【第38回】
「WordKeeper」
単語登録しなくても、IMEで以前入力した語句を簡単に再入力！
（99/06/14）
文筆家と言わずパソコンを使うすべての人にとって、IMEの変換精度や使い勝手の良し悪しは、文章入力作業の効率を大きく左右する重要なポイントだ。特にキーボードに慣れないうちは、同じ語句を何度も入力するのがおっくうで、住所や自分の名前などよく使うものを単語登録している人が多い。しかし人名や固有名詞など、一時的にしか使わないような単語をいちいち登録していてはキリがない。クリップボードの履歴を呼び出す常駐ソフトを活用してコピー＆ペーストするにしても、短い単語であれば結局はキー入力したほうが早い場合も出てくる。そこで今回は、いちいち単語登録しなくても、IMEで以前に入力した語句を簡単に呼び出せるようにする便利なソフトを紹介しよう。
IME入力の履歴を取るソフト
「WordKeeper」はIMEの入力を監視して履歴を保持し、一度入力した語句を簡単に再入力できるようにする常駐ソフトだ。[Enter]キーが押されたタイミングでIMEが確定した語句を自動的に覚えてくれるので、いちいち単語登録の操作をする必要がなく、以後はその語句の先頭文字を入力して変換キーを押すだけで簡単に呼び出せる。
たとえば「このプログラムをインストールするには、インストールしたいフォルダに置いてプログラムを起動するだけです」という文章を入力するとしよう。その場合、まず「この/プログラム/を/インストール/するには、」というふうに文節ごとに語句を区切って順に変換し、[Enter]キーを入力して文章を確定していく。次に「インストール」という単語が再び出てくるが、ここで先頭文字である「い」、つまり[i]キーを入力したところで変換キーを押せば、「インストール」という語句がポップアップメニューに表示されるので、カーソルキーで選択して[Enter]キーで確定すればいいことになる。
また「宇多田ヒカル」のような入力しにくい固有名詞の場合なら、まず「うただひかる」と入力して、未確定のまま「う/た/だ/ひかる」のように文節を調節しながら正しい変換候補を選択していき、「宇多田ヒカル」になったところで[Enter]キーで確定するといい。2回目以降は先頭文字の「う」だけを入力して変換すれば、「宇多田ヒカル」がポップアップメニューの変換候補に出てくるはずだ。
なお保持される履歴は3つまで、1つの文字列につき最長30バイト（全角15文字）までになっており、それ以上の長さの文字列は途中で途切れてしまう。またポップアップメニューが出たところで[ESC]キーを押すか、メニュー下の「通常変換」を選択すれば、入力した1文字だけを通常通りに変換することができる。履歴はアプリケーションごとに保持されるため、「ワードパッド」で履歴に保持された語句でも「メモ帳」で再入力するにはキー入力を一からやり直さなければならない。
実用レベルにはあと一歩
設定不要で起動しておくだけでよく、操作方法もシンプル、IMEでの1文字変換操作から簡単に確定履歴を呼び出せるというアイデアが非常に面白いソフトだ。パソコンを始めたときからのクセで、短い文節ごとにすぐ変換してしまう筆者のような人間には、慣れれば手放せなくなりそうな気もする。
しかし実際にしばらく使ってみると、実用という意味ではまだ十分でない部分も見えてくる。1文字変換をしても、期待した語句が出てこなかったり、「う」を変換しているのに「使われる」といった関係ないはずの語句が候補に並んでしまうことが多いのだ。
これは不具合と思われる面もあるが、筆者の場合、変換後に[Enter]キーで確定せずそのまま次のキー入力を続けることで確定したり、変換確定前にBSキーを多用したりするせいかもしれない。しかし履歴候補の選出判断アルゴリズムには、もう一工夫が必要ではないだろうか。また今の仕様では、長々と文章を入力してから一括変換するようなクセがついている人などには、あまり向かないソフトだとも言えるだろう。
IMEのように人に密接して頻繁に使われるインターフェイス部分を拡張しようというソフトは、ユーザーに受け入れられるか二度と使われなくなってしまうかが、微妙な仕様の違いで大きく左右される。まずはユーザーの期待通りの動作をするための仕様と工夫について、十分な検討が必要だろう。アイデアの優れたソフトであるだけに、一つ一つ確実に改良していくことで、より多くの人に使われるソフトに成長するはずだ。
【著作権者】笠井 直幸 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.00（99/06/08）
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（ひぐち たかし）
