#モリトーク

「Google Chrome」の動画再生能力

(12/11/13)

 「Google Chrome」がv23にて、動画再生時の電力消費量を25%も削減したという。このニュースを読み、あらゆる動画再生、とくにFlash動画で効果があると解釈した人も多いと思うが、全ユーザーが今すぐにその恩恵を得られるわけではなさそうだ。Google社の発表によると、動画デコード用のGPUアクセラレーションを「Google Chrome」上で有効にしたとある。

 「Google Chrome」上でのFlash動画は「Adobe Flash Player」が担当し、もともとGPUアクセラレーションを活用している上、3カ月ほど前に強化されたところだ。つまり、今回のバージョンアップは「Google Chrome」自身の動画再生、そしてそのGPUアクセラレーションを指しており、「Google Chrome」上で動画を直接再生したときに、GPUアクセラレーションによって電力消費量が抑えられるようになったということだろう。今回は、その効果を確認してみよう。

 まずは、動画再生とGPUアクセラレーションの関係を確認したい。動画再生のGPUアクセラレーションとは、ビデオカードが動画のデコード処理を補助する仕組みであり、CPUだけに頼ったときよりもパソコン全体の動画再生能力が向上するのでコマ落ちなどを抑制する。それと同時にCPUの負担も減るため、トータルの電力消費量を減らすことができる。

 動画再生のGPUアクセラレーションでは、ビデオカードに搭載された動画専用回路を利用する方式が一般的で、NVIDIA社ではその仕組みを“PureVideo”、AMD社では“Avivo”、Intel社では“Clear Video”などと呼んでいる。この技術はCPUの負担軽減と、電力消費量の削減に劇的な効果があるため、「Windows Media Player」をはじめとする多くの動画プレイヤーがこれを活用しており、最新のビデオカードであればCPU使用率をほぼ100%軽減する。

 このGPUアクセラレーションが動作しているかどうかは、ハードウェアモニター「HWiNFO32」などを使って、ビデオカードの“Video Engine”を監視すると判別できる。たとえば、Windows 7上の「Windows Media Player 12」でH.264形式の動画を再生すると、Video Engineの使用率が上がるため、GPUアクセラレーションが有効になっていることがわかる。

 Google社の発表によると、H.264形式の動画で「Google Chrome」のGPUアクセラレーションをテストし、電力消費量の軽減を確認できたとのことなので、実際に再生してみよう。「Google Chrome」は従来から、「Adobe Flash Player」などのプラグインに頼ることなく、H.264動画を再生することができ、ローカルのH.264動画ならウィンドウ上へドラッグ&ドロップすればすぐに再生が始まる。

 結果は、Video Engineの使用率が上昇するとともに、CPU使用率はほぼアイドリング状態になり、「Windows Media Player 12」のパフォーマンスと似たような傾向になった。つまり、GPUアクセラレーションが働く「Google Chrome」上で動画を再生すれば、動画プレイヤー並みの快適さと、Google社の説明にあるような電力消費量の大幅削減が期待できることになる。

H.264動画を「Windows Media Player 12」および「Google Chrome」上で再生、「HWiNFO32」で監視H.264動画を「Windows Media Player 12」および「Google Chrome」上で再生、「HWiNFO32」で監視H.264動画を「Windows Media Player 12」および「Google Chrome」上で再生、「HWiNFO32」で監視

 ところでGoogle社は昨年頭に、「Google Chrome」上でのH.264動画のサポートを打ち切ると発表し、それを受けてマイクロソフト社が、H.264動画を再生するための拡張機能を「Google Chrome」向けに公開するといった動きがあった。しかし実際は、「Google Chrome」上でH.264動画のサポートが終了することはなく、むしろ今回のバージョンアップで強化される形になった。

 Windows 8搭載のパソコンではタブレット型が増えているため、バッテリー駆動での動画再生も考慮し、「Google Chrome」の電力消費量が削減できるようにGPUアクセラレーションを取り入れたのかもしれない。もっと深読みすれば、“Windows ストア”向けのアプリは「Adobe Flash Player」の使用が制限されているため、そのあたりの事情が関係している可能性もある。

(中井 浩晶)