杜のVR部

第39回

日本のVRコンテンツの種はここにあり!“G-Tune × AMD OcuFes 2015夏”イベントレポート

VRならではのコンテンツなどキラリと光るコンテンツを一挙紹介

 8月24日、東京・秋葉原にあるベルサール秋葉原にてVRデバイス向けコンテンツの展示会“G-Tune × AMD OcuFes 2015夏”が開催された。

 今回の記事では、このOcuFesで筆者が見つけたキラリと光るコンテンツをピックアップして紹介しよう。

OcuFes史上最大規模の出展数、平日昼にも関わらず大盛況

鳥居のような装置を体験者の前に置いて異彩を放っていたホラーコンテンツ「VRNSystem」。完全に遮音されたプレイヤーが、部屋で怖い話を聞くというもの。話の流れに従って不可解な現象が起きる

 OcuFesは、Oculus Riftの開発者コミュニティであるNPO、Oculus Festival in JapanがVRの普及を目指して主催する展示イベントで、日本全国で開催されてきた。今回のOcuFesは、GPUメーカーであるAMDとPCブランドのG-Tuneをスポンサーに迎え、半年に一回開催される“アキバ大好き祭り”との同時開催となった。

 これまで開催されたOcuFesの中では最大規模となり、日本でとくに個人・中小のチームで開発されているコンテンツが50点以上展示され、無料で体験できるようになっていた。主催の発表によると、月曜日の12時から18時という平日昼間の開催にも関わらず、1,200人以上が来場した。

 展示されていたコンテンツは、スマホで楽しめるVRデバイスやGear VRで遊べるものから、赤外線センサーのLEAP MotionといったOculus Riftと併せてよく使われる入力デバイス、特製の椅子や鳥居、腹筋ローラーといった機材を組み合わせたものまで出展者の創意工夫が見られるものが多く、日本のVRコンテンツの特色とされている、さまざまな周辺機器を使った展示が目立っていた。

腹筋ローラーを使って、VRで女の子に励ましてもらいながら腹筋ができる「VR腹筋ローラー」

 また、Oculus Rift製品版などの発売が年内から来年上旬に迫っていることもあり、本格的なコンテンツとして体験の質をさらに向上させようとしているものもあった。

 さっそく気になったコンテンツを紹介していこう。

身体を動かすゲームとVRの相性の良さ

 Oculus Riftの機能であるポジション・トラッキングを上手く使った展示が、(株)トリプルアイズVRサークルのVRゲーム「スーパーマシュマロcatch!!」だ。前方から色々な方向に飛んでくるマシュマロを頭でキャッチする。通常の白いマシュマロに紛れて飛んでくる金色のマシュマロは高得点で、緑色のマシュマロは減点といった具合にゲーム性も組み込まれている。前後左右に身体を大きく動かしたり、ジャンプしながらマシュマロを集めていこう。

大量に飛んでくるマシュマロをキャッチする「スーパーマシュマロcatch!!」

 また、「スーパーマシュマロcatch!!」の横で展示されていたサークル・フレームシンセシスの「オーバーストリーム」も、ポジショントラッキングを100%活用したゲームだ。イカダに乗って川を下りつつ、身体を動かしたり、しゃがんだりしながらコインを集めていく。しゃがむ動きが特徴的なコンテンツだ。

川下りゲーム「オーバーストリーム」も全身を動かすコンテンツ

 この2つのVRコンテンツは、身体を動かす純粋な楽しさが際立っていた。筆者はこれまで数々のVRコンテンツを経験してきたが、息が上がるほど動く体験は初めてだ。ちなみに、PS4向けのVRヘッドマウントディスプレイ“Project Morpheus”向けに開発が進められている「Headmaster」という、飛んでくるボールを頭でヘディングするゲームがある。これもまた身体を動かすもので、VRと身体を動かすゲームは相性がいい。

 なお、センサーのトラッキング範囲には限界があることと回転するとケーブルが絡まってしまうことから、物理的に身体を動かす範囲が狭まってしまうのだが、2つのコンテンツはそれぞれ“マシュマロを飛ばす範囲を限定”“川幅を広げない”ことによって、ゲーム内でトラッキングの制限を感じさせないデザインを行っていた点も秀逸だった。

ハイレゾと震動により、全身で感じるVR

 360度の実写動画を手掛ける(株)HOME360は、360度動画に加え、ハイレゾの音声と振動を組み合わせた「かんじるVR」を展示。椅子に寝そべり、足を木箱の上に載せて、全身で花火大会を体験することができる。360度撮影ではあるが、基本的には花火が上がる前方向のみを見ていればよく、音に合わせて上がる花火を追って上を向くだけなので頭を色々な方向に向ける必要もない。ある意味のんびりとくつろぎながら花火大会を楽しめるのが印象的だ。

