杜のVR部

第23回

Oculusの創業者パルマー・ラッキーを唸らせた日本発のVRコンテンツたち

Uniteで展示されたジェットコースターからお色気まで、独創的なコンテンツを紹介

 これまでこの連載では国内外のOculus Riftで楽しめるコンテンツを中心に取り上げてきた。そして第17回では、アメリカで開催されたGDCで展示されていた最先端のVRを紹介した。

 今回は、4月13、14日の2日間、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン主催により東京で開催されたゲーム開発者のためのイベント“Unite 2015 Tokyo”で展示されていた日本のVRコンテンツを紹介したい。本イベントにはプラチナ協賛をしたOculus VR社の創業者パルマー・ラッキー氏が参加し、基調講演を行ったほか、会場で展示されていたVRコンテンツを体験してまわっていた。

1,000人以上の開発者が集まったUnite 2015 Tokyo
基調講演を行うパルマー・ラッキー氏

 ラッキー氏は昨年のUniteでも来日し、日本のVRコンテンツを『独創的』と高く評価していた。ラッキー氏は日本のコンテンツについて、移植ではなくVRのために作られたコンテンツが多く、開発者がVRを使って何ができるか頭を捻っていることを評価。そして、ゲームコントローラーにとらわれずに、さまざまな周辺機器を使ってVRの体験を実現しようとしていることがポイントだとしている。筆者がVRコンテンツを堪能したラッキー氏と話した際には、興奮して『日本のコンテンツは本当にクレイジーだ』と語っていたのが印象的だった。

 筆者も会場内にあるコンテンツを体験したが、海外のコンテンツとの違いは大きいと感じた。それでは、どういうコンテンツが展示されていたのか例として4つをピックアップして紹介していこう。

本物のジェットコースターに限りなく近付いた「Urban Coaster HARD MODE」

 今回体験した中で、最も印象的かつ、没入感が高かったコンテンツがこの「Urban Coaster HARD MODE」だ。このコンテンツのベースとなっているのは第10回で紹介した「UnityCoaster2-UrbanCoaster-」(iWorks氏制作)だ。しかしタイトルにあるようにハードモードとなっている。

「Urban Coaster HARD MODE」

 まずは、どうハードになったか説明しよう。大きな違いは体験する時の周辺機器にある。もちろんコースにも捻りやジャンプ、桜の中を駆け抜けるなどの追加要素はあるが、ハードモードの所以はそこではない。通常版ではPCの前に座って体験するだけだったコンテンツが周辺機器との組み合わせにより豹変した。

 まず、プレイヤーは椅子ではなく、ロープでぶら下がっているブランコのような装置に座る。ブランコに腰掛けると、足は地面につかなくなる。「Urban Coaster」で採用されているジェットコースターはぶら下がり型なので、プレイヤーはまさに同じ状態。横のバーの代わりにロープを掴むことになるが、その状況も見事に再現されていることになる。

「Urban Coaster HARD MODE」の体験装置。大掛かりだが、ひとつひとつの装置は高価ではないところもポイントだ

 このコンテンツの周辺機器は、それだけではない。VR内のジェットコースターの速度に同期するよう調整されていて風を吹き付けてくる送風機、水蒸気の中を駆け抜ける時に吹き付けられる霧吹き、大ジャンプした着地時に装置の高さを変えることによって“ガタン”という衝撃の再現、など細部に至るまで本物のジェットコースターに乗っている状況を再現している。

 その結果何が起こるか。筆者も体験し、体験した多くの人が口を揃えて言うのが『身体が揺れて、傾いた』という感想だ。しかし、係員は一切装置に触れていない。それだけでなく、体験者自身の身体は傾いてさえいない(筆者の体験動画を参考にしていただきたい)。この感想が意味することは、あまりに没入感が高いが故に我々の感覚がVR空間内で見事に騙されたということだ。

 本コンテンツの開発者であるiWorks氏とともにこの企画をプロデュースしたTeam Hashilus(後述)の藤山晃太郎氏は、『PCで体験した人にこそ、ぜひやってもらいたい』とコメント。装置を用意することでどれだけ没入感が増すのか、多くの示唆に富んだVRコンテンツと言える。

「Urban Coaster HARD MODE」体験動画
左のモニターには体験している光景が映し出されている。ジャンプの瞬間以外にブランコには一切誰も手を触れていないことに注目いただきたい。信じられないかもしれないが、体験者は身体が傾いていると思っている

対戦もできる乗馬レース「Hashilus」

 この「Hashilus」は1年ほど前に開発されて以来、日本各地のイベントで展示、常設もされているものだ。日本のVRコンテンツを代表する存在でもあるので、これを機に紹介しておきたい。

