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特別企画

梅田で働く社長対談 フェンリル(株)×(株)ジェーン 前編

「Sleipnir」の柏木泰幸氏と「Jane Style」の山下遼太氏が熱き思いを語る

(09/03/26)

がっちり握手を交わす柏木氏(左)と山下氏(右)
がっちり握手を交わす柏木氏(左)と山下氏(右)
 去る3月10日、“2ちゃんねる”ビューワー「Jane Style」などの作者“◆Style/kK.s”氏として知られる山下遼太氏が会社を設立し、(株)ジェーンとしてオンラインソフトを開発していくことが明らかになった。(株)ジェーンのWebサイトを見ると会社の所在地は大阪府大阪市。奇しくも約4年前、同じようにオンラインソフト作者として会社を設立した柏木泰幸氏のフェンリル(株)と同じ土地である。

 そんな折、フェンリルから窓の杜編集部にメールが届いた。なんと、ジェーンはフェンリルと同じ街“梅田”にオフィスを構えており、両社の社長である山下遼太氏と柏木泰幸氏のオンラインソフト談義を取材してほしいという。編集部としては断る理由があるはずもなく、大阪“梅田”でインタビューを行い、両氏のオンラインソフトへの熱き思いをうかがった。

□窓の杜 - 【NEWS】2chビューワー「Jane Style」などの作者が“(株)ジェーン”を設立
http://www.forest.impress.co.jp/article/2009/03/10/janeinc.html
□窓の杜 - 【NEWS】「Sleipnir」作者の柏木氏が会社を設立、後継Webブラウザーを開発中
http://www.forest.impress.co.jp/article/2005/06/21/fenrircojp.html
□窓の杜 - 【特別企画】「Sleipnir」開発者 柏木泰幸氏インタビュー
http://www.forest.impress.co.jp/article/2005/10/12/sleipnir_interview.html

自己紹介

編集部 本日はお忙しいところどうもありがとうございます。まずは自己紹介からお願いします。

山下氏 山下遼太と申します。大学を卒業してから2年ほどフリーのエンジニアをしておりました。この度ソフトウェア開発を目的とした(株)ジェーンを設立いたしました。

柏木氏 柏木泰幸と申します。1年ほど会社員として働いて、(ソースコードが盗まれる事件があり、個人で)開発ができなくなったのでフェンリル(株)を設立し、今に至ります。

山下氏 大学時代はフェンリル関連のニュースをよく見ていました。当時学生でなければ、ふらっと行ったと思います。去年も行こうかなと悩んだこともありました。

柏木氏 別の道を歩むことになりました(笑)。

(株)ジェーン設立の経緯

編集部 まず山下さん、(株)ジェーン設立の経緯などをお聞かせください。

山下氏 気に入ったオンラインソフトがいつの間にか更新されなくなったり、Webサイトごとなくなったりとか、よくあるんです。おそらく作者さんの進学や就職が原因だと思うのですが、それがすごく残念だという思いがありました。僕も大学卒業後フリーのエンジニアとして働いていたのですが、ユーザーが望んでいることがわかっている機能であっても、なかなか時間を捻出できないことから実装できなかったり、至急修正が必要な問題でも数日かかったりしたことがありました。僕はユーザーに喜んでもらうということをモットーにしているので、そういうことがないように法人化して専業としてやろうと。また、もし一緒にやってくれる人がいるのならチームを組んで、もっとユーザーに喜んでいただけるサービスやソフトウェアを作りたいと思い法人化しました。

編集部 よりユーザーに喜んでもらえるようにという思いは柏木さんも共通するものがあるのでしょうか?

柏木氏 そうですね。やっぱり、ソフトウェアを作るうえでモチベーションをどこに置くかという部分で同じ思いがあります。ユーザー数が増えてくると喜んでくれる声が大きくなってきます。最初はメールを1通もらっただけでうれしかったです。次に、本に掲載されたときがうれしかったです。そのあと開発者同士のやり取りとかもありました。お互い協力してまったく別のアプリケーションを作ったり。それも楽しかったです。利用者が増えてくると、日常では味わえないぐらいの喜びが届くんですよね。

山下氏 それはあります。普段何かやっていても普通は友人や知人だったり、どんなに多くても5人、10人しか影響を与えられないのが、ソフトを作ることによって1万人、10万人の声がダイレクトに届くようになるんです。それはすごく楽しいです。だから、もっとよいものを作りたいという思いを持ち続けています。

編集部 現在ジェーンは山下さんお一人で運営されているのでしょうか?

