.
いじくるレジストリ

【番外編】

「窓の手」の作者、猪川氏との対談が実現!

これからも手軽にレジストリを変更できるツールを作り続けていきたいですね

(02/07/22)

猪川さんの地元で名古屋城を背景に(左が矢吹、右が猪川 正巳氏)
猪川さんの地元で名古屋城を背景に
(左が矢吹、右が猪川 正巳氏)

 こんにちは。「いじくるツール」作者の矢吹です。先日まで掲載されていた連載「矢吹拓也のいじくるレジストリ!」は、お役に立ちましたでしょうか。

 さて、今回は番外編と題しまして、「窓の手」の作者、猪川 正巳氏にレジストリについてお話をうかがいました。私も「いじくるツール」というソフトを作っていますから、同じ“レジストリカスタマイズ系ツール”の作者同士、レジストリについていろいろとお話することができ、うれしく思っています。また、みなさんにとっても興味のあるお話を聞くことができたのではないかと感じています。

「窓の手」作者、猪川さんに会いに行ってきました

矢吹 拓也:(以下、矢吹)  今回は、対談の機会をいただいて、ありがとうございます。まさか、こんな機会がもてるとは思っていませんでした。
 さて、今日はWindowsのレジストリについてのお話をしていきたいと思うわけですが、猪川さんはWindowsのレジストリについて、どのような印象をおもちですか。

猪川 正巳氏:(以下、猪川)  一言でいうには難しいですね。でも、基本的には単なる設定値の集まりでしかないんですよ。レジストリを使って何かをしようと思っても、結局、OSがレジストリを利用している設定値などの範囲内でしかできないんですよね。 猪川 正巳氏

猪川 正巳氏
矢吹:  そうですね。僕の元にもメールで要望が寄せられることがあるのですが、どうやらレジストリに対して「無限の可能性」を期待している方が多いようです。でも結局、レジストリを扱うプログラムに依存しますからね。

猪川:  私たちの作っている“レジストリカスタマイズ系ツール”に関していえば、マイクロソフトが使用する設定値の場所を変更したり、その設定値を読みに行かないように変更されてしまうと、使えなくなる…。はかない夢という感じがします。

矢吹:  たしかに、私たちが作っているような“レジストリカスタマイズ系ツール”は、全く新しいWindowsが出て、Windowsの設定とレジストリの対応関係が変わってしまえば、それに合わせて全部作り替えないといけないですからね。今でさえ、同じことをしたいだけなのに、Windowsのバージョンが変わっただけで、レジストリの編集箇所が異なってしまうことがありますし。
猪川: 「Internet Explorer」をバージョンアップしただけでも起きますね。

矢吹:  以前、「Internet Explorer」のタイトルが保存されているレジストリの位置が、突然、“HKEY_LOCAL_MACHINE(マシン全体の設定が保存されているレジストリキー)”から“HKEY_CURRENT_USER(ユーザー固有の設定が保存されているレジストリキー)”に変わっていたという現象に遭遇したことがありました。こういうことを考えると、僕たちの作っているソフトは、かなりWindowsに依存したプログラムということになりますね。
 そういえば、「窓の手」はWindows XP版を独立させたようですが、これもやはり環境の変化への対応ですか?

猪川:  そうですね。Windows XPでは、レジストリの設定がだいぶ変わってしまいましたからね。これからも統合はせず、ずっと別ソフトとして公開して行くつもりです。
 もともとは全部一緒にしていましたが、Windows XPは、これまでのWindowsとあまりにもかけ離れてしまいました。また今までWindows上からは変更できなかった設定でも、Windows XPの標準機能で設定できてしまうものが多くなってしまったんです。
 Windows XP自身で最初から設定できるものは、Windows XPで設定するという発想のもと、「窓の手 for Windows XP」ではいろいろな機能を削りました。そうしたら、機能の数がずいぶん少なくなってしまって、これならいっそのこと別ソフトとして独立させよう、と考えたんです。基本的には、Windowsが標準でできないことを、「レジストリエディタ」を使わなくても使えるようにするというのが「窓の手」の役割なので。

矢吹:  その削られた機能の分だけ、別の機能を追加するということになりますか?

