#モリトーク

第98話

特典ソフト・サービスの時代

 マイクロソフト社が先週、「Microsoft OneNote 2013(以下、OneNote)」のMac版を無償公開すると、Windows版のそれも同時に無償化された。同種のソフト・サービスである「Evernote」が以前から無料で利用可能だったため、“出遅れ感”も漂うものの、「OneNote」がこれまで有料製品だっただけにその注目度は高いようだ。なぜこのタイミングで無償化したのか、オンラインソフト的な視点で探ってみたい。

あらゆる環境で無償利用できる「OneNote」

 本コラムでも何度も取り上げているように、Windows XPのサポート期限が4月9日(日本時間)で終了する。そのため、Windows XPのユーザーはアップグレードやパソコンの新規購入を強いられており、乗り換え先はWindows 7またはWindows 8となる。

 ここで思い出してほしいのは、「OneNote」のWindows版クライアントソフトが対応するOSであり、Windows 7とWindows 8に限られるということだ。考えようによっては、Windows XPからWindows 7/8へアップグレードする際の特典ソフトが「OneNote」であるとも言える。

 また、“SkyDrive”から“OneDrive”へ改名し、「OneNote」と連携するマイクロソフト社のオンラインストレージサービスも、そのクライアントソフトがWindows XPに対応していない。これもアップグレード特典のひとつと言えそうだ。

「Windows Essentials 2012」

 マイクロソフト社はこれまでにも、最新のWindowsを利用するユーザーに特典ソフトを提供してきた。その代表が「Internet Explorer」であり、「Internet Explorer 8」までのWindows XP、「Internet Explorer 9」までのWindows Vistaといったように、旧バージョンのWindowsには最新版の「Internet Explorer」をインストールすることができない。

 ほかにも、マイクロソフト社製フリーソフト集「Windows Live Essentials 2011」がWindows XPに非対応、続く「Windows Essentials 2012」はWindows XP/Vistaに対応しておらず、それぞれが最新バージョンのWindowsを利用する際の特典になっている。

 Windows XPがこれだけ長い期間にわたって支持されたことからもわかるように、Windowsそのものへの期待は確実に低下している。Windows 8には“ストアアプリ”という新しい環境が実装されたが、それもアップグレード特典と言えるほどの存在にはなっていない。Windows 8にはもともと、“ストアアプリ”として「OneNote」が無償で提供されていたので、今回の無償化がこれだけ注目されている理由はデスクトップ版のそれであろう。

 また、「Firefox」はWindows 8向けタッチモードの実装を見送っており、そのアクティブユーザーが1日あたり千人未満だったという点も“ストアアプリ”の需要が低いことを示している。今後のWindowsとマイクロソフト社に期待されることは「OneNote」のように、具体的でわかりやすい特典ソフト・サービスなのかもしれない。

(中井 浩晶)