【第1回】

メールからのウイルス感染に要注意!

(01/01/12)

 最近、新聞やテレビでもウイルスの話題がたくさん取り上げられるようになってきました。実は筆者や窓の杜編集部にも、ほぼ毎日のようにウイルスを含んだメールが届いています。ウイルスを含んだメールを受信してしまうと、ウイルス感染の可能性と隣り合わせになってしまいます。それでは、このようなメールを媒体としたウイルス感染から自分のパソコンを守るためには、どのようにすればいいのでしょうか。

 この連載では、パソコンを使ううえで考えるべき身近なセキュリティ問題について、今日から10回にわたってテーマ別に解説していきます。この連載を読むことによって、日頃から自宅でインターネットにアクセスしたり、オンラインソフトをダウンロードして楽しんでいる人が、自分にできるセキュリティ対策にはどんなものがあるかを理解してもらえれば幸いです。この連載では、おもに個人ユーザーの立場で解説するので、大規模なネットワークを利用する企業のユーザーには当てはまらないこともあるので注意してください。

 本題に入る前に、簡単に自己紹介しておきましょう。私はこれまでに、某ウイルス対策ソフトメーカーでソフト開発などに携わったほか、セキュリティ情報を扱う団体である情報処理振興事業協会のセキュリティセンターで、ウイルスやセキュリティに関する業務などを行ってきました。その後、ウイルスやセキュリティに関する話題を中心にライター活動をしていますので、私の経験がみなさんのお役に立てればと願います。

増え続けるウイルスの被害

ウイルスがあなたのパソコンに忍び寄る
ウイルスがあなたのパソコンに忍び寄る
 ここ2~3年の間、インターネットが普及するのに伴い、ウイルスの被害事例も増大してきました。ウイルスが流行しているというニュースが、新聞やテレビで当たり前のように報道されるようになり、私もある程度予測していたものの、驚きを隠すことができません。特に最近はメールからのウイルス感染が相次いでおり、印象的だったのが、一昨年に流行した「メリッサ」と呼ばれるマクロウイルスです。Wordファイルが添付されたメールが送られてきて、添付ファイルをWordで開くと感染します。パソコン内の他のWordファイルにも感染していき、さらにOutlookユーザーの場合、アドレス帳に登録しているうちの50人に、ウイルスを勝手に送信してしまうというもので、特に海外で大流行しました。

 また、最近では「MTX」と呼ばれるウイルスが世界中で猛威を振るっています。このウイルスは感染者がメールを送ったと同時に、ウイルスが添付されたメールをもう一通送ってしまうというもので、添付ファイルを実行してウイルスに感染すると特定の文字列を含むアドレスへのメール送信や、ホームページの閲覧、ファイルのダウンロードなどができなくなります。実際にウイルス対策ソフトメーカーのホームページにアクセスできなくなった事例もあり、この場合自分自身ではウイルスに対処することが不可能になるという、かなり悪質なウイルスです。

 セキュリティ情報を扱う情報処理振興事業協会に寄せられた被害件数を見てみると、2年前に大流行したメリッサが141件であるのに対し、MTXは発見されてからたった4か月の間に、1,720件もの被害が報告されています。変種も数多く見つかっており、今後もMTXの被害報告が増えるのは間違いないでしょう。このような事実を考えると、日増しにウイルスに感染する危険性が増大しているといっても過言ではありません。

ウイルス被害を受けるのは自分だけじゃない

 メールで感染するこれらのウイルスに共通する点として、感染すると知らないうちにウイルスをばらまいてしまうことがあげられます。それも普段自分がメールのやりとりをしている相手に対してです。逆に考えると、親しい人から来たメールこそウイルスの感染源になる可能性が高いといえます。知らない人から突然来たメールなら、ひょっとしたらウイルスではないだろうかと冷静に疑うことも可能ですが、親しい人から来たメールに添付ファイルがあれば、安心して実行してしまう可能性が高いと思われます。たとえ親しい人からのメールであっても、心当たりのないファイルが添付されていたら絶対に実行してはいけません。届いたメールに不明なファイルが添付されていたら、電話などのメール以外の方法で直接送信者に問い合わせてみるとよいでしょう。

 これらのウイルスに感染してしまうと、自分がアドレス帳に登録している人に対して自動的にメールウイルスを送ったり、自分がメールを送ると同時にウイルスを送ってしまうなど、予期せぬ事態が発生します。たとえ悪気がなくても、知らないうちに自分がウイルスの感染源になってしまうのです。自分としては被害者のつもりでも、自分が差出人のメールが原因で、友人のパソコンがウイルスに感染してしまったら、あなたのせいだといわれても仕方ありません。

自分にできるウイルス対策を知ろう!

