#モリトーク

すでに成功しているWindows 8

(12/10/23)

 Windows 8の発売カウントダウンがいよいよ1週間を切り、搭載機も続々発表されている。ここ数年のパソコンはコモディティ化が著しく、ガジェットとしての魅力を完全に失っており、ハードウェアとソフトウェアの両面でスマートフォンにその地位を奪われつつあった。ところが、今季発売となるWindows 8搭載機には近年になかった活気や変化が感じられる。

 とくに目を引くのが、各社から最低1機種はリリースされているタブレット兼用のノートPC・デスクトップPCだ。これらは、Windows 8で導入される“Windowsストアアプリ(旧名称はMetroスタイルアプリ)”のために設計されたものだが、タブレットへとトランスフォームするギミックだけでもガジェット好きな人には魅力的に映るのではないだろうか。

Windowsストアアプリとして動作する「Google Chrome」Windowsストアアプリとして動作する「Google Chrome」

 これまで筆者は本コラムにて、Windows 8の成功はWindowsストアアプリの出来次第として、Windows 8およびWindowsストアアプリの価値についてどちらかと言えば懐疑的な立場をとってきた。しかし、Windows 8の発売を前にして、早くもその考えを改めなければならない。もちろん、Windowsストアアプリがどう転ぶのか、まだわかるはずもないので、考えを変える理由はそこではない。

 ポイントは、Windows 8のWindowsストアアプリがパソコンのスタイルを改革する大きなきっかけになり、多数のタブレット兼用パソコンを生み出したという点だ。タブレット自体はWindows VistaやWindows 7でもサポートされていたため、新しい技術というわけでもなく、目新しさがあるわけもないが、スマートフォンの普及でタッチパネル操作が一般化しても、パソコンではほとんど流行らなかった。

 今後もWindows搭載のタブレット端末やタブレット兼用パソコンが増え続ければ、パソコン市場はかつてのような活気を取り戻し、そしてソフト市場も盛り上がることにつながる。さらにタッチパネルが前提となれば、Windowsストアアプリではない、デスクトップ上で動作する通常のソフトにもその恩恵が広がり、これまで存在しなかったような発想のオンラインソフトが誕生してもなんら不思議ではない。

 つまり、Windowsストアアプリがたとえ定着しなかったとしても、Windows 8はすでに一定の役割を果たし、Windowsのハードウェアおよびソフトウェアを盛り上げることに成功していると言えないだろうか。Windowsの歴史を振り返ってみても、これだけハードウェアの設計に影響を与えたものはなかった上、マイクロソフト社自身がタブレット端末“Surface”を販売するくらいなので、こうした状況を作り出すことがWindows 8の目的なのかもしれない。

マイクロソフト社製タブレット端末“Surface”マイクロソフト社製タブレット端末“Surface”

(中井 浩晶)