 「Hashilus」は開発者など数名で結成された“Team Hashilus”が開発した。特殊な周辺機器、といってもどこかで見たことがあるであろう乗馬タイプの健康器具(改造済み)にまたがり、乗馬レースができるというコンテンツ。鞍の上にある手綱のような輪っかを振ることでスピードが上がり、地形や速度に応じた馬の動きをリアルに感じることができる。また、「Urban Coaster HARD MODE」と同様に、送風機や霧吹きが使用される。

 そして、この「Hashilus」は同一ネットワークにつないだ他のプレイヤーとの対戦ができるようになっている。他のイベントでは4人対戦も行われているが、Uniteでは2名ということで、隣のプレイヤーとの乗馬レースが楽しめた。

このように馬にまたがっているような状態が没入感を増す
レース中はVRの中だということも忘れ、馬をいかに速く走らせるかに無我夢中だ

 また、2日目の会場では同じ機材を使って、レースではなく巨大生物のいる世界での冒険を体験できる「鳥獣ライド」が体験できた。

鳥獣ライドを楽しむパルマー・ラッキー氏
「Hashilus」体験動画
Uniteでは2人対戦だった「Hashilus」。中央のモニターに第三者視点での状況が映し出されていることにも注目。わずか2分にも満たないレースだが、白熱だ。筆者は日頃の運動不足がたたって、途中で疲れてしまい大差で負けてしまった……

ステッキを振って魔法陣を描いて戦う近未来アートバトル「BREETSCHLAG VR」

 アニメの制作などを行う(株)動画工房のブースでは、同社のオリジナル企画である『BREETSCHLAG(ブレットシュラーク)』を題材にしたVRアニメ「BREETSCHLAG VR」の体験ができた。3月に開催された“AnimeJapan 2015”でも展示され、注目を集めていた作品だ。このコンテンツでは、劇場でアニメを見ているところから始まりストーリーが描かれる。そして、気付くとスクリーンの中で主人公の“華月せいら”となり、他のキャラクターとともに飛んでいて、最後に敵が現れて戦うことに……という流れ。手に持ったステッキで丸や三角といった図形を描くと魔法が発動し、敵を攻撃できる。

手にはちゃんと『BREETSCHLAG』のステッキ
魔法が発動すると爽快だ

 棒の認識には、Leap Motionの赤外線センサーを使用している。上手く絵を描いて魔法が発動した時の爽快感はかなりのもの。原型となるアプリ「Magic VR」を開発した個人開発者の凹み氏(@hecomi)も開発に協力している。

 この『BREETSCHLAG』は小説などで紡がれていく一連の作品群。従来のメディアだけでなく、新技術も取り入れていきたいと意欲的な姿勢でVRでのコンテンツ制作にも取り組んでいる。イベントでの反響が大きいため、さらに本格的に開発を進めていきたいとのこと。これからが楽しみな作品だ。

Gear VRの機能を使ったお色気ARコンテンツも

 アダルトPCゲームメーカー・イリュージョンは、日本でも発売が決定しているモバイル向けVRHMD「Gear VR」を使ったお色気コンテンツを展示していた。Gear VRはサムスンとOculus VR社が共同開発したVRHMD。専用のスマートフォンを装着してVRが体験できる。

パススルーカメラを使用するとこれでも前が見えている状態だ(写真提供:@yunayuna64氏)

 そのGear VRには、“Pass through camera(パススルーカメラ)”という機能が搭載されており、スマートフォンの背面カメラを使って、VRHMDをかけながら、周りの様子を眺めることが可能だ。

 その機能とARマーカーを使用して、“パススルーカメラでマーカーを見ると、女の子が登場し、遊ぶことのできるコンテンツ”が展示されていた。

 登場するのはセクシー女優・上原亜衣さんの非常にリアルな3Dモデル。プレイヤーは手元にコントローラーを持ち、上原亜衣さんをジャンプさせて縄跳びを遊ぶことができる。一番のミソはコントローラーでカメラのアングルを変えられること。縄に引っかかると転んでしまうがそこでアングルを変えると……。

 この上原亜衣さんの3Dモデルは、イリュージョンのアダルトゲーム「PLAYGIRLS」のために用意されたもの。全身を3Dスキャンし、モデリングしている。

これがプレイヤーに見えている画面。実際に縄を飛ぶときの色っぽい声が気になって、うっかり縄を引っ掛けそうになってしまう
ついつい、うっかり……

 イリュージョンでは、他にもOculus Riftを使ったコンテンツを2つ展示し、VRコンテンツの開発に積極的に取り組む姿勢をアピールしていた。


 以上、Unite 2015 Tokyoに展示されていた4つのコンテンツを紹介したが、いかがだったろうか。どれもイベントでの体験限定のものが多いのが残念だが、機会があればぜひ体験していただきたい。

 なお、「Hashilius」と「鳥獣ライド」を体験するには、イベントに足を運ぶほか、長崎県のハウステンボス内にある“ゲームの王国”で常設展示されている。また、「Urban Coaster HARD MODE」「Hashilus」「鳥獣ライド」は4月25、26日に幕張で開催されるニコニコ超会議にて体験可能だ。