する世界最大のPCゲームプラットフォームSteamを運営するValveの共同で開発されている。ValveはSteamVRというVRのエコシステムを作り上げており、Steamのプラットフォーム上で開発者はVRゲームを配信し、プレイヤーはダウンロードとプレイが可能。Viveはその1号機ということになる。

 HTC Viveが特に開発者を中心に注目を集めているのは、このSteamの後ろ盾があるというのが非常に大きい。1億人以上のゲーマーが集まっているところにVRゲームを配信できるわけだ。また、SteamはOpenVRと称し、APIをすべて無償公開している点も大きい。周辺機器メーカーなどはOpenVRを参考に、SteamVRに対応した周辺機器を開発することができる。

 今回のデモでは、製品版が発売されたときにリリースされるようなソフトを体験することはできなかったが、どのようなコンテンツがラインナップに揃うのかも注目したいところだ。