#モリトーク

2つのOpenOffice ライセンス編

(12/05/29)

 本コラムで取り上げている“OpenOffice”の話題は当初、第8話の1回で終わらせる予定だったが、多くの関心を集めたこともあり、第9話へと拡大させた。今週は最後のオマケ情報として、“OpenOffice”のライセンスに絡む話と、今後の展望について紹介し、これでいったん一区切りとしたい。

「LibreOffice」のライセンス画面「LibreOffice」のライセンス画面

 分裂前の「OpenOffice.org」は、“GNU Lesser General Public License(以下、LGPL)”というフリーソフト向けのライセンスを採用し、分裂後の「LibreOffice」もそのLGPLを引き続き採用している。一方の「Apache OpenOffice」は、開発元である“The Apache Software Foundation(以下、Apache)”が提唱する“Apache License”というライセンスへ切り替えた。

 どちらのライセンスも個人・団体利用、商用・非商用に関係なく無償利用を許可しているため、ユーザーの視点で見れば相違は皆無と言ってよい。しかし開発者の視点で見た場合、両ライセンスには100%の互換性がないため、Apacheは「Apache OpenOffice」v3.4.0を“Apache License”下で公開するにあたり、大きな変化を強いられることになった。

 その変化とは、ライブラリの一部を別のものに入れ替える作業であり、LGPL下で利用可能だったライブラリが“Apache License”下では利用できない場合があったためだ。実はこれが、「Apache OpenOffice」v3.4.0で新機能らしい新機能が追加されなかった理由のひとつであり、本当のアップデートはこれからということになるだろう。また、使用しているライブラリが違えば、今後追加される機能も「LibreOffice」とは違ってくるであろうし、処理速度や安定性にも少なからず影響してくるはずだ。

 ライセンスの違いは、それを採用するソフトだけでなく、その派生版にも関係してくる。たとえば「Apache OpenOffice」の“Apache License”は、ソースコードを開示しない、完全クローズドな派生版の開発を認めているので、見方によっては自由度が高く、派生版が誕生する可能性も高いだろう。実際、「Apache OpenOffice」の開発に協力しているIBM社はすでに、独自バージョンの「Apache OpenOffice」を無償リリースすると発表しており、「LibreOffice」と「Apache OpenOffice」の両ソフトに加えて、こちらの動きにも注目したい。

(中井 浩晶)