山下氏 今のところ一人なんですが、もしユーザーを大事にしたいということに共感してくれる人がいれば、ぜひ一緒にやりたいと思ってます。声をかけてくだされば飛んでいきます。

柏木氏 仲間集まれ!みたいな感じですね(笑)。

編集部 今までは自分一人で作っていたソフトを他人に任せることに関して抵抗はありますか?

山下氏 現状よりもさらにいいソフトを作りたい、そういう方が来てくれるならウェルカムです。自分の作品ではありますが、もともとオープンソースのものなので。1ユーザーとしてソフトがよりよくなることはうれしいので、そのあたりの抵抗はまったくありません。

二人の出会い

編集部 お二人はすでに何度かお会いになっているとのことですが、柏木さんと山下さんが出会ったなれそめをお聞かせください。

柏木氏 最近になるまでまったく会ったことがなかったんですが、これまでに社内では(山下さんのことが)ちょくちょく話題になっていました。大倉(貴之氏、フェンリル研究開発室 室長)と“いいエンジニアいてないかなぁ”なんて話をしているときに名前が出てましたが、どこに住んでいるかわからないし、連絡を取ることはありませんでした。でも、「Jane Style」のWebサイトを見ていると「Sleipnir」へリンクがあったり、Webサイトのデザインもなんか似ているし……。

山下氏 僕は2001年くらいに「Sleipnir」と出会って、それから柏木さんのことを心の中で恩師と思ってました。ソフトウェアのデザインとか開発姿勢とか、すごく尊敬できると思っています。そのあたりを「Jane Style」に応用すれば、ユーザーの皆様に喜んでもらえると実感していました。

柏木氏 そんなこんなで(株)ジェーン設立のニュースを聞き、“すごいやん”という話になって、山下さんにメールを送ろうと。“おめでとうございます”と(笑)。

山下氏 そのメールが来たとき、僕のテンションはすごく上がりました(笑)。会社を設立して一番に会いたかったのが柏木さんでしたので。どうすれば会ってもらえるかと、メールの文面をいろいろと考えていたほどです。すぐに返信し、翌々日に会って食事をごちそうになりました(笑)。

柏木氏 “ウマー。”ってブログに書きました(笑)。

山下氏 結構な時間までずっと飲んでましたね(笑)。

柏木氏 それまでにも連絡を取りたかったんですけど、先送り先送りになっていまして。

山下氏 僕もそうですね。先送り先送りに……。まだ、柏木さんの前に出て行くのはちょっと力不足やなと。

編集部 その後も何度かお会いになりましたか?

柏木氏 そのあと先日またお酒を飲んで。そのとき私はおごるつもりで大量にお酒を飲んだんですけど、山下さんにおごっていただいて(笑)。おごるつもりだったのに申し訳ないなと。ありがとうございます。

山下氏 すごく貴重なお話を聞かせていただいたり、アドバイスをいただきましたので。また、僕が誘ったので払わせてくださいっていうことで。

社長業の苦労

編集部 オンラインソフトで起業する際の苦労はありましたか。

山下氏 起業の際というか今後の話になるのですが、会社として、ビジネスとしてやっていく以上は収益化を考えなくてはいけません。そのときに、ユーザーのことを第一に考えたいという思いがあるにもかかわらず、ユーザーの望まないことも収益のためにやらなくてはいけないのかな、という重い悩みがあります。しかし、やるからにはユーザーを第一に考えたいので、ユーザーが使って便利な機能と会社が収益を上げる方法が同じ方向を向いていけることを目指しています。

編集部 オンラインソフト作者と会社社長の両立で苦労されていることは?

