【第134回】
リアルタイムストラテジー「Empire of the Ants」
超リアルな映像でプレイする、戦うアリたちの生活
(01/06/06)
群れをなす生物は無数に存在するが、社会を構成する生物は、人間と一部の霊長類、そしてアリとハチに限られるそうだ。いや、本当かどうかは知らないが、たしかにアリは他の昆虫とは違う。分泌液を使って情報を共有したり、自分たちよりもずっと大きくて強い敵を倒すこともある。その行動は、まるで統一された意思や知性が存在しているかのようでもあり、よくよく考えると、実は意外にあなどれない連中なのかもしれない。さて、今回紹介する「Empire of the Ants」は、その名のとおりアリの生態をシミュレートした作品だ。プレイヤーはアリたちの帝王として君臨し、彼らを繁栄に導く。
生き残り、自分たちの種を繁栄させるストラテジー
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深い森をイメージしたメインメニュー
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アリを題材にしたゲームというと、ウィル・ライトの「シムアント」を思い出す。シムシリーズの中では比較的マイナーな存在だが、とてもユニークな作品だったと思う。食料を確保し、外敵と戦うアリの生活が、それだけで実に高度なストラテジーであることを教えてくれた。「Empire of the Ants」もまた、「シムアント」が示した「生存=ストラテジー」というコンセプトの延長線上にある作品といっていいだろう。ゲームの目的はただひとつ。生き残って、自分たちの種を繁栄させること。しかしそのためには食料が必要だし、襲いかかる外敵とも戦わなければならない。そこには、緻密な戦略が必要なのだ。
働きアリたちに作業を指示する
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カマキリを倒し、食料とマテリアルを1,000ユニット貯めるのが目的だ
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地下モードに切り替えて、新しく孵化するアリの職業を指定する
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ゲームを起動したら、まずチュートリアルから試してみよう。チュートリアルは、巣の外の部分、つまりフィールドでの操作を学ぶ“Outside Tutorial”と、巣の内側での操作を学ぶ“Inside Tutorial”の2つが用意されている。いずれも対話形式で進められるので、表示されるメッセージに従ってマウスやキーを操作してほしい。
このゲームでプレイヤーがやらなければならないのは、大きく3つの作業に分けられる。まず1つは、卵から孵化する働きアリたちの職業、というか役割分担を決めること。働きアリの職業は、卵の世話をする「ナース」、巣を拡張する「ビルダー」、食料などの物資の運搬する「ワーカー」、そして戦闘を受けもつ「ソルジャー」の4種類。これらの配分と、孵化の優先順位を指示しなくてはならない。
2つめは、ワーカーやビルダーに指示する仕事の内容と、その優先順位の決定。「食料の収集」「巣を拡張するための“マテリアル”の収集」「巣の掃除」「巣の拡張」といった作業の中から、どれを優先して行うかを指示する。通常はとくに指示する必要はないが、特定の作業を集中して行いたいときはきちんと命じたほうがよい。
3つめは、ソルジャーによる偵察と攻撃だ。ワーカーやビルダーなど他の働きアリたちはプレイヤーが直接行動を指示することはできないが、ソルジャーだけはマウスを使って、移動目的と攻撃目的を指示することができる。巣の周囲を調べて食料のありかを見つけたり、敵対する組織のアリやその他の昆虫と戦わせたりするわけだ。
この3つをきちんと指示すれば、アリたちは勝手に増殖し、巣を拡張し、どんどん繁栄を続ける。
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尻の部分が黒っぽいのがソルジャー、赤っぽいのが一般の働きアリ
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制限時間内に必要な食料と物資を蓄えろ!!