椅子と木箱が震動する。非常にのんびりとリラックスしながら花火大会の会場にトリップできるコンテンツだ

シンプルな操作とシンプルだからこその怖さ

 Oculus Rift DK1の頃から継続して開発を行っているirondrillは、Gear VR版のホラーゲーム「夜の木造校舎を歩く」を展示。タイトルの通り“ゆっくりと歩くだけ”という非常にシンプルなゲームなのだが、教室の中を怯えながら歩いていくと……。Gear VRの側面にあるタッチパネルを使い、タップをすると向いている方向にゆっくり歩くという非常に簡単な操作で遊ぶことができる。Oculus Rift向け及びGear VR向けに販売を目指して開発中だ。

PC版も展示。昼間が舞台の「木造校舎を歩く」はホラーではなくノスタルジーがテーマだ。Gear VR版はデバイスのシンプルさがゲーム操作のシンプルさと融合している

ジョッキーが繰り広げるVR音楽体験

 スピーカーからダンスミュージックを流して会場でひときわ目立っていたのが、Psychic VR Labの展示していた「Spatial Jockey」だ。VJ(ビデオジョッキー)のように、体験者のVR体験をスイッチで次々と変えていく。魚が水の中を泳いでいると思ったら、荒野を突き抜ける道路が現れ、そして無機的な立体が現れる。そうした複数のシーンが音楽に合わせて切り替わり、ミックスされていく……。

 音楽を聞いてイメージを浮かべるところから、VRの没入感を活かし、音楽に合わせて体験そのものを変えていくことに挑戦しているという。これまで紹介してきた「Surge」や「NUREN」など音楽に合わせて展開するVRコンテンツはあったものの、ジョッキーがその時々の音楽に合わせてコンテンツの内容そのものを変化させていくというのは、音楽・ジョッキー・そして体験者の間を繋ぐ、これまでになかった新しい音楽体験だ。

ジョッキーのゴッドスコーピオン氏。この姿が未来のクラブのスタンダードになる日が来るかもしれない

漫画の世界観をVRで再現する試み

 「蟲姫」は、外薗昌也氏原作の漫画『蟲姫』のプロモーション用に制作されたフル3DCGのVR映像だ。漫画のテレビCMで、印象的なコマを映しながら、そのシーンのイメージを描いた演出は見たことがある人もいるかもしれないが、そのVR版と言うとわかりやすいだろう。コマが現れセリフが聞こえる中、同作品の中でも見開き2ページを使って表現されているような、とくに印象的なシーンがフル3DCGで再現されている。

 CGは見事で、街に大量の蟲が飛来するシーンはリアルそのもの。雨粒が水たまりに落ちたときの波紋に至るまで、細くレンダリングされている。プロモーション用に制作されたとのことだが、漫画の読者がその世界観をより深く楽しむためにもVRが活かせることを示している。

漫画の世界観をVRで体験するコンテンツは意外と少ないが、世界観の拡張という意味ではアニメ以上の効果があると感じた

VRでドローン操縦の擬似体験

 実写の360度映像の中でジャンプができる「Hiyoshi Jump」等を開発した伊藤周氏の新作「ドローンVR」は、ドローンの操縦体験ができるというもの。手にしたドローンのリモコン(本物)を操作すると、VR内のドローンを本物さながらに操縦できる。ドローンをこれから使ってみようという人の練習用にもピッタリのコンテンツだ。

本物のドローンのリモコンを持って操縦
ドローンの操作は意外と難しく、慣れるまでは上下にふらふら安定しない。こうした操作の難しさを実際のドローンを購入する前に体験できるというわけだ

スマホ向けのVRデバイス・コンテンツの展示も

 OcuFesの会場では、スマートフォンを装着して気軽に楽しめるスマホVR関連の展示も多くされていた。東京・大崎の地域プロジェクト“電脳かふぇ”はVRをテーマにした町おこしを行っている。各企業が制作したスマホ向けのVRデバイスの販売や、コンテンツの紹介が行われていた。

電脳かふぇのブースで展示されていた、ヘッドバンド付きで手を放せるスマホ向けVRデバイス“DiVR”。さまざまな大きさのスマホを装着できる
ブースには大崎のゆるキャラ“大崎一番太郎”が

 以上、筆者が気になったコンテンツを紹介したが、なにせ展示数が50以上。今回の記事では伝えきれなかった展示にも、さまざまな趣向を凝らしたものが多くあったことは述べておきたい。

 製品版VRデバイスの登場に向けて、家庭で楽しめるコンテンツとして考えるとまだまだこれからなものも多く、アイデアが光るものが多いという印象だ。しかし、海外の同様な展示会と比べると“VRらしさ”をフル活用しようとするコンテンツが多いことは日本の特色であり、こうしたアイデアの種がVRのキーコンテンツに繋がることは十分あると筆者は考えている。また、スペースをとって身体を大きく動かすものや、大型の機材を使うものなど展示向けのコンテンツも充実しており、アトラクションとして非常に楽しめるものも多い。

 アイデアはあるものの、海外のように開発資金を確保しコンテンツを制作するチームはまだ少ないというのが日本の中小規模のVR開発の現状であり、直面している課題でもある。OcuFesに出展されていたコンテンツや出展していた開発チームが今後どのように展開していくのか楽しみにしたいところだ。