 他人からウイルスをもらわないためにも、また他人にウイルスを広めないためにも、日頃からウイルスに対して敏感になっておく必要があります。ウイルスからの被害を防ぐ最良の方法は、なんといってもウイルス対策ソフトを常用することでしょう。最近のウイルス対策ソフトには、メール保護機能やリアルタイム検索機能などがありますから、メールでウイルスを受信した瞬間や、ウイルスが動作する直前に発見でき、ウイルスの感染を未然に防ぐことができます。ウイルス対策ソフトは、ウイルスを認識するためのパターンファイルを元にウイルスを検査しています。最近では、ほとんど毎日のようにウイルスが発見され、パターンファイルが更新されています。たとえウイルス対策ソフトであっても、ウイルスがパターンファイルが古くければ最近発見されたウイルスを検出することができませんので、パターンファイルは常に最新のものにしておく必要があります。

 ところで、どんなに頻繁にウイルス対策ソフトのパターンファイルを更新しても、未発見のウイルスを検出することは不可能です。今こうしている間にも、誰かが新たなウイルスを作成しているのが現状ですから、それまでのパターンファイルでは対応できなくなってしまいます。とはいえ、広大なインターネットの中、自分のところにメールでウイルスが届く頃には、おそらくインターネットのどこかですでに問題が発生し、その情報がウイルス対策ソフトのメーカーに届けられ、パターンファイルも更新されているはずです。そう考えると、最新のパターンファイルに更新することでほとんどの被害から逃れることができるといえます。

 もしもウイルスを含んだメールを受信したことが判明したら、速やかにメールごとパソコンから削除しましょう。知人から来たメールの本文を残しておきたい場合でも、ウイルスの部分だけ削除しようなんて考えないことが得策です。添付ファイルを削除しようと選択した瞬間に、操作ミスによりウイルスに感染することもあるのです。メールの本文が重要であれば、コピー&ペーストで別のテキストファイルなどに保存するなどして、元のメールは必ずパソコンから完全に削除しなくてはなりません。また、興味本位でウイルスを保存しておくのも問題です。ウイルスと発見した直後なら鮮明に覚えているでしょうが、しばらくたってから「なんのファイルだろう?」と思って実行してしまうことも十分に考えられます。

 残念ながらパソコンがウイルスに感染してしまったとしたら、まず最初にウイルスに感染したパソコンをネットワークから切断し、ウイルス対策ソフトのメーカーなどにメール以外の手段で連絡して、対処方法を相談しましょう。そして、ウイルスを送ってきた人に感染している旨を伝える必要があります。また、ウイルスに感染している間にメールを送信した可能性のある相手に注意を促すことも大切です。この場合、必ず電話などメール以外の手段で連絡するようにしてください。「ウイルスに感染しているよ」とか、「ウイルスが届いているかも」といったのメールを、ウイルス付きで送ってしまうことになりかねません。ウイルスに感染したことが判明しても、ただ落胆するのではなく、自分の周りの人やパソコンをウイルスの被害から守らなくてはなりません。

転ばぬ先のバックアップ

外部メディアにバックアップしよう
外部メディアにバックアップしよう
 ウイルスの中にはファイルを破壊する活動をするものもあります。自分がウイルスに感染したとき、自分が作成した大切なデータが破壊されると大変です。パソコンやアプリケーションに被害がおよんでも、パソコンショップなどで新しいものを購入すれば、金銭的な被害はありますが復旧は可能です。しかし、自分で作成したデータは、どこでも購入することができません。自分が苦労して作ったワープロ文書や表計算ファイル、デジタルカメラで撮った大切な思い出の写真などは、一度失うと二度と手に入れることができないのです。そのため、ウイルス感染の被害があっても必ず復旧できるように、日頃からデータのバックアップを残しておきましょう。

 バックアップといっても方法はさまざまです。どのような方法でバックアップをとるかは自分次第ですが、私は“目の前のパソコンがなくなっても困らない”ことを目安にすることをおすすめします。これなら、デスクトップパソコンがウイルス感染によって壊れても、仮にノートパソコンが盗難にあったとしても、何とか元の状態に復旧することが可能です。そのためには、外部メディアに保存することが前提になります。データだけを保存する方法が分からなければ、アプリケーションのインストール先フォルダをまとめてバックアップしたり、作成したデータは必ず“マイドキュメント”などの決まったフォルダに保存するなど、自分なりの決まりを作っておくとバックアップしやすくなります。もちろん、バックアップに使った外部メディア自体が壊れたり、盗まれたりしては困りますから、バックアップメディアの管理にも注意が必要です。

 さて次回は、最近人気のインターネットオークションについてお話しします。欲しいものが安く手に入るのが魅力ですが、その裏で詐欺事件も多発しています。そこで次回は、どうすれば安心してオークションサービスを利用できるのかについて考えていきましょう。

(山崎 真裕)

トップページへ
はじめよう! 自分にできるセキュリティ対策 INDEX


Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.
編集部への連絡は mado-no-mori-info@impress.co.jp まで