【第9回】

オンラインソフト“のろけ話”(前編)
~付き合いの長いソフトたち~

(01/03/19)

もう何年目の春だろう

 そろそろ卒業シーズンも終わり、新入学や就職の準備に追われている人も多いことだろう。春は世代交代の季節でもある。一方、オンラインソフトの世界は毎日が世代交代の季節といっていいようなもので、特に窓の杜をよく見て下さっている読者の皆さんなら、日々登場する新しいソフトをダウンロードして試してみては、より自分にとって使いやすいものを取捨選択しているのではないだろうか。

 かくいうぼくも毎日いろんな新しいソフトを数多く試しているのだが、そんな中で逆に昔からずっと使い続けているソフトというのもある。同じような機能を持つソフトはたくさんあるし、“浮気”をして乗り換えを検討する機会は何度もあるのだが、いい意味でどうしても乗り換えられずにいる。今回のよもやま話ではそんな、いわば長年連れ添っている女房のようなオンラインソフトについて、付き合いはじめたきっかけやその魅力をあれこれ書いてみようと思う(ちなみにぼくは独身なので念のため)。

お付き合いは最初が肝心

“「秀丸エディタ」は“MIFES風”にキーカスタマイズできる
「秀丸エディタ」は“MIFES風”に
キーカスタマイズできる
 オンラインソフトというものの使用歴はようやく10年、ネットワークが発達する前にパソコン雑誌などで配布されていたものを含めた“フリーソフトの使用歴”という意味ならそろそろ20年になるぼくだが、世にWindowsが登場して以来、最も付き合いの長いオンラインソフトというと、「秀丸エディタ」になる。もちろん現在でもバリバリの現役で使っているし、今この原稿を書いているのも「秀丸エディタ」だ。

 最初の出会いはWindowsを使い始めたのとほぼ同時期だから、もう7~8年の付き合いになるだろうか。それまではMS-DOS上で動く「MIFES」という市販パッケージソフトのテキストエディターを使っていたのだが、MS-DOSからWindowsへ移行するにあたり、Windows版の「MIFES」が当時まだ出ておらず、手になじんだ「MIFES」とほぼ同じキーカスタマイズが可能だった「秀丸」を“MIFES風”のキーに変えて使い始めたのが最初だった。実は今でもぼくは「秀丸」をMIFES準拠のキーカスタマイズで使っていて、例えばファイル保存メニューはファンクションキーの[F1]キーで呼び出しているし、文字列検索や置換のメニューも[SHIFT]+[F3]キーで呼び出している。

 もちろん「秀丸」の良さはキーカスタマイズだけではないし、それはあくまできっかけにすぎない。例えるなら、初恋の「MIFES」を忘れられず、最初は似た面影の「秀丸」に惹かれたという感じだろうか。新しい恋人をカスタマイズすることによって、初恋の人と同じ髪型にして同じ服を着させているようなものだから、「秀丸」には失礼この上ないことかもしれない(笑)。だが実際に付き合っていくと、動作が軽く読み込みが速いとか、正規表現対応の高速なGREP、C言語風の高機能マクロ搭載など「秀丸」自身がもつ完成度の高さを次第に実感できるようになり、今ではすっかり手放せなくなってしまっている。

 テキストエディターのようにキーボード入力が中心となるソフトでは、特に最初に覚えるキー操作での慣れが後々まで引きずってしまう。いわゆる“指が覚えてしまう”というヤツだ。一旦そのソフトのキー操作体系を指が覚えてしまうと、異なるキー操作をしなければならないソフトに乗り換えるのはかなり困難になる。実際、ぼくは一時期「秀丸」にない機能をもつ他のテキストエディターへ乗り換えを試みたことが何度もあるのだが、いずれも主にキー操作体系でつまづいて、すぐ「秀丸」に戻ってしまった。“三つ子の魂百まで”ということわざもあるが、最初に覚える“初恋”のソフトには、一生影響を受けるといっても過言ではないかもしれない。

自分好みのソフトに変わる

“「AL-Mail32」に「ALGlance plugin」を組み込み3ペイン表示に
「AL-Mail32」に「ALGlance plugin」を
組み込み3ペイン表示に
 「秀丸」の次に長く使っているオンラインソフトは、メールソフトの「AL-Mail」だ。インターネットを始めた学生時代、ネットに詳しい同級生に勧められて使い始めたのが最初だったが、当時オンラインソフトのメールソフトとしてはほかに「Winbiff」や「Eudora」くらいしか選択肢がなく、「AL-Mail」は正式版が出る前のβ版としてフリーソフトだったというのも使い始めたきっかけの一つだ(現在はシェアウェアになっている)。ミもフタもない言い方をあえてすれば、当時の「AL-Mail」には“隣席の女の子”のようなお手軽さがあったわけだ。

 メールソフトではその後「Becky!」や「電信八号」などが世に登場し、ぼくも乗り換えを試みるのだが、やはり操作性やウィンドウ構成が最初におぼえた「AL-Mail」とはかなり違い、完全な乗り換えには踏み切れずじまい。さらに、「AL-Mail」にはプラグインやヘルパーソフトという形でさまざまな支援ソフトが多数あることも、今まで使い続けてきた理由の1つにある。いわばどこにでもいそうなお手軽な“隣席の女の子”が、化粧品を使ったりフィットネスクラブや習い事などに通うことで、内面的にも外面的にもあか抜けた美人になる、といったところだろうか。

 標準ではもたない機能を追加できるプラグインという形態は今でこそ珍しいものではない。しかし「AL-Mail」が出た当時は、メールソフトでプラグイン仕様をもつものはかなり少なかったように思う。APIが公開されて「AL-Mail」の作者でなくても機能追加プラグインを作れるようになって、多くのプログラマーが「AL-Mail」用のプラグインを作って公開し、ユーザーは自分にとって必要なプラグインだけを入手して使えるのが面白く感じたものだ。それだけ当時「AL-Mail」のユーザーが多かったということも、多くの支援ソフトが作られた背景にある。

 「AL-Mail」はその後32ビット化された後、1998年5月リリースのVer1.11を最後にもう3年近くバージョンアップされていない。だが、新しいプラグインはいくつか登場しており、ぼくも最近だと「AL-Mail32」のメインウィンドウを3ペイン表示するプラグインを入れたり、iモードのメールアドレスに送信するとき文字数チェックを行うプラグインを入れるなどして、現在でも愛用している。プラグインによって「AL-Mail」は少しずつ進化しながら、これからも長く使っていけるだろう。

まだまだあります

 今回は最も長い付き合いになるオンラインソフト2本について、思い出や思い入れを交えながら紹介してきたが、ほかにも年単位でずっと使っていて手放せなくなっているソフトはいくつかある。その多くは“定番”とも呼ばれるソフトなのだが、窓の杜のライブラリに入っていないソフトもある。次回のよもやま話ではそれらを簡単に紹介しながら、ぼくがどうしてそれらを手放せなくなってしまったのか、どういうソフトが長く愛用されるようになるのかといったことなどをぼくなりに考え、書き綴ってみようと思う。どうぞお楽しみに。

(ひぐち たかし)

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