柏木氏 まず大変なのは、ソフト作り以外に労力がいるというところです。「Sleipnir」をこうしようという“絵”はすぐに描けるのですが、その“絵”に向かって行動するために、“こういうチームがいる”とか“こういうUIを誰が作る”とか。さらに、将来的に自分が別の仕事をするために組織も作る必要があるとか、プログラムの1に対して、ほかが9ぐらいの労力がいります。それが一番大変でした。

次に、最初の志を忘れないこと。社長としての立場で仕事をしているとさまざまなものに触れることになります。外の人たちと話をしていると“お金がすべてだよ”みたいなことを言っている人もいます。ビジネスの話ばっかりでユーザーのこととかはあまり出てきません。そういう環境に身を置くことになるので、ユーザーのためにやるんだ、と常に自分に言い聞かせてます。ブログでも書き続けて、周りに馬鹿にされながらでも言い続けて(笑)。オンラインソフト作者としての心意気や考え方を維持して強化することが大変です。その2点が大変ですね。

山下氏 僕に関してはまだスタートしたばっかりなので、メールの応対だったり、会社の運営だったり、こういうインタビューだったりが大変なんですけど、それは楽しんでます。おそらくほかの人を雇ったりしたときに柏木さんの経験されているような大変なことが出てくるんだと思います。とにかく今は自分が居なくてもユーザーのために開発していけるという組織作りを、今後頑張っていきたいと思っています。ユーザーに“このソフトをずっと使っていたら、いい機能を追加してもらえるし、ぜったい裏切られない”と思っていただけるのが僕の理想です。

“2ちゃんねる”への思い

編集部 ユーザーとの交流などで“2ちゃんねる”との関わりが深いお二人ですが、“2ちゃんねる”への思いなどをお聞かせください。

山下氏 僕は5年間“2ちゃんねる”ユーザーど真ん中の人たちとずっとやっているのですが、“2ちゃんねる”の人たちは言いたいことはずけずけと言ってくれるじゃないですか。冷やかしや荒しもありますが、“ホンマにこのソフトをよくしたい”という思いのある書き込みももちろんあるので、そういう声を吸い上げてソフトをよくしたいなと思っています。“2ちゃんねる”全体で言いますと、各分野の専門家や面白い人が集まってくる場なので、1ユーザーとしてすごく楽しんでます。ソフトに対する愛のあるお叱りとかは、自分もユーザーですので、気持ちはよくわかります。

柏木氏 私にとっての“2ちゃんねる”は“無償の愛”と“想像力”の強化ですね。たぶん意味わからないと思いますけど(笑)。“2ちゃんねる”では下心なしで思ったことを率直に言ってくれます。そもそも、誰が書いてるかもわからない世界なので、本当にユーザーのことを思って振る舞わないとやっていけません。私の中では。名前も顔もなんもわからない“名無し”がどれだけいるかもわからない世界でコミュニケーションを取ることって、私は“無償の愛”を鍛えることができると思います。見返りを求めず、相手を好きにならないとコミュニケーションできない。酷い書き方をされても“ああ、この人は「Sleipnir」のことが好きやから書いてくれてるんや”と読み取れれば、やっぱりその人のために頑張ろうと思います。目に見えない人々を重視するというのは、“無償の愛”を強化するために重要だと思っています。楽しいですし。

“想像力”というのは、いろんな人が“2ちゃんねる”に書き込みする中で、“これはどんな人が書いてるんやろう”“これとこれは同じ人やな”“この人またキター”とか、わからないのですが頭の中で色々想像します。このUIだとユーザーがどう思うか、どういう感情を抱くか、という目に見えないソフトの使いやすさを想像力が決めるので、すごく重要だと思っています。その2点が楽しくてずっとやっています。

編集部 お二人はお互いのソフトのスレッドへ書き込むことはあるのですか?

柏木氏 私は「Sleipnir」のスレ以外へ書き込んだことないです(笑)。

山下氏 僕は自分の使っているソフトなんで書いてます(笑)。

柏木氏から山下氏へのアドバイス

編集部 山下さんから柏木さんへ聞いてみたいことはありますか?

山下氏 大倉さんやRAPTさんといったフェンリルの社員の方とお会いしてみて、組織としてすごくうまくやっているなと感じました。どうやってそういう魅力的な場所を作っているのかということが……。秘訣ってあるんでしょうか?

