I MADE IT!
〜オンラインソフトの誕生物語〜


【第3回】

右クリック画像ビューワー「Context Viewer」の作者、Schezoさん

(00/12/19)

 オンラインソフトを使っていて、「なぜこのソフトが産み出されたのだろうか?」という思いをもったことはないだろうか。オンラインソフトには、作者のアイデアや思いやり、使命感などが詰まっている。普段何気なく使っているオンラインソフトの誕生ストーリーを知ると、ますます愛着がわくかもしれない。ということでこの連載では、ソフトを制作した作者自身に会って、ソフト誕生の内幕にスポットライトを当ててみたい。第3回目は、右クリックメニューで画像ファイルをプレビューできる「Context Viewer」など、Windowsを使いやすくするシェル拡張ソフトをリリースしているSchezoさんを訪問した。

鷺沼? 鵠沼?

鷺沼駅前で
鷺沼駅前で

 Schezoさんとインタービューの約束をした東急田園都市線の鷺沼(さぎぬま)駅へ向かう。川崎市宮前区に住むSchezoさんの最寄り駅だ。待ち合わせ時間に遅れないよう、駅前探検倶楽部のホームページで電車の時間を確かめておいた。それにしても鷺沼って、東京歴の短い筆者にはなかなか慣れない地名だ。一応漢字を見ると読めるのだが、頭で思い出したときに鷺沼なのか、鵠沼(くげぬま)なのか迷ってしまう。漢字の意味もサギと白鳥なので、イメージが似ていて仕方ないのかもしれない。とりあえず、パソコン上ではコピー&ペーストできるから、間違いなく検索して待ち合わせの時間どおり到着できた。

 無事Schezoさんと会うことができ、近くのファミリーレストランにでも…と考えていたが、なぜか最初にSchezoさん宅におじゃますることになった。駅から徒歩3分、緊張のままSchezoさんのお母さんにご挨拶。Schezoさんから窓の杜についていろいろ質問されて、質問するために来たはずが立場がすっかり逆転してしまった。気を取り直して、質問開始。Schezoさんは現在21歳で、奈良県で生まれて小学校3年生までの10年間を関西で過ごし、お父さんの転勤で神奈川県に引っ越したそうだ。そして現在は神奈川県藤沢市にある慶応大学環境情報学部の3年生、進んだインターネット環境で有名になった湘南藤沢キャンパス(通称SFC)に通っている。

シェル拡張ソフト万歳!

Context Vierwer
Context Vierwer
 ここで、Schezoさんがリリースしているソフトを紹介しておこう。初めて公開したソフトは、'99年5月の右クリックメニューで画像ファイルをプレビューできる画像ビューワー「Context Viewer」だ。右クリックメニューで画像ファイルをプレビューできる画像ビューワーで、ただサムネイルを表示するだけでなく、画像ファイルのサイズや色数、ファイルの更新日時などの情報も表示することができ、HTMLファイルを作成する際やエクスプローラで画像ファイルを管理するのに便利だ。

 その後、右クリックメニューからメールを送信できる「Context Mailer」や、IEのツールバーに検索エンジンのキーワードを入力して直接検索できる「Search Bar」など、アイデアを活かした便利ソフトをリリースし続けている。もっとも新しいソフトは圧縮・解凍ソフトの「Lhaplus」だが、実は筆者が「Lhaplus」のリリースを知ったときは少なからずショックを受けた。なぜなら、圧縮・解凍ソフトは、現在オンラインソフトでもっともライバルの多い激戦区だし、アルゴリズムを追求するために非常に時間がかかると聞いているからだ。

 とは言ったものの、「Lhaplus」もまた優れた圧縮・解凍ソフトのひとつだ。DLL不要で多数の圧縮形式に対応し、圧縮形式ごとに細かな設定をすることができる。コレさえ入れておけば、圧縮・解凍に関しては基本的にできないことはないといってもいいほど。筆者としては、「Context Viewer」や「Context Mailer」など、これまでにないSchezoさんのアイデアの詰まったシェル拡張ソフトの登場を期待している。圧縮・解凍ソフトはソフト作者の総合力が試されるジャンルだけに、プログラマーの立場からすると大きな魅力を感じるのだろうが、Schezoさんにはシェル拡張ソフトのことも忘れないでほしい。もっとも「Lhaplus」も、右クリックメニューに項目が追加されて手軽に使用できるため、シェル拡張ソフトとも言えなくはない。

パソコン歴、プログラマー歴3年

Schezoさんのソフト制作現場
Schezoさんのソフト制作現場
 1年半で6本のソフトをリリースしたSchezoさん。Windowsの内部を詳しく知っているだろうから、さぞかし幼い頃からパソコンに触れてきたのだろうと思ってたずねたら、パソコンを使い始めたのは高校3年生からという。当時お父さんが使っていた98ノートを譲ってもらったのがきっかけだ。ただ、それ以前から雑誌などを読んだりして、プログラミングに興味があったそうだ。パソコンを使うようになってすぐにプログラミングを始め、パソコン歴とプログラミング歴のどちらも3年ということになる。

