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週末ゲーム

【第171回】

アドベンチャーRPG「天使の微笑」

暗殺者の世界を濃密に描いた独創的なRPG

(03/05/23)

タイトル画面

 RPGといえば、世界の存亡を巡る壮大なドラマや夢と希望に溢れる少年の大冒険など、スケールの大きな物語が多い。しかし、壮大な物語ばかりのRPGに食傷気味になった人も多いのではないだろうか。今回紹介する「天使の微笑」は、世界の存亡を巡る壮大な物語とは対極的に、暗殺者の主人公が受けたある依頼の顛末を描く物語。スケールという点では超大作RPGに劣るかもしないが、代わりに登場人物の個性と生き様が深く丁寧に描かれているという魅力がある。

愛娘ルーナとの会話。フェイスウィンドウが登場人物の魅力を引き立たせる
愛娘ルーナとの会話。フェイスウィンドウが登場人物の魅力を引き立たせる

 「天使の微笑」は、2Dで描かれたフィールド内を探索したり、さまざまな登場人物と会話することでゲームが進行するアドベンチャーRPG。政府公認の暗殺者“クルード”が武器商人“エルウィン”の暗殺依頼を受け、ある港町で剣を振るうというストーリーだ。一般的なRPGでは、弱い主人公を育てて強敵に挑むという場合が多いが、本ゲームでは主人公が最強の暗殺者で、敵側の“エルウィン”とその護衛を任された傭兵団が暗殺の阻止に奮戦するという内容。また、主人公が暗殺者という性質から、プレイヤーは常に単独で行動し、戦闘も1対1の斬り合いとなっている。またイベントバトル以外で登場する敵は、屋敷内など常に特定の場所に配置されており、近づいたときに表示される動く照準が敵と重なった瞬間に[Enter]キーを押せば、戦闘シーンに入らずに暗殺することも可能。ほかにも、レベルアップや装備品購入という概念もなくアイテムでのみパワーアップするなど、RPGとしてはかなり特殊なシステムを搭載している。

 RPGの肝である戦闘システムも独創的だ。戦闘シーンに入ると、敵と“クルード”が画面の左右に立ち、お互いに向き合った画面に切り替わる。戦闘は1ターンにつき4回の攻防で構成され、画面左上に4本ずつ表示されているパワーゲージの長さを1本ずつ比較して1~4撃目までの行動を決定する。パワーゲージは自動で伸縮しており、プレイヤーが[Enter]キーを押すと4本同時にゲージが止まる。相手よりパワーゲージが長い場合は攻撃、短い場合は防御となる。引き分けのときはラッシュゲージが溜まり、ラッシュゲージが最大になるとランダムで斬りつける“ラッシュ”が発生する。パワーゲージが伸びきったときにをタイミングよく止めることができれば、一方的に攻撃することも可能だ。また、攻撃時に斬りかかるタイミングに合わせて[Enter]キーを押すと、攻撃時はダメージ増加、防御時はダメージを軽減できる。そのほか、ランダムで発生する必殺技の発動入力や、必要に応じて体力回復薬を使用するなど、戦闘中にリアルタイムでキー入力することが多い。さらに、防御力アップやパワーゲージ増加などの効果がある“アクセサリー”や、防御姿勢を表現している“バランスゲージ”なども盛り込まれているため戦略性も高い。うまく戦えばほぼ圧勝できるが、ミスをするとピンチになるという適度な不確定要素も含んでいるので、常に緊張感のある戦闘を楽しむことができる。

戦闘画面。左上のパワーゲージの長さを比較する
戦闘画面。左上のパワーゲージの長さを比較する

 戦闘の独特なシステムもさることながら、本作の最も魅力的な点はキャラクターだ。主人公の“クルード”と“エルウィン”に雇われた傭兵団は、互いの死生観を込めて剣を交えていく。殺人を仕事とする者たちがもつ本物の冷酷さと、その裏に秘められた捨てきれない人間としての感情が描くコントラストは、生々しくも美しい。無類の強さを誇る“クルード”に対し、敵側の人物は一部を除き、みな弱者として死を意識しながら戦いに挑んでくる。契約に殉じる者、手段を選ばず勝ち残ろうとする者、勝負に生き甲斐を感じる者など、傭兵達の生き様は様々だ。そんな命がけで挑んでくる敵に対し、時折殺気をちらつかせながらも涼しく対応してみせる“クルード”の戦いと平行して“クルード”と愛娘“ルーナ”の父娘の内面が掘り下げられていく。それによって、暗殺者の物語でありながらも血生臭い話に終始せず、最後は味わい深い結末を迎えることができるわけだ。

 本ゲームは、レベルアップを気にしなくてよいのでテンポよくストーリーが進み、非常に気持ちよくプレイできる。エンディングまでのプレイ時間はそれほど長くないが、フィールド探索中に展開されるサイドストーリーによって隠しキャラが登場するため、ゲーム内の“達成率”を100%にするには少々時間がかかるだろう。RPG特有の煩わしさやダラダラ感がないので、ゲームを遊ぶ時間は多く取れないが密度の濃いゲームをやりたいという人には最適だ。普通のRPGに飽きたという人にもオススメしたい。なお、本ゲームはシェアウェアとなっており、ライセンスキーを入力するまでは物語の冒頭の部分しか遊ぶことができないので、エンディングまでじっくり楽しみたいという人はライセンスキーを購入しよう。

メニュー画面では入手したアイテムの装備が可能   危機的状況においても悠然としているクルード。主人公としては珍しいタイプのキャラだ
メニュー画面では入手したアイテムの装備が可能   危機的状況においても悠然としているクルード。主人公としては珍しいタイプのキャラだ

【著作権者】ヒデ 氏、辺境紳士 氏
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】シェアウェア 700円
【バージョン】1.01
【ファイルサイズ】20.4MB

□天使の羽休め
http://angelsrest.cool.ne.jp/
□辺境紳士社交場
http://www2.chokai.ne.jp/~frontier/

(藤井 宏幸)


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