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簡単メールサーバー「Kix E-Mail Server Set」

Windows 9x系の常時接続環境で利用できるSMTP/POP3サーバーを設置してみよう

(02/04/19)

「Kix E-Mail Server Set」v1.61
「Kix E-Mail Server Set」v1.61

 インターネットの常時接続環境が普及してきた昨今だが、オリジナルのドメインを取得してWebサーバーを自分で運用している人、もしくは運用を考えている人の中には、できればメールサーバーも自前で用意してみたいという人も多いことだろう。メールサーバーを自前で用意すれば、メールアドレスをいくつでも持てるので目的や用途に応じた使い分けができるし、メーリングリストの運営も可能だ。メールサーバーの容量制限を気にする必要がないといったメリットもある。せっかく手に入れた常時接続環境を活かし、メールサーバー運用も自分でやってみたい… そんな人にオススメなのが、手軽に使えるフリーソフトのメールサーバー「KixE-Mail Server Set」だ。

 「Kix E-Mail Server Set」は、個人など小規模での運用に適したメールサーバーソフトのセット。メールの送信用プログラム“KixDs”、受信用プログラム“KixRs”、受信済みメールをメールソフトに渡すプログラム“KixPOP3”、およびそれらの設定用プログラム“KixCtl”などが同梱されており、設置が簡単なのが特長だ。従来、メールサーバーソフトにはUNIXやWindows NT系で動作するものが多かったが、このソフトはWindows 95/98でも動作する。

 「Kix E-Mail Server Set」を使ってメールサーバーを運用する前には、メールに使うオリジナルドメインを取得しておく必要がある。言い換えれば、メールアドレスを新しく作成することになり、既にどこかのプロバイダーと契約して利用しているメールアドレスをこの「Kix E-MailServer Set」で管理することはできないので注意。オリジナルドメインの取得は、有償もしくは無償のドメイン登録サービスを利用することになる。

 通常、メールサーバーを運用するためには、ドメイン名を取得し、かつ固定のIPアドレスをもつPCが必要だ。さらにそのドメイン名がDNSのMXレコードに登録されていなければならない。MX(Mail eXchange)レコードとは、DNSのデータベースに記録されているメール配信用の“住所録”のようなもので、メールが配信される際、宛先メールアドレスの“@”マーク以降のドメイン名から、配信先となるPOPサーバーのIPアドレスを探し出すために使われる。取得したドメインのMXレコードへの登録は、ドメイン登録サービスを提供しているプロバイダーが行ってくれるが、プロバイダーによって有償、無償、非対応など対応状況が異なるので注意しよう。

 なお、最近のADSLのようにDHCPを使い、固定のIPアドレスが与えられない場合でも、IPアドレスが変わるたびにDNSへ登録し直してくれる“ダイナミックドメインサービス”を利用することでメールサーバーの運用は可能になる。ダイナミックドメインサービスを利用したIPアドレスのDNS登録には、過去に窓の杜でも記事紹介された「DiCE」などのソフトを使う方法があるので、参照してほしい。

□ダイナミックドメインサービスにIPアドレスを自動登録する「DiCE」v1.37
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/06/20/dice.html

 さて、オリジナルドメインを取得できたら、「Kix E-Mail Server Set」をインストールしよう。配布アーカイブを任意のフォルダに解凍し、まずは設定プログラムである“KixCtl”を起動して各種設定を行う。入力するのは、インストールしたフォルダのパス、取得したドメイン名、このサーバーで利用するメールユーザー名とパスワード、ログの記録方法、各プログラムの自動起動の有無、さらに送信時に利用するDNSのアドレスと、送信モードだ。特に難しい設定はないので、オンラインヘルプを読みながら設定を進めていけばとまどうことは少ないだろう。

 なお、送信モード設定では、送信するメールを特定のSMTPサーバーへすべて転送するか、もしくは「Kix E-Mail Server Set」で送信処理を自己解決するか、いずれかを選ぶことができる。通常は[自己解決で送信]にしておけばよい。気を付けたいのは、送信に利用するDNSの設定で、[自動取得]ボタンを使って自動入力すると、プライマリーDNSとセカンダリーDNSの両方が併記される場合があること。そのままではエラーになってしまうようで、プライマリーDNSのみを登録するといいようだ。

 以上でサーバーソフト側の基本的な初期設定は終了だ。続いて“KixDs”、“KixRs”、“KixPOP3”の3つのプログラムを起動すれば、タスクトレイにそれぞれのアイコンが常駐し、サーバーとしての運用を開始できる。

 ただし、これらのサーバーを使ってメールを利用するためには、メールソフト側の設定も行う必要がある。その際、SMTP/POP3サーバーのアドレス入力欄には、上記で「Kix E-Mail Server Set」を動作させたPCのドメイン名を登録しよう。例えばドメイン取得したPCのドメイン名が“ab.cde.fg”になるとすると、SMTPサーバーの欄には“ab.cde.fg”、POP3サーバーの欄にも“ab.cde.fg”と入力する。また“KixCtl”の設定で登録したユーザー名が“foo”であれば、アカウント名に“foo”、電子メールアドレスには“foo@ab.cde.fg”を入力する。すべての設定が終われば、自分宛にメール送信のテストをしてみよう。正しい設定ができてれば、送信したテストメールを受信して読み出すことができるはずだ。

 もしサーバーとなるPCがファイヤーウォール機能をもつルーターを介してインターネットに接続されている場合、ルーターの設定でポート番号25(SMTP)と110(POP3)を開いておくことも忘れずに。また、複数のPCをルーターに接続している場合に、25番ポートと110番ポートへのアクセスをどのPCに割り振るかといったルーター側の設定も、あらかじめ行っておく必要がある。これらの設定方法はルーター機器によって異なるので、購入したルーター機器の取扱説明書に従って設定してほしい。

エラーメールの送信者名を設定
エラーメールの送信者名を設定

 「Kix E-Mail Server Set」には、拡張機能として、エラーメールの送信者名指定と、転送設定がある。エラーメール処理では、メールの宛先が間違っていた場合など、配信エラーを知らせるリターンメールを送付する際のメールアドレスおよび送信者名を、自由に設定することができる。また、転送設定ではメールユーザーアカウントごとに、受信メールを自動で特定のメールアドレス宛に転送することが可能だ。この転送機能を使えば、簡易のメーリングリストとして使うこともできる。ただ、メーリングリストへの参加登録は手動で行う必要があり、送受信したメールに“Reply-To”もつかないので、本格的にメーリングリストを運営するには、他のML専用ソフトやMLサービスを利用するほうが便利かもしれない。

 さて実際に使ってみると、初期設定もそれほど難しくなく、普段は3つのプログラムを起動しておくだけでいいので、非常に手軽に設置運営できるという印象だ。筆者の使用してみた限りでは、動作も安定している。OSさえ安定動作しているなら、Windows 95/98の環境でメールサーバーが運用できるのは大きな魅力だろう。特にADSL環境などでダイナミックドメインサービスを利用して既にWebサーバーなどを運用しているような人には、無料で利用できるお手軽なメールサーバーソフトとしてオススメ。今後はAPOPなどのセキュリティ対応にも期待したい。

【著作権者】Matsujiro 氏
【対応OS】Windows 95/98/NT
【ソフト種別】フリーソフト(カンパウェア)
【バージョン】1.61(02/03/29)

□松次郎の展示室(Vector)
http://www.vector.co.jp/authors/VA028028/

(ひぐち たかし)

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