柏木氏
フェンリルのオフィスにあったホワイトボード。ToDoが付箋として貼り付けられている
フェンリルのオフィスにあったホワイトボード。ToDoが付箋として貼り付けられている
社長の人格と能力ですね(一同笑)。いや、いまから説明します。人は間違うので、間違いを正していかなくてはいけない。1人の行動が間違っていても全員では正しい行動ができるように、指揮系統が機能する環境作りとか。正しいことを言えば通るわけでもないですし、最初のうちは苦労していました。指揮系統が機能する環境を自分で作るのは大変です。だから、そういう環境を作るのが得意な人が、会社を信じてくれるように振る舞う。一人でできないことはみんなでやるしかない。大きな夢と信頼される人格で、すばらしい能力をもった人たちが集まって仕事ができる環境を作る。そういう意味で私は“社長の人格と能力”が重要だと思っています。私自体はまじめで一生懸命やるタイプではなくて、見た目や性格は不真面目でいい加減なのですが、ユーザーと社員に愛をもって仕事はちゃんとする。私自身まだまだですが……頑張ってます。組織として機能するまでは、トップの能力が重要だと思っています。だから日々修行です。でも、何度かお会いして山下さんはまじめで優しく自責性が高いので、その点は心配していません。

あと、私がフェンリル設立時から心がけているのは、ユーザーと社員と自分を天秤にかけたらまずユーザーが重くて、次に社員が重い。この順番は重要だと思っています。社員のモチベーションが高くても、ユーザーのことを考えないと意味がありません。順番を意識して、ユーザーと、社員、会社のすべてがハピネスになることが重要です。

山下氏 もし、人を雇うことになったら、社員の幸せというものも考えなくてはいけないと思います。自分は不幸せだと思っている人が、ほかの人を幸せにできるのかというのは甚だ疑問だと思いますので。まず、社員の幸せがあって、その先に多くのユーザーの幸せがあるんじゃないかと思っています。

編集部 柏木さんから山下さんへこれだけは言っておきたいというアドバイスはありますか?

柏木氏 “初心忘れるべからず”です。

山下氏 “ユーザー第一”。

両社の関係は?

編集部 フェンリル(株)と(株)ジェーンが連携する予定はありますか?

柏木氏 そこについては、会社同士できちんと話してはいません。私が個人的に思っているのは、まず私がつまずいたところをジェーンがつまずかないようにアドバイスしてあげたいということです。答えが見つかれば問題の解決は意外と簡単だったりします。そうすれば、フェンリルが4年かけて到達した地点に2年で来られると思います。そこまで来たときに初めて両社が連携できるのではないかと思いますので、まずは人間として自分が学んだことを伝えていきたいと思います。

山下氏 是非とも教えを請いたいと思います。

編集部 フェンリルが開発している“2ちゃんねる”閲覧プラグイン「Mosa」と「Jane Style」は競合してしまうと思うのですが、どうお考えになりますか?

柏木氏 「Jane Style」を駆逐しようと(笑)……は考えていないですけど、今「Mosa」のiPhone版を開発中です。

山下氏 ちょっと見せていただいたのですが、かなりいい出来です(笑)。

柏木氏 iPhoneらしく、シンプルで誰にでも使えて、でも実は高機能という、二律背反なものを作っています。それができたときにPC版も欲しいなと。既存の“2ちゃんねる”ビューワーは多機能で複雑なものが主流になっていて、あまり変化がない。“p2.2ch.net”(Webサービスの“2ちゃんねる”ビューワー)はシンプルで使いやすいのですが、有料のWebサービスなので……。そこで、シンプルを追求した“2ちゃんねる”ビューワーというものを考えています。会社ではPC版の「Mosa」、電車の中などではiPhone版の「Mosa」。そして将来は2つの間でデータを共有できるという形で。

山下氏 いいですね。話を聞いているとなるほどと……。

編集部 山下さん、どうします?

山下氏 「Jane Style」はメールソフトにインターフェイスが近いので、どんな人でも使える。さらに深いことをやりたいと思えばそれもできる。クライアントアプリとしての「Jane Style」でしかできないというものを目指しています。でも、Webアプリの“p2.2ch.net”は気になりますね。あと柏木さんにも伝えたのですが、今後(株)フェンリルさんの分野にも進出していくという予定もあります。この先、両社がライバルになるという可能性も十分あると思います。

柏木氏 ライバル関係であっても、重なる部分で協力し合うという形がいいのかなと思っています。小さな大阪同士で喧嘩し合ってもしかたありません(笑)。

□窓の杜 - 【NEWS】「Sleipnir」用“2ちゃんねる”プラグイン「Mosa」のオープンαテストが開始
http://www.forest.impress.co.jp/article/2007/07/04/mosalfa.html

今後について

編集部 “p2.2ch.net”の話が出ましたが、今後連携してみたいWebサービスなどはありますか?

