レビュー

武器も魔法も使い捨て!アイテムを作って戦うランダムダンジョンRPG「作葬グレイブキーパー」

アイテムの使い所を見極めるリソース管理や、パズル的な戦術性のあるバトルが醍醐味

「作葬グレイブキーパー」

 「作葬グレイブキーパー」は、消費アイテムを駆使して戦いながらランダムダンジョンを進んでいくRPG。Windowsに対応するフリーゲームとして公開されており、“ふりーむ!”や“フリーゲーム夢現”からダウンロードできる。

 本作は、同人サークル“てりやきトマト”が2014年にリリースした中編RPG「積層グレイブローバー」の番外編。瘴気に沈んだ世界で生き残った人類が集う“積層都市バベル”という舞台や、バベル最下層の廃棄区画で盗掘を行う“墓荒らし”達といった一部登場人物も共通している。とはいえ物語は独立したものとなっており、逆に「積層グレイブローバー」のネタバレもないため、本作からのプレイでもまったく問題ない。

主人公のリーザは、ある想いを胸に廃棄区画へと向かう

 本作の主人公は、素材を組み合わせてアイテムを作り出す“クラフト魔法”の使い手であるリーザ。廃棄区画となったかつての故郷“第Ⅳ廃層・旧55番街”に強力な魔物が現れ、それと同時にとある墓荒らしが旧55番街へ向かったことを知った彼女は、ある想いを胸に単身、廃棄区画へと向かっていく……。

 ゲームの基本的な流れは、ランダム生成されるダンジョンを下へ下へと潜りつつ、数フロアおきに待ち構えるボスを倒すことでストーリーが進行するというもの。戦闘はターン制のコマンド選択型で、物理攻撃も魔法などの属性攻撃も、使い捨てのアイテムで行うのが本作のポイントだ。

 リーザは戦闘技術を持たない代わりに素材からアイテムを作ることができ、ダンジョンで拾ったり、敵を倒して入手した素材で新たなアイテムを作ることで、より深いフロアへと潜っていけるようになる。経験値によるレベルアップもないため、より良いアイテムを得ることだけが、リーザを強化する唯一の手段となる。

アイテムを選んで攻撃。使ったアイテムは1回でなくなってしまう
ダンジョン探索で得た素材をもとに、新たなアイテムを作成していく

 エンカウントはシンボル方式だが、敵と接触しても即戦闘とはならず、敵のHPや攻撃力、属性耐性・弱点、主な使用スキルを確認して戦うかどうかを決めることが可能。ごく一部の例外を除き自分も敵も攻撃によるダメージはアイテムやスキルに応じた固定値で、防御力の概念がなく弱点を突くとダメージ2倍などダメージ計算もシンプル。1vs1バトルで先攻・後攻も使うアイテムに応じて決め打ちとなっており、結果を予想しやすいパズル寄りのバトルが特徴だ。

 プレイ感としてはローグライクRPGに近いが、ダンジョンで得られるアイテムのほとんどは素材でしかなく、アイテム作成が行えるのは拠点かボスフロアのみ。拾ったものがすぐ使えるわけではないのが本作ならではの要素で、ダンジョン内での自給自足が効く一般的なローグライクよりもやり繰りはさらにシビアな印象だ。戦闘で失うアイテムと得られる素材などを秤にかけてアイテムの使い所を見極めるリソース管理と、戦いたくない敵に囲まれるといった不利な状況を避ける立ち回りが本作の醍醐味となっている。

 こうしたダンジョン攻略を経て相対することになるボスとの戦いも歯応え抜群。特殊な行動のパターンを把握し、状況打開に必要なアイテムを考えて素材を集める……といった戦略面もポイントとなる。いったん探索を終えて拠点に戻ると日数が経過するが、とくに期限や経過日数によるエンディング分岐などはないため、短日数クリアに挑戦するのも、アイテム集めをじっくり楽しむのもプレイヤー次第だ。

 そのほか、ダンジョン内では「積層グレイブローバー」の登場人物達がアイテム交換の交渉を持ちかけてくることもあるなど、同作ファンならニヤリとする要素も。とはいえ前述の通り、どちらからプレイしても重大なネタバレなどで楽しさが損なわれる心配はない。「作葬グレイブキーパー」の公称プレイ時間は約2時間と気軽にプレイでき、シリーズの世界観やドラマチックなシナリオと本作ならではの要素の両方を堪能できるため、「積層グレイブローバー」ファンはもちろん、本作で初めてシリーズを知ったという方にもお勧めの作品だ。

ダンジョン内では「積層グレイブローバー」に登場する墓荒らし達とアイテムの物々交換が発生することも
ストーリーも見どころ。随時挟まれる回想シーンと現在のリーザの向かう先が交差し、ある家族のドラマを描き出す

ソフトウェア情報

「作葬グレイブキーパー」
【著作権者】
てりやきトマト
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.01(16/05/24)