杜のVR部

第22回

1,000円で手軽に体験できるVRデバイス“ハコスコ”&“Cardboard”

Oculus Riftが無くても手持ちのスマホでVRが体験できる!

 本連載では、PCにに接続して使用するVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)“Oculus Rift”向けのソフトを紹介してきた。今回は少し趣向を変えて、より手軽にVRを体験できるデバイスの紹介をしてみたい。

 なぜか。それはOculus Riftがまだ開発者版で、開発者など一部の興味のある層しか持っていないからだ。公式サイトから誰でも買えるとはいえ、設定や配線でつまづくことも多く、満足に動かすためのPCのスペックも気にしなければならない……となるとハードルはまだまだ高い。

 Oculus Riftの登場以降、さまざまなVRHMDが登場している。とくにスマートフォンを挿して使用するスマートフォン向けのVRHMDは、すでに10種類を優に超えている。今回紹介する“ハコスコ”と“Google Cardboard”はその中でも特に安価で手軽なデバイスだ。いずれもダンボール製の組み立て式で1,000円前後で手に入る。手持ちのスマートフォンを挿して対応アプリをダウンロードすれば使えるため、非常にお手軽にVRが体験できる。

 ダンボール製で組み立て式という点は同じだが、レンズはハコスコが一眼、Cardboardが両眼となっていることが大きな違いだ。対応するアプリも異なるため、体験する際は注意していただきたい。

Cardboard(左)とハコスコ(右)。レンズの枚数が異なる

手軽なVR体験の実力は?

 手軽さがウリの2つのデバイスだが、実際に体験できるVRはOculus Riftなどと比べてどうなのか、という疑問が浮かぶのではないかと思う。

 その答えはこうだ。『Oculus Riftほどではないが、十分な没入感がある』。

 いずれのデバイスも部品は非常に単純だ。レンズとダンボールを中心に組み立てるだけで完成する。頭を動かすと画面が360度動くところはOculus Riftと同じで、スマートフォンに内蔵されているセンサーを使用して頭の動きを認識している。そのため、デバイス側にはセンサーが埋め込まれていない。あくまでも立体的に見るための道具だ。

 Oculus Riftで最も“その中にいる感覚=没入感”を感じられるのは、後ろを振り返っても、そこに世界が続いていることだ。その点はスマートフォン向けのデバイスでダンボール製だろうとしっかりと備わっている。

 もちろんスマートフォンの性能に左右されるため、激しく首を振ると残像が残ったりすることはあるが、これから紹介するようにそもそも動きの激しいゲームよりも、3Dや実写を360度で体験するコンテンツが非常に多くなっていることから、あまり問題にならない。

 また、Oculus Riftでは外部カメラを使って、プレイヤーの前後左右上下の位置もVRに反映させることができたが、そういった機能はスマートフォン向けのデバイスには備わっていない。手軽さゆえに機能は限定されるが、こちらも同じようにコンテンツ次第で気にならない。どの程度の没入感を求めるかはコンテンツごとに違うので、手軽なVR体験に向いているコンテンツと腰を据えて体験するゲームなどのコンテンツとで住み分けができている状況だ。

 それではハコスコと“Google Cardboard”をそれぞれ紹介していきたい。

日本発!手軽なVR体験を追求する“ハコスコ”

 ハコスコは昨年7月に発売され、すでに7万台以上を出荷している日本発のデバイスだ。理研脳科学研究所でチームリーダーを務める藤井直敬氏が開発し、現在は(株)ハコスコとして展開している。ハコスコは『誰でもどこでも簡単に没入感たっぷりのVR体験ができる』ことを目的として掲げている。

 使用するレンズは1枚の一眼タイプ。両眼タイプのデバイスと比べ立体感はやや減るが、十分VRを体験することができる。また、立体感が減ることで酔いにくいのも特徴だ。

 スマートフォンのサイズ等に応じた複数のラインナップを揃えており、iPhone 5サイズの“ハコスコ”、iPhone 6サイズの“ハコスコ6”、iPhone 6 Plusサイズの“ハコスコ+(プラス)”の3種類(いずれも税別1,000円)。Androidについては機種ごとにサイズが違うため、公式サイトに掲載されている対応機種一覧でサイズを確認していただきたい。さらにレンズが2枚入った“ハコスコDX”もあるが、対応アプリ等が異なるため、次のCardboardの項で紹介したい。