 それでは、Schezoさん自身ではどのソフトが気に入っているのか聞いてみたところ、一番は「Context Mailer」とのこと。2週間程度で制作したソフトだが、公開後たくさんの反響があって一気に有名作者に躍り出ただけに、ソフトに対する愛着も深いのだろう。逆にもっとも制作に苦労したソフトは「Search Bar」だそうだ。ツールバー内の入力フォームは扱いがややこしいらしく、たとえば[BackSpace]キーで文字を削除するにも、Windowsの動きを横取りする“フック”をしなくてはならないらしい。また現在は直接レジストリを変更しないと検索エンジンを追加できないが、いずれはコントロールパネルで使用する検索エンジンを手軽に選択できるようにするつもりでいるそうだ。

 大学から帰ってほぼ毎日プログラミングにいそしみ、そのうち半分は趣味のフリーソフト制作、もう半分はアルバイトの業務ソフト開発に費やしているそうだ。今のアルバイトは、SFCの先輩にベンチャー企業を紹介してもらって始めたそうだが、その企業のメンバーもSFCのOBだという。おそらく、趣味のソフト制作と厳しいクライアントのいる業務ソフト開発の絶妙なバランスが、Schezoさんのプログラミング技術向上のもとになっているのだろう。

Schezoの由来

 趣味とアルバイトの2種類のプログラミングだけでもかなり多忙なSchezoさんだが、大学では“ラップトップコンサルタント”というグループに所属して活動している。“ラップトップコンサルタント”とは、学生が大学で購入したノートパソコンを使用する際の、悩み相談を受け付けるグループで、Schezoさんにとってはサークル活動のようなものらしい。ある日、このグループ内で“ぷよぷよ”のゲーム大会をやったときにSchezoさんがかなりの強さを発揮したらしい。それで“ぷよぷよ”の中でも強いキャラクターの名前をとって、Schezoというニックネームがついたそうだ。

オンラインソフト作者の環境について

かなりのパスタ好き(本文とは関係ありません)
かなりのパスタ好き
(本文とは関係ありません)
 人気オンラインソフトを制作し続けるのはさぞかし大変だろうと思い、Schezoさんに聞いてみたら、オンラインソフトを制作すると、いろんなホームページで紹介してもらえるので、オンラインソフト作者の環境は決して悪くないと感じているとのこと。ミュージシャンやCGアーティストを目指している人達と比べたら、すぐに紹介されるうえに、ユーザーからの反響もダイレクトに得られるのがいいそうだ。また、チャンスがあれば、ほかのオンラインソフト作者とも話してみたいとのことだ。

 ソフトの開発環境は、当初Delphiを使用していたが、現在はC++ Builderに移行中とのこと。前述した「Search Bar」の改良についても、まずは開発環境を移行することを優先しているため、しばらく時間がかかるようだ。シンプルかつ強力なソフトが多いため、英語版のリリースについて考えていないのか聞いてみたが、まずは日本語版の完成度を高めてからにしたいとのこと。確かにソフトの機能が固まる前に英語版を出してしまうと、バージョンアップやサポートに2倍手間がかかるので、仕方のないところだろう。ただ、ホームページのアクセス解析をしてみると、韓国語の翻訳サイト経由でのアクセスも少なくなかったらしく、我々が英語版ソフトを使うように、便利なソフトには国境がないといったところだろうか。

 現在は完全にひとりで開発しているわけだが、誰かとコラボレートしてオンラインソフトを制作するとしたらどんな人がいいかとたずねたら、迷わずデザイナーという答えが返ってきた。とくに“クターシリーズ”を制作しているギガ連射については、「スゴイし、うらやましい」という感想。やはり、アイコンを作成したりウィンドウのデザインを自分だけでやるのは大変だろう。また、シェル拡張ソフトの作成にはWindowsを知り尽くす必要があると思うが、各Windows OSの違いも自分の経験だけでソフトに反映させなければならないので、考えただけでも大変そうだ。いずれはメールソフトにも挑戦したいという考えをもっているそうなので、力強い協力者が見つかることを期待したい。

将来の夢はプログラマー

プログラミング本がいっぱい
プログラミング本がいっぱい
 現在大学3年生ということで、大学院に行かなければあと1年ちょっとで就職することになる。卒業後どんな仕事に就きたいのか聞いてみたら、やっぱりプログラマーを目指したいとのこと。ただし、大企業の中で窮屈に過ごすよりも、ベンチャー企業でやりたいことを見つけて、思う存分ソフト制作に取り組みたいそうだ。ベンチャー企業といっても、プログラミングから離れて経営者になるつもりは全くないらしい。全国のソフト開発会社のみなさん、鷺沼にダイアモンドの原石が転がっていますよー。

 会社の忙しさに追われて、オンラインソフトのプログラミングをやめてしまう作者も少なくないが、Schezoさんにはそうなってほしくないものだ。ただ話を聞いてみて、Schezoさんにはまだまだいろいろなアイデアがあるようだから、これからもアイデアたっぷりのオンラインソフトをリリースし続けてくれることだろう。

□ほえほえ.com
http://www.hoehoe.com/

(小山 文彦)

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