#モリトーク

初心者向けDo Not Track講座

(12/11/20)

 もしパソコン・インターネット界限定の流行語大賞があるとしたら、今年は“Do Not Track”が間違いなくノミネートされていたのではないだろうか。“Do Not Track”に対応するWebブラウザーは昨年まで「Internet Explorer」と「Firefox」のみであったが、今年になって「Google Chrome」と「Opera」も“Do Not Track”に対応した。また、開発が停止しているWindows版の「Safari」も暫定ではあるが、去年の段階で“Do Not Track”に対応している。

 これで、すべての主要Webブラウザーが“Do Not Track”への対応を完了したことになり、認知度も上がってきている。しかし、インターネット業界内では話題性が高く、物議も醸しているものの、肝心のインターネットユーザーが置き去りになっている印象もあり、言葉として“Do Not Track”を知っていても、その中身がよくわからない人も少なくないだろう。Windows 7向けにプレビュー版が公開されている「Internet Explorer 10」では“Do Not Track”が標準で有効になっており、そろそろ“Do Not Track”を理解しておいたほうがよさそうだ。

「Google Chrome」の“Do Not Track”設定 「Google Chrome」の“Do Not Track”設定

「Firefox」の“Do Not Track”設定 「Firefox」の“Do Not Track”設定

 “Do Not Track”を理解するにはまず、インターネットで広く利用されている“トラッキング”技術を知る必要がある。トラッキングとは、WebサイトやWebサービスを利用した人の閲覧行動を記録する技術であり、その記録されたデータはWebページの内容を動的に変更するために活用される。たとえば、ショッピングサイトで商品ページを閲覧していると、過去・直前にチェックした商品が履歴として表示されることがあり、これもトラッキング技術を応用したものだ。

 トラッキング技術は基本的にユーザーの利便性を向上させるために利用されているものの、見方によっては、閲覧履歴を勝手に記録・利用しているとも解釈できる。そこで誕生したのが“Do Not Track”であり、Webサイト・Webサービスのユーザーがトラッキングを許可するかどうか、その同意・拒否を明確なものにしようという試みだ。“Do Not Track”機能をONにしたWebブラウザーを利用すると、Webページを表示するたびに、『トラッキング拒否』の意思を示す信号がWebサイトやWebサービスへ送られる。そして、その信号を受け取ったWebサイトやWebサービスは、トラッキングを中止するなどの対応をとる。

 ただし現時点では、“Do Not Track”の拒否意思には法的拘束力がなく、その意思を尊重するかどうか、もしくは無視するかどうかといった判断は、“Do Not Track”の信号を受け取ったWebサイト・Webサービス側に委ねられている。そのため、Webブラウザー開発者や、Webサイト・Webサービス運営者によって“Do Not Track”の解釈がさまざまであり、その対応にも違いがある。たとえば、Twitter社はすでに“Do Not Track”の意思を尊重する対応をとっており、「Firefox」の開発元であるMozillaは、仕組み・環境として“Do Not Track”を普及させる活動に積極的だ。もちろん、“Do Not Track”の導入には慎重な意見もある。

 ひとつはっきりしているのは、“Do Not Track”は意思を示す仕組みであるため、ユーザーがトラッキングと“Do Not Track”について理解していなかったら、その意思は意味を成さないということだろう。WebサイトやWebサービスを利用する際に、それぞれのプライバシーポリシーを隅々まで読む人は少ないと思うが、そうした意識の低さも考え直すときが来ているのかもしれない。

(中井 浩晶)