レビュー

日数制限つきの遺跡探索&ヒロイン抹殺RPG「カリスは影差す迷宮で」

ダンジョン探索とリソース管理の楽しさが詰まった良作中編

「カリスは影差す迷宮で」

 「カリスは影差す迷宮で」は、遺跡を舞台としたダンジョン探索に、“同行するヒロインを抹殺する”という独自要素を加えたRPG。フリーゲームとして公開されており、“ふりーむ!”のWebサイトからダウンロードできる。

 主人公の考古学者“キース”は軍の命令で、新たに発見された遺跡の調査に赴く。だが調査は表向きの任務であり、キースにはもう1つの任務が与えられていた。それは護衛の女魔術師“カリス”を事故死に見せかけて抹殺すること。軍属とはいえ考古学者でしかないキースが一流の魔術師であるカリスに勝てる見込みはないため、30日という制限期間内に、魔物との戦いでカリスを弱らせ、止めを刺す機会を伺うのがゲームの目的となる。

人並みの倫理観があるキースは抹殺という任務に疑問を持つが、軍属のしがらみゆえに引き返せない状況となってしまう
相応の準備なくカリスを襲撃しても、一瞬で返り討ちにされるだけ
一部の遺物は装備したり特定の場所で使うことにより効果を発揮する

 遺跡探索中、いつでもヒロインを“襲撃”できるという尖った要素が目を惹く作品ではあるが、一発ネタのイロモノというわけでは全くなく、ダンジョン探索RPGとしても本格的で凝った内容だ。探索で入手した遺物を使って新たな道を拓いていくのに加え、入手した古文書を解読することで探索のヒントとなることも。古文書の解読には日数がかかるほか、解錠に日数のかかる扉も存在し、限られた時間の中で効率的な探索を追求する楽しみがある。

魔力の影響で遺跡はさまざまな空間につながっており、ダンジョンの内容はバラエティに富んでいる。遺物を活用することで行けるようになる場所も
古文書を解読することが探索のヒントにもつながる。魔術書を読んで魔術を覚えることもでき、どちらを優先するかも悩み所
特殊な鍵を使うことで扉を開けることが可能。開けられるようになるまで日数がかかる
戦闘はコマンド選択型。カリスは自動で行動する上、回復魔法は自己回復専用のものしか持たないため、MPを敢えて浪費させたりキースを回復させることはできない

 遺跡に潜れるのは1日1回。HP・MP回復アイテムはなく、HP回復は魔法でのみ可能。MPを回復するには探索を終えて寝るしかないため、これにより1日の探索が制限される。また、お金は基本的に遺跡では入手できず、古文書解読や遺物の入手といった遺跡探索の進捗に応じて軍から支払われる報酬が主な収入となり、遺跡探索を休むことで古文書解読に専念することも可能。短期的にも長期的にも、リソース管理が重要となっているわけだ。

 こういったさまざまな仕組みにより遺跡探索そのものに熱中してしまい裏の目的を忘れそうにもなるが、実際のところカリスを弱らせるには強い敵が出現する遺跡の奥へと連れ込むのが得策。他にも装備できる遺物を集めてキースを強化したり、技術関係の古文書を解読することで購入できるアイテムが充実するなど、表と裏の目的が絶妙に噛み合っているのもうまいところだ。

 古文書を読み込んでいくことにより、遺跡が遺された時代の出来事やそこで行われていた実験の内容が明らかになっていくなど、プレイヤー自身の手で物語を解き明かしていくのも遺跡探索ものとしての醍醐味。また、戦闘中の行動を含むさまざま要素で変わるカリスのキースへの信頼度も展開に関わってくるなど、4~6時間ほどのプレイ時間の中にさまざまな点で試行錯誤の楽しみが詰まった良作中編RPGだ。

解読された古文書を読み込むことで当時何が起きていたのか断片的な情報を得ていき、それらがつながって物語を織りなしていく
突発的なアクシデントも。遺跡内ではセーブができないため緊張感がある
さまざまな要素により、カリスのキースへの信頼度が変化する
入手した遺物に応じて、ちょっとした掛け合いが楽しめるイベントも発生

 なお本作は、昨年3月に公開され、小説化もされるなど人気を博した探索ホラー風セクハラゲーム「黒先輩と黒屋敷の闇に迷わない」の作者、饗庭淵氏による新作。作品としてとくにつながりはないが、クールな黒髪長髪巨乳ヒロインにフィールド上でいつでも“何か”ができるという点は通じるものがあり、作者のこだわりを感じるところだ。

ソフトウェア情報

「カリスは影差す迷宮で」
【著作権者】
饗庭淵 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.04(15/03/03)

(中村 友次郎)