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特別企画

DivX社ガーナム社長に聞くビデオコーデックDivXの可能性と未来像

『Java製アプリがあらゆるOSに対応するようにDivXもデバイスを選ばなくなる』

(04/08/10)

 先月22日に東京の六本木ヒルズで開催された「DivX」最新版の発表会のために来日していたDivXNetworks社社長、シャヒー・ガーナム(Shahi Ghanem)氏。幸いにもインタビューの機会に恵まれたので、開発側から見たビデオコーデック“DivX”の可能性と未来像を伺った。

DivXNetworks社社長、シャヒー・ガーナム(Shahi Ghanem)氏
DivXNetworks社社長、シャヒー・ガーナム(Shahi Ghanem)氏

MPEG-4とは単なる道具

 現在日本で最も利用されているビデオコーデックといえば、DVD-VideoやBS/CS・地上デジタル放送などで採用されているMPEG-2である。MPEG-2は高ビットレート時の高画質を得意とするコーデックだが、エンコードしたファイルのサイズが大きく、ビットレートを下げると急激に画質が低下してしまう欠点をもっていた。そこで低ビットレートでも高画質を維持できるビデオコーデックとして開発されたのがMPEG-4。DivXもMPEG-4の動画圧縮技術を利用したビデオコーデックの1つだ。

 『MPEG-2を保存するには大容量の記録メディアが必要であるが、MPEG-4であればファイルサイズを小さくできる。また、高価なBlu-ray Discなどを利用しなくても、DVDにハイビジョン映像を保存することさえ可能だ』

 アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴを拠点とするDivXNetworks社で、社長を務めるガーナム氏は言う。

 MPEG-4は、MPEG-2を超える目的で開発され、1999年に国際規格となったビデオコーデックで、随時修正と改良が施されて現在は“H.264/AVC”と呼ばれる10世代目までバージョンアップしている。しかしMPEG-4は非常に自由度の高い規格であるため、開発者側が独自にカスタマイズすると、再生時に互換が保てないという側面もあった。

 『MPEG-4とは単なる道具にすぎない。どうアレンジするかによってその価値が決まってくるため、当然質の悪いMPEG-4も存在している。しかしDivXは、ファイルサイズを小さくできるだけでなく、ハイビジョン画質でもエンコードできるように画質にもこだわり、さらに“DRM”にも力を入れているので他のMPEG-4よりも強力なビデオコーデックと言える』

 DRMとは“Digital Rights Management”の略で、デジタルコンテンツの著作権を保護するための技術である。デジタルテレビ放送に付加されている“コピーワンス”もDRMの一種といえば分かりやすいだろうか。デジタルコンテンツは、デジタルの特性上簡単に複製できてしまうため、不正コピーを防ぐためにDRMは必要不可欠だ。

ユーザー主義

 デジタル動画と言えば、一昔前まではパソコン上で再生するものであったが、DVD-VideoやDVDビデオレコーダーの流行、ポータブルAVプレイヤーの登場などによって、パソコン以外のデバイスでも扱われるようになってきた。

 『テレビ放送のデジタル化にともない、テレビ放送とインターネット放送との垣根がなくなろうとしている。MPEG-2は高画質なビデオコーデックではあるが、ファイルサイズが非常に大きいためインターネット配信などには適していない。今はまだそれぞれ違う仕様を実装しているテレビ放送用とインターネット放送用のビデオコーデックを共通させる意味でも、放送業界はMPEG-4の採用を考える時期に来ている』

 今までMPEG-4は主にインターネットや携帯電話で利用され、ファイルサイズを小さくできる点に注目が集まることが多かった。その結果、「MPEG-4は高圧縮であるが、解像度も画質もそれなり」といった悪いイメージだけが先行していたのも事実。

 その点DivXは、従来のMPEG-4と比べてエンコード画質の良いことからインターネット上で話題になり、ここ最近爆発的に人気を集めている。DivX社の資料によると、世界規模で1億3千万人以上のユーザーがいて、その7割強が欧米のユーザーだという。また、DivXの再生に対応する家電機器が世界中で100種類以上登場しており、DivXはパソコン以外のデバイスでも利用できる汎用性の高いビデオコーデックに成長しているようだ。

家電業界進出の意気込みを語るガーナム氏
家電業界進出の意気込みを語るガーナム氏
 『DivXには、もはや“世界標準のビデオコーデック”と言えるくらい多くのユーザーがいる。さらに今年のクリスマスシーズンまでには、DivXの再生に対応するDVDプレイヤーが1,000~2,000万台出荷される予定だ』

 日本ではDivXに対応する家電機器はまだDVDプレイヤーくらいであるため、まだパソコン上で使用するビデオコーデックというイメージが強いが、今後どのようなDivX製品が登場するのだろうか。

 『ヨーロッパではDVDプレイヤーだけでなく、ネットワーク対応テレビでDivXコンテンツを直接鑑賞できるようになっている。日本でも今年中にはDivXに対応するポータブルAVプレイヤーを発売し、来年にはDivXでの動画録画機能を搭載したデジカメが登場するだろう』

いつでもどこでも

 ここで、“MP3”を思い出してほしい。今でこそMP3はさまざまな家電機器で再生できるが、以前はパソコンユーザーが使用する音声ファイルの1つでしかなかった。MP3がインターネット上から流行し、パソコン以外のデバイスでも扱われるようになった経緯は、現在のDivXが歩もうとしている道と非常に似ている。

 『Java製のアプリケーションがあらゆるプラットフォームで実行できるのと同様に、DivXコンテンツも再生デバイスや記録メディアにとらわれず、あらゆる環境で見られるようになるだろう』

 ところで先日、企業が中心となりDVD規格の制定および普及を行っている団体“DVD Forum”において、片面で20GB記録できる次世代光ディスク“HD DVD”に搭載する高圧縮ビデオコーデックとして、H.264/AVCが採用されると決まったのだ。企業が主体となって推し進めるH.264/AVCに対し、ユーザーの支持を受けて育ったDivXがどれだけ対抗できるのか今後の展開が楽しみだ。


□DivX.com: The Official Site of DivX Video
http://www.divx.com/
□DivXNetworks: Hardware(DivX対応のデバイス一覧)
http://www.divxnetworks.com/solutions/certification/products.php
□窓の杜 - 【NEWS】DivXNetworks社のガーナム社長が『DivXの圧縮速度はWMV9の3倍高速』とアピール
http://www.forest.impress.co.jp/article/2004/07/22/divx52presen.html
□窓の杜 - DivX
http://www.forest.impress.co.jp/lib/pic/video/vdoenc/divx.html

(中井 浩晶)


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