#モリトーク

第90話

定番Twitterクライアントの危機

 国産Twitterクライアント「Janetter」のユーザー数が、Twitter社の定める上限値に達した。その結果として現在、「Janetter」は新規ユーザーを受け付けられないほか、既存ユーザーがサブアカウントを新規に追加することも不可能な状態になっている。モバイル環境を中心に、ほかのTwitterクライアントでもユーザー数が上限に達しているが、「Janetter」の例が示す意味は大きく異なるので、今回の経緯を振り返ってみよう。

最大認証数に達したことを警告する画面

 Twitter社は2012年8月、“Twitter API Version 1.1”の概要を発表。すると、Twitterクライアントごとの最大認証数、つまりユーザー数の上限を設けることが明らかになった。その上限値は10万であり、Twitterユーザーやそのクライアント開発者からは『サードパーティ製のTwitterクライアントが全滅するのではないか』といった不安の声が多く挙がった。

 ただし、すでに10万ユーザーを超えていたTwitterクライアントはその2倍まで許可されるため、人気・定番Twitterクライアントのユーザー数が上限に達することはそうそうないと見られていた。「Janetter」もそのパターンに該当するが、同ソフトの開発ブログによれば、2012年8月の時点で数十万規模のユーザー枠が残っていたとのことなので、それがわずか1年4カ月で尽きたことになる。

 時を同じくして、Android用Twitterクライアント「Carbon for Twitter(以下、Carbon)」もユーザー数が上限に達した。その作者が投稿した“Google+”の記事によれば、「Carbon」の最大ユーザー数は284,000とのことなので、「Janetter」と同じく、10万ユーザー超えのパターンだということがわかる。つまり、ユーザー数の規制が定番Twitterクライアントにとっても現実的な問題になってきたのだ。

「Carbon for Twitter」(配布サイトより引用)

 「Carbon」の作者はそれに対する自身の意見を赤裸々に綴っているので、一部を抜粋・和訳する。『Twitterは悪なのだろうか。そうだとは思わない。だから私は、そういった類の批判を目にしたくない。』『クライアント開発はもはやビジネスとして成り立たない。オープンAPIのサービスタイムは終わったんだ。』『このことは話題にしないでほしい。避けられないことなのだから。』

 興味深いのは、ユーザー数が上限に達することを知りながらも、「Carbon」の作者はメジャーバージョンアップに向けて開発を続けたことだ。また、今後もアップデートを継続するという。

 もし、最大ユーザー数に達したTwitterクライアントが開発・公開を終了した場合、そのユーザーたちは別の人気クライアントへ移行することになるだろう。そして、そのTwitterクライアントのユーザー数も上限に達するといったように、悪循環が生まれてしまうかもしれない。実際、「Janetter」と「Carbon」のユーザー数がこれだけ早く上限に達したのは、悪循環の結果であるとも推測できる。

 サードパーティ製のTwitterクライアントを存続させるために、ユーザーである我々が実践できることもある。それは、利用していないTwitterクライアントの認証を解除し、ほかのユーザーへ権利を譲ることだ。とくに、Twitter社公式のクライアントを利用すると決断した人はそれを心がけてほしい。

(中井 浩晶)