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蟻塚を中心に周囲を調査し、食料とマテリアルを運び込む
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チュートリアルで操作の基本を学んだら、次はいよいよ本番だ。メインメニューから“Play a solo game”を選んでクリックする。このシナリオの達成条件は、次の春が来るまでの間……実時間で約15分の制限時間内に、食料を1,000ユニット、巣を拡張するための材料“マテリアル”を1,000ユニットを収集し、さらに襲いかかるカマキリ1匹を倒すことだ。いずれかの条件を満たせないまま春を迎えてしまうと、その場でゲームオーバーとなってしまう。
プレイが始まったら、まず画面を巣の内側に切り替えて、新たに孵化する働きアリの職業を配分する。このシナリオではスタート直後にナース4匹、ビルダー3匹、ワーカー20匹、ソルジャー24匹の計51匹のアリが存在するが、この程度ではとても十分とはいえない。まずナース、ワーカー、ビルダーを新たに3~5匹ずつ孵化させ、ソルジャーを2チーム、つまり16匹程度を追加する。画面をフィールドに戻したら、マップ上のまだ見えていない部分に兵隊アリを派遣して、食料とマテリアルの位置を特定する。最初に設定したアリが孵化したら、さらにナース、ワーカー、ビルダーを3~5匹追加。特に地上で作業を行うワーカーは、カマキリの攻撃によってすぐに数が減ってしまうので、25~30匹程度を保てるように適宜追加しよう。
カマキリは出現と同時に速攻で倒すべし
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カマキリ来襲!! 圧倒的な強さで他の昆虫をなぎ倒す
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クリアするためのポイントは2つだ。まず1つは、できるだけ早くカマキリを駆除すること。カマキリは、雷雨とほぼ同じタイミングで出現する。発見したら働きアリを巣の中に退避させ、ソルジャーを派遣して一気に倒すこと。ソルジャーは5チーム、つまり40匹用意すれば十分だ。カマキリの駆除に遅れると、働きアリが次々に食べられてしまうだけでなく、食料とマテリアルを集めるための時間がなくなってしまう。逆にいえば、カマキリの出現までに十分なソルジャーを生産し、戦いに備えておかなければならない
2つめは、マテリアルの収集を早めに行うこと。食料は比較的豊富なので、すぐに1,000ユニット以上集めることができるが、マテリアルは量が少なく、しかも供給拠点がマップ上に2カ所しかない。プレイが始まったらソルジャーを使って場所を確保し、早い時期から集め始めよう。食料の備蓄が2,000ユニットを超えた時点で、働きアリの仕事をマテリアルの収集のみに限ってしまってもいいだろう。
見た目の奇抜さとは別に、正統派のリアルタイムストラテジー
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ソルジャーの集団を派遣して、ついにマカキリを倒した
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かなり変わった趣向の作品だ。アリの生態をモチーフにしているものの、資源の収集や職業の配分、兵力の増強など、実際に行うことはマイクロソフトの「エイジ・オブ・エンパイア」や「ザ・セトラーズ」に近い。見た目の意外さとは裏腹に、ゲームの内容そのものは正統派のリアルタイムストラテジーだ。
ただ、ちょっと奇をてらいすぎた感も否めない。たとえば通常のリアルタイムストラテジーならフィールドマップだけで十分だが、この作品ではアリを使っているために、フィールドと巣の内側の2画面に分かれている。そのぶん操作は煩雑になっているのに、ゲーム性にはあまり貢献していないように感じた。戦闘も、結局は数の勝負で、いまひとつ戦術性に乏しい。「ならば、どうすればいい?」と問われても困るが…とにかく、昆虫の生態を感じさせる部分がもう少し強く演出されていればよかったのに、と思う。
製品版に関する情報には不明なところも
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必要な条件をすべて満たして、無事最初のシナリオをクリア
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デモ版では、チュートリアルと、ソロゲームの最初のシナリオを試すことができる。内容については、すでに説明したとおりだ。このデモ版は、ネットワークを経由した最大8名までのマルチプレイにも対応している。
製品版については不明なことが多く、製作元であるMICROIDSの公式ホームページにも、ソロゲーム用のシナリオが何本用意されているのかといった情報は見当たらなかった。現在は英語版のほかにフランス語版が販売されている。
発売元 | MICROIDS |
価格 | オープンプライス |
発売日 | 発売中 |
(ants_uk_demo.exe、115.2MB、ゲームデモ)
□「Empire of the Ants」のホームページ
http://www.microids.com/english/Gamesants.html
http://www.microids.com/docs/anglais/games/ants_story.html
□「Empire of the Ants」のダウンロードページ
http://www.3dfiles.com/games/empireoftheants.shtml
(駒沢 丈治)
Copyright (c) 2000 MICROIDS.