山下氏 今、面白いなと思っているのは“Yahoo!ニュース”の掲示板ですね。ニュースを読んだ人がすぐにコメントを投稿するので、“2ちゃんねる”と共通するものがあると思います。あと、“価格.com”の掲示板。Webサービス側の広告収入との兼ね合いがあるのでなかなか対応できないのですが、法人となったことで話を聞いていただければいいなと思っています。

柏木氏 Web上で動くアプリケーションには興味があります。今流行のクラウドコンピューティングなど魅力的だと思います。でも、いざ自分がWebサービスを使っているとストレスを感じる。ネットワークが遅いとレスポンスが悪くなるなど、外的要因に左右されたり、ボタンなどのインターフェイス上にある文字列が選択されてしまうといった問題をまだまだ抱えていると思います。時代が解決してくれるので静観しています。それまではPC上で最速で動くアプリケーションにこだわります。

山下氏 間違いなく、クライアントの方が早いですからね。

編集部 お二人の最終的な夢は?

山下氏 今のところ、会社を運営していくので精一杯なので、あまり大きなことは言えませんが、ユーザーの希望に添ったソフトを作れる会社を作りたいと思っています。たとえ、収益が出なくても世の中に必要とされているオンラインソフトがたくさんありますよね。一方で収益を出しつつ、そんなオンラインソフトを作れる会社を運営できれば、新しい価値を生み出して、社会に貢献できるのではないかと思います。

柏木氏 私は死ぬときにフェンリルがあるから地球が30%幸せになったと言われるようになりたいと思っています。いや、30%ぐらいじゃなくて100%くらいいきたいですが(笑)。うちの会社のミッションがハピネスなので。それのゴールってなんやろうと考えると、みんなが知ってて、みんなが愛してくれて、それで私たちが地球あるいは人々のために、人々の“ハピネス”指数が上がることをしたりとか……。あんまりソフトウェアと関係ありませんが、金の上で動かされている人々の、争いとか貧困とか、そんな問題を解決していけたらいいなと思っています。

編集部 大きな夢ですね。

柏木氏 人生のテーマなので!泰幸の“幸”の字のように(笑)。具体的なことを言えば、山下さんが今回起業されたように、フリーソフトをもっと作りたい人が増えたらいいなと思います。そういう人が増えて、いいソフトができてオンラインソフト界がもっと活発になればいいと思います。何かできないですか?

編集部 我々も頑張りたいと思います。

柏木氏 お金のためだけじゃなくて、ソフトウェアを作ること自体が楽しいと思います。人が困っていて“じゃあ、これ使ったらうまくいくで”という小さなことなのですが。そこから、やっていくうちに作れるものが大きくなったり、喜んでくれる人が多くなったり。“他人のために”というオンラインソフト作家を増やしたいとずっと思っています。

山下氏 プログラミングって面白いですよ。うまくいかなくてイライラすることもたくさんありますけど、そういうときでもむちゃくちゃ楽しいんですね。そういう楽しさをより多くの方に経験していただけたらうれしいですね。

柏木氏 一般の人が1万人、10万人、100万人へ向けて何かできるって、オンラインソフト界ならではだと思います。たとえば、甲子園で観客を感動させようと思ったら、野球を何年もやって、勝ち抜いて、チームも強くなくてはできないのですが、オンラインソフトならちょっとプログラムやっていたら、たいていは多くの人に使ってもらえる。

山下氏 ユーザーからのダイレクトな反応ってすごく楽しいですからね。みなさんに興味をもっていただけるとうれしいですね。

インタビューを終えて

 前編では編集部が用意した質問に答えてもらう形で、対談を進めさせていただいた。追いつき、追い越すべき目標として柏木氏を尊敬する山下氏と、いたわりつつも山下氏を叱咤激励する柏木氏が印象的だった。両氏のオンラインソフトへの“愛”をお伝えできていれば幸いだ。

 後編ではフリートークという形で、両氏にプログラミングや会社運営などさまざまなテーマについて自由に語っていただいた内容をお届けする。

□デザインと技術のフェンリル - フリーソフトでユーザーにハピネスを
http://www.fenrir.co.jp/
□株式会社ジェーン
http://janesoft.net/
□窓の杜 - Sleipnir
http://www.forest.impress.co.jp/lib/inet/browser/webbrowser/sleipnir.html
□窓の杜 - Jane Style
http://www.forest.impress.co.jp/lib/inet/browser/typclbrwsr/janestyle.html

(長谷川 正太郎)




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