猪川:  そうですね。要望や情報があればですけれど。

矢吹:  そうですよね。ほしい機能があると要望されたときに、それを実現するために、レジストリのどこを操作すればいいのか、そもそもレジストリの操作で実現できるのかといった情報が必要になりますからね。

猪川:  ほしい機能の要望がメールで寄せられたとき、5通のうち1通くらいは、それに対応するレジストリがあるんですが、残り4通くらいはレジストリでは実現できなかったり、常駐するプログラムを新しく作らなければならなかったりします。
 プログラマーとしての僕のポリシーは、ソフトを常駐させないということですので、そういう機能は作りたくないというのが本音です。ただ、自分でも、新しいOS、Windows XPのレジストリについて、もっと調べていかなくてはと思ってはいるんです。

矢吹:  ところで、「レジストリは怖いという先入観」だけをもって、不安心からメールを出すユーザーもいらっしゃるようですけど、それについてはどう思われますか。 矢吹 拓也

矢吹 拓也
猪川:  「レジストリエディタ」を開いて、思いっきりキーごと削除すれば、Windowsなんて簡単に動かなくなります。そういう意味では確かに怖い。

矢吹:  けれど、ユーザーが誤って操作して壊すということがなければ、そう簡単にレジストリが壊れて環境に影響を及ぼすこともほとんどないと思うんですよ。ハードディスクの故障やレジストリの肥大化など、そのほかの壊れる原因は、不可抗力みたいなところもありますし、そういう細々したところで心配しても仕方ないんですよね。
 にも関わらず、「レジストリを使っている」という理由で、レジストリに設定を保存しているプログラムを嫌う人がいるようです。レジストリの肥大化や、アクセス過多からくるレジストリの破壊を気にしてのことでしょうけれど。

猪川:  確かに今どきは、レジストリを使っていないソフトってあまりないですよね。

矢吹:  そういえばこの前、「このソフトはレジストリを使っていないから安全なソフトです」というアピールをしているソフトがありました。でも僕は、それってちょっと違うんじゃないかと思うんですよ。

猪川:  そうですね。どんなソフトにも設定を保存しておくファイルは必要になると思いますし、そのときにソフト独自のファイルを作成するか、レジストリという大きなデータベースの中に組み込むかの違いでしかありませんから。

矢吹:  レジストリは身近な存在ですし、余計な不安を抱かないためにも、また、余計な期待をしないためにも、Windowsについて多少慣れてきたら、レジストリについて正しい知識を身につけてほしいですね。

 さて、今日はレジストリに関して色々な話を聞くことができました。ありがとうございました。

(矢吹 拓也)

|

【バックナンバー】

番外編:「窓の手」の作者、猪川氏との対談が実現!(02/07/22)

第12回:どんなレジストリが編集できるのか(最終回)(02/07/11)

第11回:手動によるレジストリ編集(02/07/08)

第10回:“レジストリカスタマイズ系ツール”を使ったレジストリ編集(2)(02/07/04)

第9回:“レジストリカスタマイズ系ツール”を利用したレジストリ編集(1)(02/07/01)

第8回:「レジストリエディタ」から見たレジストリ(2)(02/06/27)

第7回:「レジストリエディタ」から見たレジストリ(1)(02/06/24)

第6回:レジストリを変更すると何ができるのか(02/06/20)

第5回:レジストリを知ることとは?(02/06/17)

第4回:レジストリのバックアップ(2)(02/06/13)

第3回:レジストリのバックアップ(1)(02/06/10)

第2回:レジストリの危険性(02/06/06)

第1回:レジストリとは何か?(02/06/03)

トップページへ
矢吹拓也のいじくるレジストリ INDEX
Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.
編集部への連絡は mado-no-mori-info@impress.co.jp まで