それいけ! 窓の仲間たち


【第2回】

かわいい無表情キャラ「クター」を産んだ「ギガ連射」

(00/07/07)

 インターネット経由でダウンロードして手軽に使えるオンラインソフト。パッケージソフトと違って手作り的な部分も多いが、それを日夜一所懸命制作している作者の姿はなかなか見えにくい。そこで窓の杜は、学校のサークルや有志によるオンラインソフトの制作現場を訪ねてみることにした。

 第二回目の今回は、かわいい無表情キャラ「クター」が活躍するアクションゲームシリーズを次々とリリースしている、北海道札幌市のオンラインソフト制作グループ「ギガ連射」を訪問した。

会社の元同僚がギガ連射として再会

定例会議を行う区民センター
定例会議を行う区民センター
 ギガ連射のメンバーは、全員が札幌市在住。ギガ連射の設立以前、メンバー全員が市内のソフトメーカーに勤務していた。その後、それぞれ独立して自分の道を模索しつつ進んでいたところ、ギガ連射のグループ代表・小林氏がメールでメンバーを誘い入れ、再会してギガ連射としての活動がスタートした。

 ギガ連射のソフト制作は、それぞれの自宅でいわゆるSOHOスタイルで進められている。隔週土曜日に区民センターを利用して行われる定例会議でアイデアを出し合い、日々メーリングリストで議論を重ねながら、新しい企画やソフトが生まれている。ただし彼らはまた、定例会議以外でもメンバー同士で積極的に会うようにして、議論を重ねることで出てくるインスピレーションも大切にしているそうだ。このデジタルに頼り過ぎない姿勢が、かわいらしいキャラクターを産んだ理由のひとつかもしれない。

 ギガ連射のメンバー5人のうち、2人がプログラマーで3人がデザイナー。小林代表によると、グループ内での役割分担もはっきりしており、各メンバーが各分野のプロフェッショナルで、お互いに補完しあいながらクオリティの高いものを生み出せるところがグループのメリットになっているそうだ。彼らに言わせると、いっしょに制作活動をしているなかで、ギャグが出てきて笑い合ったり、いいものをいいと言う感動を共有できるところが楽しいそうだ。好きなことに妥協なく取り組んでいるためにたいへんな面も多いが、ギガ連射の活動がたまらなくおもしろいという。

 クターシリーズはすべてフリーソフトとして配布されているため、現在はまったくギガ連射としての収入はない。そのためメンバー各人がギガ連射の仕事と並行して、個人的な仕事も抱えているのが実状だ。しかし、今後はメンバー全員がギガ連射を活動の中心にシフトし、クターとギガ連射を有名にしていくことで意見が一致しているそうだ。

クター誕生

クターのナワトビ
クターのナワトビ
 クターシリーズは、かわいい無表情キャラ「クター」が主人公のアクションゲームシリーズ。クターたちが住む島“テクノアイランド”を舞台に、連続なわとびゲーム「クターのナワトビ」から、最新作の早押しクイズゲーム「クターのQ」までの5本が現在までにリリースされている。見ているだけで笑みがこぼれそうなかわいいキャラクターと、マウスだけで操作できる手軽さが特長で、年齢を超えて楽しむことができるため、クター人気は着々と高まっている。

 6月7日に発表された「オンラインソフト大賞2000」で、クターシリーズは入賞作品に選ばれた。その授賞式で小林代表が冗談まじりに「打倒ポストペット」と発言したという逸話がある。実はギガ連射も当初はメールソフトを作ろうとしていた。そこで、メールソフトにキャラクターを登場させるステージを作る際に、雰囲気をつかむために仮に配置したキャラクターが「クター」だった。このクターがギガ連射のメンバーにあまりにも好評だったため、クターだけを抜き出してミニゲームを作ることになった。そして第一弾として「クターのナワトビ」をリリースしたところ、予想以上の反響があり、ギガ連射はクターのアクションゲームを中心に制作していくことになった。

 ギガ連射はクターシリーズの制作に関して、マウスのボタン2つあればいろいろなことができるはずという姿勢を崩さない。彼らはマウスだけでプレイできることにこだわり、誰でも楽しめるゲームを追求していきたいと語る。ソフト制作についても当面クター1本で進めていき、インターネットを軸にマウスでどんな遊びができるかを考えていくつもりだという。現在リリースしているのはWindows用のアクションゲームのみだが、FlashやJavaなどの技術を使ってWebブラウザー上でプレイできるようにしたいという構想もあるそうだ。

 パソコンソフトのキャラクターとして大ヒットしたポストペットについては、時代を変えたソフトだとギガ連射一同高く評価しているとのこと。パソコン初心者がためらいなく使うことができるところや、ユーザーがポストペットというソフトを使うためにパソコンという高価なハードを購入するところなどがその理由だ。メールソフトという同じジャンルでの競合はなくなったが、ギガ連射のメンバーは「いつかは別のジャンルからポストペットを超えていきたい」と抱負を語ってくれた。

東京進出計画?