 デザインはダンボールの外見なのでシンプルだが、目玉のシールを貼ったりして工夫をすることも可能。(株)ハコスコでは、アーティストとのコラボデザインモデルも制作しており、ダンスユニット“Lead”のオリジナルデザインのものもある。

ハコスコにはさまざまなデザインのものがある。上は筆者が目玉のシールを貼ってみた通常のハコスコ。下段左はダンスユニット“Lead”との、下段右はDMM.comとのコラボモデルだ
スマートフォンを挿して使用する

 App StoreやGoogle Playから対応アプリをダウンロードして楽しむことが可能で、まずはパノラマ動画やジェットコースターなどさまざまな種類のコンテンツを遊ぶことができる公式の「ハコスコ」アプリを試してみることをオススメしたい。本連載でも取り上げた「Hiyoshi Jump」も対応している。もちろん、体験しながら跳ぶとジャンプできる特徴はそのまま。どこでも手軽にジャンプできる。

 対応アプリはハコスコ公式サイトにも掲載されている。

「ハコスコ」アプリ。公式チャンネルではさまざまなVRコンテンツが配信されている
「Hiyoshi Jump」もそのまま体験可能だ

 また、(株)ハコスコが運営しているハコスコストアでは、RICOH THETAなどの360度カメラで撮影した動画の共有が可能で、アップロードされた動画をハコスコで体験することができる。YouTubeでも2015年3月から360度動画のアップロードが始まっているため、対応している動画はハコスコで体験可能だ。

Googleが提供する“Google Cardboard”。アプリは100万ダウンロード越え

 一方のGoogle Cardboardはその名前の通り、米Google社が開発したダンボール製のVRHMD。Google製ということで、アプリの配信は主にAndroid端末向けとなっている。

 ハコスコとの大きな違いは、レンズが2枚の両眼になっているということ。より没入感の高い体験が可能だ。また、側面に磁石がついており、選択などの簡単な操作が可能だ。

 なお、Google社はこのCardboardの設計図を公開しているのみ。ユーザーはホームセンター等で材料を買って手作りをすることもできるし、各メーカーがその設計図をもとに制作したものが販売されているので購入することもできる。日本では前述の(株)ハコスコが1,000円(税別)で販売している。

“Google Cardboard”。これは海外のイベントでGoogleが配布していたもの
側面には磁石が付属する
スマートフォンはこのようにベルクロで固定する

 なお、Cardboardのサイズは5インチのスマートフォン向けのみ。他にも、(株)ハコスコ社のプラスチック製VRHMD“ハコスコDX”や、タオソフトウェア(株)の“タオバイザー”でもCardboardと同程度やそれ以上体験が可能だ(いずれも市販版に磁石は付属しないため、VR体験中の操作は不可)。

プラスチック製のハコスコDX(税別3,000円)。ハコスコの名を冠しているが両眼レンズだ
こちらも日本のタオソフトウェア(株)が開発している“タオバイザー”(税込1,500円)。プラスチック製だが組み立て式。Amazonで販売されているが個数に限りがあるとのこと

 このCardboardは、50万個以上を出荷、さらに対応している公式アプリのダウンロード回数は100万回を越えており、その手軽さから世界中で体験されていることが伺える。

 体験できるアプリケーションも非常に豊富で、複数の体験ができる公式アプリのほか、「Titans of Space」や「Proton Pulse」、「INSURGENT: Shatter Reality」など本連載でも紹介してきたOculus Rift向けの本格的なVRコンテンツをそのままCardboardで体験できるアプリも数多くリリースされている。注目のアプリはGoogle PlayのCardboardコーナーでピックアップされているほか、“Cardboard VR”などで検索すると個人開発者などが開発したさまざまななアプリを発見することができる。

Cardboard公式アプリ。Google Earthで行きたい場所に飛んで行く「Earth」など
「Titans of Space」もOculus Riftで体験するのと同じ体験が手軽にできてしまう

 今回は、ハコスコとCardboardという2種類のVRデバイスを紹介させていただいた。『興味はあるけど、Oculus Riftはちょっと……』という人も1,000円から楽しめる手軽なVR。ダンボールの箱にスマートフォンを入れてレンズを通して見るだけで、PCやスマートフォン上で見るよりも、圧倒的に没入感の高い体験になる。騙されたと思ってぜひお試しあれ。