#モリトーク

第61話

フリーソフトとしてのEmEditor

 先週水曜日、定番テキストエディター「EmEditor」がメジャーバージョンアップを果たした。「EmEditor」のメジャーバージョンアップは毎年のように実施されているが、今回公開されたv13は7年ぶりのメジャーバージョンアップとも言える。

「EmEditor Professional」v13

 最新版の「EmEditor」は現在、基本的にシェアウェアとして販売されており、正式な名称は「EmEditor Professional」となる。インストール後の30日間、すべての機能を無料で試用することができ、試用期間が終わればフリーソフトの「EmEditor Free」として動作する。この「EmEditor Free」が、7年ぶりのメジャーバージョンアップの正体だ。

 「EmEditor Free」はかつて、「EmEditor Professional」がv5およびv6へバージョンアップしたときにも同時にリリースされており、「EmEditor Professional」から独立した別のフリーソフトだった。そして、「EmEditor Professional」が順調にバージョンアップする一方で、「EmEditor Free」のバージョンアップはv6を最後にストップしていたため、今回のv13ではv6から一気にバージョンアップしたというわけだ。

 そこで、フリーソフトとして見た「EmEditor」、つまり「EmEditor Free」v13の機能をほかの無料テキストエディターと比べてみたい。比較対象は、本コラムの第40話で取り上げた「TeraPad」「Mery」「gPad」とする。まず確認しておきたいことは「EmEditor Free」の機能制限であり、「EmEditor Professional」に搭載されているプラグイン、マクロ、検索ツールバー、テキスト比較、キーカスタマイズなど、多くの高度な機能が「EmEditor Free」では利用できない。

「EmEditor Free」v13の“複数選択”機能

 ただし「EmEditor Free」v13では、v13の目玉機能である“複数選択”が開放されているほか、v8で追加された“箱型編集”機能も利用することが可能で、旧バージョンの「EmEditor Free」v6よりも機能面で強化されている。そのため、基本的な編集機能は「EmEditor Free」と「EmEditor Professional」でほとんど差がなく、「EmEditor Free」では付加機能が利用できないと考えればよい。

 第40話でも述べたように、使い勝手やバランスを考慮せず、機能の充実度で単純に比較すれば、高い順から「gPad」「Mery」「TeraPad」と並べることができる。そして、「EmEditor Free」は「Mery」と「TeraPad」の間、もしくは「TeraPad」と同じ位置に入るだろう。「EmEditor Free」がほかと決定的に違う点を挙げると、64bit版が用意されていることであり、「EmEditor」は巨大ファイルの扱いを得意としているため、64bit環境との相性もよいはずだ。

 まとめよう。「EmEditor Free」は、「メモ帳」以外のテキストエディターを利用したことがない人、または、どのテキストエディターを使えばよいのか迷っている人にとって最適なソフトだと、筆者は総評したい。なぜなら、「EmEditor Free」と「Mery」はメニュー構成などが似ているからだ。

 テキストエディターに限らず、ソフトを選ぶ基準には“操作の慣れ”が大きく影響してくる。たとえば、「EmEditor Free」では物足りなくなった場合に、無料の「Mery」へ乗り換えたり、さらに高機能な「EmEditor Professional」を購入しても、操作や使い勝手に戸惑うことがほとんどない。多機能ではないものの、折り紙つきの基本性能と、標準的な操作性を備えたテキストエディター、それが「EmEditor Free」だと言えるだろう。

(中井 浩晶)