レビュー

ピッチ編集機能などを備えたフリーのボーカル向け波形編集ソフト「VocalShifter」

ダイナミクス編集機能、タイミング編集機能、フォルマント編集機能なども備える

「VocalShifter」v1.3

 「VocalShifter」は、ボーカル向けの補正機能を多数備えたWAVE波形編集ソフト。Windows 98/2000/XP/Vistaに対応するフリーソフトで、編集部にて64bit版のWindows 7での動作も確認した。作者のWebサイトからダウンロードできる。

 ピッチ編集機能やダイナミクス編集機能、タイミング編集機能、フォルマント編集機能などを備えており、録音したボーカル音声を細かく修正できる。とくに、ピッチ補正機能には、自動修正機能やMIDIファイルをもとにピッチを修正する機能、音程を揺らしたビブラートを付加する機能などが用意されており、本格的なピッチ補正が可能。

 基本的な使い方は、ツールバーのアルファベットが書かれたボタンで、“ピッチ編集”“ダイナミクス編集”といったモードを切り替える仕組み。起動時は“ピッチ編集”モードになっており、WAVE形式の音声を読み込むと波形とともにピッチが折れ線グラフで表示される。

“ピッチ編集”モードの右クリックメニュー

 “ピッチ編集”モードでは、ツールバーから鉛筆ツールを選択し、折れ線グラフを書き換えることで手動によるピッチ編集が可能。また、右クリックメニューからは範囲選択ツールによる選択範囲へ、さまざまな方法でのピッチ補正ができる。たとえば、“ピッチシフト”項目からは100分の半音単位の数値でピッチをずらせるほか、“平坦化”項目からはピッチを表す折れ線グラフがなだらかになるようにピッチを補正可能。

“ピッチシフト”項目からは100分の半音単位の数値でピッチをずらせる
“平坦化”を適用

 また、“ビブラートを付加”項目からは意図的にピッチを揺らしてビブラートをかけられるほか、“半音単位に丸める”項目からは折れ線グラフが一番近い半音のグリッドに添うように補正できる。“半音単位に丸める”機能を使うと、なだらかなピッチの変化が角張った人工的な変化に変わり、人の声の風合いを残したままロボットボイス的な味付けをすることが可能。

 さらに、“平均値を補正”項目からは折れ線グラフの平均値が最も近い半音単位のグリッドに合うようにピッチを補正できるほか、“自動補正”項目からはビブラートを保ったまま極力半音単位のグリッドへ合わせるように自動でピッチを補正できる。このほか、クリップボードにMIDIファイルを読み込み本ソフト上にペーストすることで、MIDIファイルに合わせてピッチを補正することが可能。[ファイル]メニューの“クリップボードにMIDIファイルを読み込む”項目からファイル選択ダイアログを使ってMIDIファイルをクリップボードに読み込むことも可能。

“半音単位に丸める”を適用
“自動補正”を適用

 ツールバーの[D]ボタンを押して“ダイナミクス編集”モードに切り替えると、画面に音量を表した水色の折れ線グラフが表示される。このグラフを鉛筆ツールで書き換えることで音量を細かく編集可能。また、右クリックメニューから音量を細かく変化させるビブラートを付加する機能や、音量の最大値を制限するリミッター機能、折れ線グラフの形状を保ったまま、音量を制限する機能などを利用できる。

 ツールバーの[T]ボタンを押すと“タイミング編集”モードに切り替わる。“タイミング編集”モードでは複数の“制御点”を右クリックメニューから指定し、ドラッグで動かすことでピッチを変更せずに音を伸ばしたり、縮めることが可能。細かく調整することで歌のグルーブ感を補正できるだろう。

“ダイナミクス編集”モード
“タイミング編集”モード
“フォルマント編集”モード

 ツールバーの[F]ボタンで切り替えられる“フォルマント編集”モードでは、声質を左右する“フォルマント”を鉛筆ツールで自由に移行させることが可能。“フォルマント”はプラスに移行すれば甲高く堅い声質、マイナスに移行すれば低くくぐもった声質に変化する。

 そのほか、ボリュームを折れ線グラフで編集できる“ボリューム編集”モードや、“ピッチ編集”モードを利用する際に検出したピッチを手動で修正する“誤検出修正”モードを備える。また、本ソフトを複数起動してそれぞれ別のWAVEファイルを読み込み、[Shift]キーを押しながら再生ボタンを押すことで複数音声を同期再生することが可能。同期再生を使えばコーラスのハーモニーを調整する際などに便利。

ソフトウェア情報

「VocalShifter」
【著作権者】
あっきー 氏
【対応OS】
Windows 98/2000/XP/Vista(編集部にてWindows 7 x64で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.3(10/09/01)

(長谷川 正太郎)