 小林代表は、ギガ連射の活動の幅を広げるために東京進出も視野に入れているという。パソコンの世界にとどまらずクターを広く紹介する方法を模索中で、Webにこだわらずキャラクターグッズやコンシューマーゲーム機にも展開していく考えだ。すでにクターの魅力に引き寄せられ、熱心に札幌まで足を運ぶ関係者もいるらしく、パートナー選びも始まっている。小林代表は「将来的には東京タワーを見下ろすほどの高層ビルを建てる」と冗談めいて言うが、楽しそうに語る姿を見ているとすべてが冗談とは思えなかった。

 国内での人気を着々と伸ばしているクターシリーズだが、英語版の制作や海外進出の可能性について小林代表に尋ねたところ、まずは国内でしっかりと地盤を固めていきたいとのことだった。ただ、クターについて「シンプルであることは相手を選ばない」との自信もあり、ギガ連射に焦りはないようだ。なんと、台湾のメディアではすでに紹介されたことがあるそうで、最近は台湾のユーザーからの問い合わせも多いという。

第一回「クターのロデオ」大会!

クターのロデオ
クターのロデオ
 ここで、日々クターをやり込んでいるはずのギガ連射メンバーによる、第一回「クターのロデオ」大会を開催することになった。開催地は、Web担当デザイナーのDEZYさんと素材担当デザイナーのdice_kさんが共同生活をしているアパートの一室。まさにクターシリーズの制作現場と言っていいだろう。なぜかdice_kさんの利用するWindowsマシンには「クターのロデオ」の最新版が入っていなかったが…。さあ、待ったなしの一本勝負。大会は笑いとちょっとした興奮のなか行われ、次のような結果となった。

★結果発表
1位DEZYさんデザイナー39.152秒クター
2位ふくいしさんプログラマー24.480秒クター
3位小林代表プログラマー22.736秒クター
4位dice_kさんデザイナー20.176秒クター
5位小山窓の杜記者17.888秒クター

 ギガ連射ホームページのユーザーランキングでクターのロデオの1位がすでに80秒を超えていることについて、ギガ連射のメンバーはとても驚いていた。メンバーのプレイをじっくり見ていたが、誰でもできる単純明快なアクションゲームだけに、裏技は用意されていないようだ。今回は都合により、ギガ連射のもう一人のメンバーでクターのデザインを担当しているデザイナーの“ももちゃん”が不参加となったのが残念だった。

ギガ連射の一気ノミ

 インタビューがひととおり終わったところで、ギガ連射のメンバーと飲みに繰り出すことになった。札幌といえば“すすきの”という名前が浮かんでくるように、すすきのは国内でも有数の大歓楽街。そのなかで小林代表に選んでもらったのは、「富士」といういかにも日本的な名前の居酒屋だった。小林代表は、以前この居酒屋でアルバイトをしていたことがあるそうだ。懐かしい居酒屋で今後の夢を聞かせてもらうことができた。

 ギガ連射のメンバーにたくさん話を聞かせてもらったが、次回作のアイデアについて聞き出すことはできなかった。いろいろ話しているうちに、早くクターシリーズの次回作をプレイしたくなってきた。

□ギ ガ 連 射
http://www.giga-rensya.com/
□窓の杜 - オンラインソフトウェア大賞2000が発表
http://www.forest.impress.co.jp/article/2000/06/07/osp2000.html

(小山 文彦)

(6月23日に札幌市内で取材)


 この連載ではオンラインソフト制作グループを紹介していきます。「我々こそ!」というグループは下記の項目をメールに書いてご応募ください。活動形態・地域は問いません。オンラインソフトの未来を担うのは、今パソコンの前にいるあなた達です!

グループ名、メンバー構成、代表ソフト名、主な活動場所
代表者名、連絡先電話番号、ホームページURL

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