#モリトーク

アプリ作者に委ねられたWindows 8の成功

(12/07/24)

「Windows 8 Release Preview」「Windows 8 Release Preview」

 Windows 8の発売日が10月26日に決定した。一般向けに提供されるエディションが無印と“Pro”の2種類になることのほか、ダウンロード販売によるアップグレード版の価格が来年1月末までなら39.99米ドルであることもすでに発表されている。同アップグレード版はWindows XP/Vista/7ユーザーを対象にしており、Windows 8 Proへアップグレードすることが可能だ。

 Windows 7が発売されたとき、“Ultimate”エディションへのアップグレード価格はキャンペーン中でも1万4777円だったため、Windows 8の39.99米ドルという価格が、歴代Windowsの価格と比べても、かなりの破格であることは言うまでもない。これだけの低価格であれば、発売日当日にアップグレードする人も多くなりそうだが、しばらく様子を見るというのがWindowsユーザーの習慣でもある。

MetroスタイルMetroスタイル

 ここで、Windows 8で追加される新機能を整理したい。といっても、Windows 8の新機能は実質的に“Metroスタイル”とそのアプリのみであり、ほかにあるとすれば、次世代MS製Webブラウザーの「Internet Explorer 10」と、強化されたファイル管理機能くらいであろう。つまり、『Windows 8 = Metroスタイル』であると言っても過言ではなく、39.99米ドルはMetroスタイルの価格だと考えてもよいくらいだ。もちろん、Windows XPからWindows 8へアップグレードする場合は機能面でも価格面でもそれ以上の価値がある。

 本コラムの第11話でも述べたように、Metroスタイル用のアプリは、専用サイト“Windows ストア”を通してのみユーザーに提供される。アプリ出品者は、たとえそれが無償アプリであっても、個人が4,900円、企業が9,800円の年間登録料を支払わなければならず、Windows 8の価格を考えるとだいぶ高く感じる。

 これから見えてくるのは、Apple社やGoogle社の成功を目の当たりにしたマイクロソフト社が、OSを売って儲けるという従来のビジネスモデルからの脱却と、Metroスタイルを使った課金モデルへの転換を狙っているということだ。MetroスタイルはWindows 8上でしか利用できないので、まずはWindows 8が普及しないことには話が進まず、そのための39.99米ドルであることは疑いようがないだろう。

 もっとも、Windows 8が普及してもMetroスタイルが流行るとは限らない上、Metroスタイルへの関心がないならWindows 8へアップグレードする理由もほとんどない。Windows 8の成功、つまりMetroスタイルの成功のためには、なによりもキラーコンテンツとなるアプリが不可欠であり、それはアプリ作者の手に委ねられている。ここ数年はWebブラウザーとWebアプリケーションの時代が続いたが、Windowsでもアプリ作者が再び脚光を浴びる時代を迎えるかもしれない。

(中井 浩晶)